ギルド《フリジア国マルカ支部》・2
ギルド内での自分の定位置は、カウンターの上だ。
そこでポヨポヨしたりプルプルしたりナデナデされたりしている。
つまり特に何もしてない。
……いや、自分は居るだけで癒やされる万能薬アイドルなのだ。その証拠がこれだ!
「---~?」
「--、--」
「---」
カウンター前に集まる、老紳士老淑女の皆さん。
その手に持っているのは、畑で穫れた新鮮野菜。
レタス? に始まりキャベツ? 人参? キュウリ? 仕舞いにジャガイモ? までが勢揃いしている。
ハテナ付きなのは、見た目それっポイけど色がビミョーとかサイズが変とか、あと名前が違うからだ。
葉の形が三角形のレタスは「オシャー」。赤い色のキャベツが「ヨシャー」。
顔サイズの赤人参が「ソリャ」、ツルツル白キュウリが「オラ」、プチジャガイモが「ドッセイ」。
……誰だ気合い入れみたいな名付けしたの。
やたら覚えやすかったわ。
それはともかく。
おじいちゃんおばあちゃん達は、自分へとそれらの野菜を差し出してくるのだ。
まずは一番近くのオラをぱくり。
……カリコリとした食感だ。
次にオシャーをもぐもぐ。あー、このシャキシャキ感がたまらん。
次にヨシャー、その次がスライスしてもらったソリャ、最後にドッセイを丸呑み。
食べ放題のサラダバーでございます。
見て下さい、このおじいちゃんおばあちゃんの笑顔。
ペットを甘やかしてポチャカワにする飼い主を彷彿とさせます。
いいんです。
自分はスライムだから。
多分太らない。
笑顔は健康の秘訣だからね!
自分がごはん食べる事で、おじいちゃんおばあちゃんの寿命が延びるんだったらお安い御用だよ!
そんな自分の背後では、受付のおねーさんが困った笑顔で佇んでたりする。
食べ放題ナデ放題したあと、おじいちゃんおばあちゃん達は帰ってった。
またねー。
てか何しに来てたの。まさか自分に会いに来ただけ?
これはファンクラブ設立も間近か?
可愛いって罪だね☆
ギルドのカウンターは、依頼人用と冒険者用との二つ受付がある。
まあ分けとかないと、混乱しちゃうからね。
早朝は依頼を引き受けに来た冒険者でごった返し、昼間は依頼人らしき人がちらほらと受付までやってくる。
そして夜は戻って来た冒険者でまた混雑するのだ。
ちなみに自分は、ギルド内で寝泊まりしている。
建物の中なら自由に動けて、どこに入ってもオッケー。二階の偉い人の部屋は、流石にまだ入った事はない。
カウンターを越えると倉庫や書庫、事務室、よく分からん部屋、あとは解体場がある。もしかしたら外にも何かあるのかも。
勿論これらを出入り出来るのはギルド職員だけ。
超貴重な職場見学。
職員の皆さん、自分を見ると撫でるかごはんくれるかします。
ありがとう!
自分はピョイっとカウンターから飛び降りた。ポヨンと着地。
気付いたおねーさんが何か言ったので、一度大きくその場でジャンプ。
大丈夫! 誰にも迷惑は掛けないよ!
ちょっと食後のお散歩に行くだけ。
外にも出ないよ!
聞こえた訳ではないだろうけど、おねーさんは頷いてヒラヒラ手を振った。行ってらっしゃい、の意味だ。多分。
ポヨポヨと自分は書庫へと向かった。
書庫への途中、廊下の壁には大きな地図が貼られている。
立ち止まって眺めた。
東西南北は普通の見方でいーのかな?
大陸、なのだろうか。
嘴を右--東に向けた、翼を広げた鳥のような形。右翼は上、北に伸び上がって更に大きく広がっている。
縮尺は分からん。
色分けされてるのは国別?
文字が書かれてるけど当然読めない。
………うむ、やっぱ分からん。
現在地はどこだ。
これ、どこまで正確な地図なのだろーか。ホントにこんな形してんの?
いくらファンタジー世界とはいえ、出来過ぎでね? ……あ。
ふと思い付いた事があった。
そーいや、言葉が通じるヒトがいた。
……ヒトじゃないけど。
書庫は止めて、あっちに行ってみるかな?
てなワケで、解体場へ。
……予想ついた?
野菜の名前でふざけてみました。特に意味は無い。
スライムは食べた物を魔力に変換して体内に貯めてます。無意識。なので太らない。




