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《ギルド受付嬢》

もう夜中の2時ごろまでは一日にカウントしていいと思います(オイ)。



フリジア国はマルカ支部冒険者ギルド。


カウンター右手側にある、テーブルが置かれた飲食可能なスペースで、黒髪のギルド受付嬢が依頼人と向き合っていた。

依頼人---正確には街騎士からの依頼であり、護衛対象となる人物である。

互いに椅子に腰掛けてはいるが、その身長差は明白で、どうしても受付嬢が見下ろす形になってしまう。

それも仕方がない話ではある。護衛対象は小人族の女性なのだ。

相手の幼い見た目も手伝って、ついつい子供に対する言葉遣いになりがちだが、聞けばとうに成人した、しかも人妻との事だった。妙齢にありながらまだ独り身の受付嬢には、少々耳に痛い情報だ。


「すでに聞き及んでいらっしゃると思いますが、西ポートルまでの旅費は国が負担致します。宿泊費、食費を含めてですね」


大陸西部(西ポートル)の小人族の国は、周辺の人間国とは良好な関係にある。宝石の産出と細工が有名で、各国の王族がその顧客だ。

大国の後ろ盾もあり、今回、小人族が半ば奴隷扱いで売買されかけた事件は、フリジア国にとって他国から非難の的となる、大変まずい事態を引き起こしかねないものだった。

そのため国は、故郷へと帰す護衛費用及び旅費の全てを負担し、彼女には賠償金も支払っていた。

小人の国--ポートリデリカ国への謝罪は、事件の詳細が明らかになってから改めて使者を送る事になっている。帰郷に同行するのはギルド所属の冒険者のみだ。


「本当に……何から何まで、助かります」


「非は商人と貴族の悪事を見過ごしていた、この国にありますから。……酷い目に遭われましたね。偶々国外に出られた所を誘拐されたとか。あ、そちらどうぞ」


相手にテーブル上のお茶を勧め、受付嬢自身も己の喉を湿らす。依頼人の相談を受ける機会も多いため、ここのギルドカウンターではお茶道具一式が備え付けてあった。新人の頃と比べ、茶を淹れる腕前は随分と上がった。

依頼人への対応能力も上がっているものと思いたい---受付嬢は内心願う。


「知人を訪ねる途中でした。きっと心配しているでしょうね。夫も………早く会いたいです」


夫という単語を彼女が口にすると、違和感が凄まじい。小人族とは皆このように童顔なのだろうか?

めったに自国を出ない小人族を見る機会が今までなかったので、受付嬢には分かりかねた。


「それで、ご相談というのは?」


小人族の女性が出発するのは三日後。準備はほとんど終わり、今はのんびりと街を観光していると聞いていたのだが。

今日、ギルドを訪れた理由は一体何か。


相手は、それまで膝に乗せて撫でていた、小さな魔物を差し出した。


「この子の処遇なんですけど」


最弱の魔物と言われる、スライムである。棒を持った幼子にすら退治される、ダンジョンの掃除屋、または腐肉喰らい。ちらりと思い出したのは、この目の前の相手と一緒に、商品として捕らわれていた二体の魔物。確か雪白虎とスライムだったか。

確認すればそのスライムだと頷かれる。


「このままわたしが連れ帰ろうかと思っていたのですが、やっぱり野生に返したほうがよいのかと……」


雪白虎の方は数日前に生息地の北へ、冒険者と一時的に従魔契約を結ばせてから旅立っている。幻獣とはいえ、野放し状態では入国を拒否される事もあるからだ。

スライムの方は---正直、なぜこの魔物が商品価値を見出されたのか理解出来ないが、もうとっくに外に放たれているものと考えていた。


「街の外で放てばいいのでは?」


「この子には随分と勇気付けられたんです。こちらで、スライムの生息地で逃がして貰えませんか」


「それだと依頼の形でしかお引き受け出来ませんが……」


「構いません」


たかがスライムに何故そこまで、と思ったのが分かったのか、小人族の女性はその魔物について話し始めた。


「最初はこの子、月白石を体に取り込んでいたんです。しかも、光ってました」


「え?」


月白石とは、魔力濃度の高いダンジョン周辺からしか発掘されない、特殊な鉱石である。ダンジョン内で魔力に晒されている間は、仄かな青白い光を放つ。しかしダンジョンから外に出せば、光を失いただの石と変わらない。魔法が使えない冒険者の間では、ダンジョン探索時の明かりとして一定の需要があった。


「スライムの変異種なんだと思います。多分、内包魔力が高いんじゃないかと」


更に詳しく話を聞けば、このスライム、知能もいくらかあるようで、彼女が月白石を取り出そうとしたのを理解して、自ら吐き出したのだという。


「それが事実なら……研究者が手に入れたがるでしょうね」


「そうならないよう、お願いします」


事情を理解した受付嬢は、小人族の女性からの依頼を受理した。

その場でスライムを譲り受けて、しばらくはギルド内で保護する事となった。





意外にスライムが人懐っこく、依頼人や冒険者の間で可愛がられるようになるのは、少し後の話である。




やっと光る石(月白石)についての説明が書けました。

そして小人さんが人妻だった件。



スライムもようやく人間文化圏に到達。

一段落つきましたので、また休みに入ります。

次回は正月明けからになると思います。

拙い物語ですが、今後もお付き合い頂けると嬉しいです。




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