フリジア国《リド砦の街》
遅れました。
十日目。
街に着いた。
岩山と岩山の間を塞ぐような大きな街。
前にいた街よりも防壁がやたら立派だ。
一番違うのは………街の真ん中に見える、石造りの城。
見た目は綺麗と言うよりは、無骨。どこか物々しくて、城塞と言った方がいいかもしれない。
多分王都ではないな。そこまでの大きさじゃないし。
第一あんな怖いお城に住んでる王様は嫌だ。
街の大門には人の列が出来ていた。
街道を先に進むには、この街を通らないといけないからだろう。
なので馬車も多く並んでいる。
自分達の一行も、しばらく待つ事となった。
ノロノロと進む行列。御者席から自分はソレを眺めた。
両隣にいるのは、商人さん、ティーさんとこれまたいつも通り。商人さんがティーさんに話し掛ける。
「……--、---?」
何故か小声だった。ティーさんも小声で返す。
「……---?」
そして自分を見下ろした。
え、何ですか。
側からリーダーさんまで会話に入ってきた。
「----?」
何故か馬さん用の水袋を持ちながら。
「「---」」
商人さんとティーさんが声を合わせて頷いた。
ヒョイと持ち上げられる。
はい?
意味が分からない内に、リーダーさんが口を広げた水袋の中へと突っ込まれてしまった。
何故に!?
袋に水は入って無かった。だからって喜べるはずもナイ。必死に暴れたけど、ただブラブラと揺れるだけ。
気が付くと、袋越しに体温と、一定のリズムで動く何かを感じていた。
馬さんの鞍にでもくくり付けられたのか。
あ、でもコレちょっといーかも?
なんか段々気持ち良くなってきた。眠い。
………。
ぐう。
……………ふおっ!?
急に鷲掴まれた、と同時に視界が明るくなった。
あ、外だ。
………あれ。
街の中に入ってる。
キョロキョロと辺りを見れば、行列は消えて大門も通り過ぎていた。
寝てて気付かなかった!
自分を持っているのはリーダーさんだ。
手を伸ばしたティーさんに渡される。再び御者席へ。
……何だったの?
謎の出来事は謎のまま、宿屋に到着。
これまた立派な、高そうな宿屋だ。
いつもの様に部屋を三つ、と思ったら、二つしか取れなかったらしい。
商人さんとリーダーさんとトレスさん、ティーさんとレッドさんとウノさんとドスさん、の部屋分けになった。
大きな街だし、もう夕方近くになるからか、宿泊客が多いみたい?
食堂も混んでいた。
その食堂でふと気付く。
いつもは護衛さんの一人がいないのに……今日は全員揃ってた。
大きな宿屋で、車庫も広かった。用心棒みたいな人もいたから、積み荷を見張らなくても大丈夫って事かな。
夕食後、一旦商人さんの部屋へ全員が集合。ミーティングするらしい。
勿論自分も参加。ティーさんの肩に乗る。
商人さんはテーブルの上に地図を広げた。世界地図じゃなかった。
内陸の地図だ。
丸印がいくつもあって、その間を線が引かれている。
うーん?
街道と街、都市のマーク?
となると……お、商人さんが指差した所が、現在地かな。
商人さんの指が北向けの線を辿った。
ルートの説明をしてるっぽい。
どうもこの先は、しばらく街や村は無いらしい。
国境も近い。多分。あの線、国境だよね? 川とかじゃないよね?
主に商人さんとリーダーさんが話し合い、最後にティーさんとレッドさんに確認なのか、何かを尋ねていた。二人が頷く。
「--、----」
商人さんがパン、と手を打ち鳴らして解散となった。
四人部屋に入り、自分はベッドに下ろして貰う。
ティーさんが旅装を解く側で、他の三人は頭を突き合わせて何事か話し合っていた。
チラリとレッドさんがこっちを見る。
「---」
ティーさんが冷たい声で何か言った。
それにショックを受けた様子のレッドさん。
ドスさんが間に入って来た。
「--、---」
胸を叩いて、自分に任せろ、みたいなドスさん。ティーさんもやや態度を軟化させる。
「---」
首を横に振った。
……夜遊びのお誘いを断った、てコトでいーのかな?
ティーさん真面目だ。
一方のレッドさんはドスさん達について行くらしい。
ティーさんに頭を鷲掴まれて、念押しされていた。念押しか?
三人が出て行った部屋で、ティーさんは宿の人に頼んでお湯を貰い、それで身体を拭いてからベッドに潜り込む。
この世界にも照明器具がある。初めて見たのはギルドでだ。
壁か、宿屋ならベッド周りにスイッチがあった。
電気じゃないみたいだけど、仕組みはどーなってるんだろう。
明かりを消すと、ティーさんはすぐに眠りに落ちた。
自分はその頭の側に寄り添う。
………随分と遠くまで来た。それでもまだフリジア国内。
この大陸に国はきっといくつもあって、自分が見て回ったのは本当にまだ少しだけ。
世界は、広い。
………魔神様は、自分の寿命は長いって言ってたけど………世界中を見て回る位は、あるだろうか……………。
そして自分も、眠りに落ちた。
暗くなるとすぐ眠るスライム。
ドスさんの活躍は夜の街で繰り広げられた……かもしれない。




