表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/62

《ギルド受付嬢・2》

すみません遅れました。

もう四時までは(いい加減にしろ)。睡魔に勝てない。



ギルドの朝は早い。

職員---特に受付等の接客関係は日の出前からの出勤となる。


未だ星が瞬く空の下、黒髪の受付嬢は鍵を両開きの扉へと差し込む。

解錠の手応えを感じ取り、扉を開いた。

日中とは印象の異なる、シンと静まったギルド内。手に握る生活用魔法道具の明かりが、フロアの摩耗した床板を照らし出した。


……今日はここには居ないようだ。

カウンターの上、テーブル席、掲示板周りの休憩席をぐるりと見渡し、受付嬢は中に入った。

カウンターを通り過ぎ、壁の魔法道具を起動。室内に明かりが点いてから、手持ちの光を消す。


ギルド二階で寝泊まりする職員もいるのだが、何故か早朝の開始準備は彼女の仕事となっていた。解せない。

いずれ、叔父でもあるギルドマスターに提言するべきかもしれない。

そんな事を考えながら建物の奥へと向かった。


廊下の途中に貼られた世界地図が目に入る。

各国各地のギルド支部が記入されたそれの、西ポートルの辺りに自然と意識が向けられた。

ポートリデリカ国。

その小人の国に冒険者ギルドの支部はない。

亜人--小人と人間との確執はかなり改善されたとはいえ、かの国では人や人が作った組織との関わりは避けられる。ギルド支部の進出はまだ当分先になるだろう。

---あの小人族の女性は、現在どの辺りまで旅を進めているのだろうか。

無事送り届けたら、ポートリデリカ国の手前のギルドから、魔法信号による連絡が入る事になっている。

謝罪の意を込めて、フリジア国が足の速い馬車を手配していたが、到着にはまだ十数日かかる筈だった。


視線を大陸中部へ移す。

地図には国名はあれども、詳細な地名は流石に載っていない。ある土地のおおよその位置だけを受付嬢は確認した。

ギルドにグリーンゴブリンが訪れた時の反応を見るに、あのスライムはモリンガ大森林で暮らしていたのかもしれない、とも考えたのだが。

--依頼人の意向に添うならば、やはり冒険者の出入りが多くある大森林よりも、あの場所が最適だろうと決定を下した。


大陸中部にあるティグリ森林保護公園。

---そこで預かりもののスライムを放つ事にしたのだ。

昨日で公園からの承諾の返事は貰った。

依頼は張り出さずに、ある二人組に頼んでみようかと受付嬢は考えていた。まだ若いが、遠出をさせて経験を積ませるのもいいだろう。

一人小さく頷き、彼女は地図の前から離れた。


更に進んだ奥の一室。ギルド職員達が食堂としている部屋に、布の塊を発見した。誰かの制服の上着の様に見える。もしやと思い、捲ってみた。

一匹のスライムがくるまっていた。今日はここで眠っていたようだ。

まだ暗いので、起こさないように再び布を掛ける。

奇妙なスライムだとは思う。ギルドから逃げる事もなく、人の言動を理解している様な素振りすら見せる。少々食い意地が張っているが。

先日、試作として持ち込まれたポイズンボアの干し肉を食べて、異常を見せたと聞いた時は焦った。草食だと聞いていたのに、何故食べてしまったのか。

毒抜きが完全ではなかったかと、その試作品は廃棄された。


近所の老人達からも可愛いがられ、冒険者の間でも、出発前に撫でると仕事が上手く行くとの噂まで流れ始めている。

だがそれももう暫くまで。公園に送り出せば、皆寂しくなるかもしれない。いつの間にやら、スライムは随分とこのギルドに馴染んでいた。


しんみりと思いながら、受付嬢は開始準備の為、次の部屋に向かった。



受付嬢二度目の出演。ギルド編は今回まで。

次回、旅立ちます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ