マルカの街《モンスター密売所》・6
もう何も言うまい。
逃走路を白い虎がひた走る。
虎さん速い!
おっさん達の魔の手を逃れ--最後はあっちが大損害だったような? 地下らしき道を進むと、馬車の待機所をすぐに発見。
そこにも強面達の姿が!
相手が少人数だからか、虎さんは速度を落とす事なく突っ込む!
馬車は全部で四台、一瞬見えた通路の壁側に、開いた扉と奥に階段があった。
ランプ(中身は火)を持った者と、木箱を抱えた者とが右往左往している。
そこから荷物を馬車に運んでる途中だったのか。
馬車の荷台には色々と詰め込まれているようだった。
逃げる準備をしてるってコトは、やっぱりガサ入れ?
あの沢山いたモンスター達はどうなったの?
自分達以外のモンスターが馬車に乗ってる様子はなかった。
………逃げる前に始末した、とかは無いよね? どうか、無事に保護されてますように。
そんな事を自分が考えてる間に、虎さんと強面達が接触した!
強面Aが武器を構えた。得物は長剣。
強面Bは大型ナイフ。
強面Cは鞭。え、猛獣使い?
虎さん、真っ先に強面Cへ飛びかかる!
ひゅん、と風を切る鞭。でも虎さんは見切った。
白い毛皮と小人さんのフリルドレスの端を、攻撃が掠めていく。
ひぃっ!
踏みつけるように爪を振り下ろす!
強面Cの姿が消えた。飛び散った赤い色は気にしちゃいかん!
そこへ強面Bがサイドからナイフを突き立てる!
虎さんは跳躍した。強面B、ついでにAまで飛び越えて、くるりと振り返る。
瞬時に作り出していた氷弾を放った。
はね飛ばされるAB。
更に虎さんは、たくさんの氷弾を宙に生み出す。
警戒する強面達。
しかし虎さんが狙ったのは人じゃなかった!
氷弾が馬車の車輪、四台全ての分を打ち抜いた!
「---!」
「-!!」
これには強面連中も顔色を変える。馬車は完全に走行不能になった。
馬は虎さんに怯えてパニック状態。
……よっぽどお怒りなのか虎さん。
てめぇらただでは済まさねー、逃がさん。みたいな声が聞こえてくるような?
とどめに氷弾を強面連中に放ち、やっと気が済んだのか、虎さんは再び走り出した。
もう振り返る事は無かった。
---蔦や生い茂る草で上手くカモフラージュされた出口。
飛び出す白い影!
跳躍から華麗に着地を決める。
辺りを見回した。
ここは雑木林だろうか。外は薄暗い。
夕方、日が暮れた時間帯?
最後に葉っぱ食べたのがお昼だったから、その位の時間だと思うんだけど。
虎さんが唸りだした。
え、追っ手!?
木々の間に、白い光が灯った。
「----」
両手を軽く上げ、宥めるように話しながら男が現れた。
白地に黒いラインが入った鎧を装備している。腰には長剣。
「---?」
また何かを話し掛けてきた。
小人さんが息を飲んだ。あ、やっぱ人の言葉分かるんだ。
鎧男へと言葉を返す。
「---」
いくつかのやり取りの後、鎧男が背後へと合図を送った。
現れる鎧集団!
うお! 何!?
超びっくり。
鎧集団から敵意は感じない--最初の鎧男が、虎さんと小人さんを促し、歩き出す。
まだ警戒する虎さんへ、小人さんが何か囁き、首筋を撫でた。
虎さんは鎧男について行く。
入れ替わるように、鎧集団が逃走路へと入って行く。
自分も流石に、何となく理解した。
ひょっとして、騎士団? それか兵団?
多分、ガサ入れ側の人達だ。
おっさんや強面連中を捕らえに、逃走路を張り込んでたのだろう。
つまり。
---やっと、終わったのだ。
やった、良かった!
晴れて自分は自由の身!
これで青さんの所に帰れる!!
はた、と気が付いた。
ここ、どこだ。
てか青さんトコの平原は、どこにあるんだ。
……。
よし、取り敢えず休もう。
何か疲れたし。自分何もしてない気がするケド、でもやっぱ疲れたし!
鎧男がふと虎さんにへばり付く自分に目を向けた。
なんか妙な顔をされた。
なんでだ。
その後、自分達は鎧集団に保護された。
騎士団? でいーのか? の詰め所に連れて行かれ、取り調べは小人さんが対応。
自分喋れないからね!
虎さんもモンスターなのに檻に入れられる事もなく。
色んな人が何故か虎さんを見に来てた。レアモンだから?
自分はその背中でダラダラ過ごした。
何故か二度見されたりした。自分、ただのスライムですよ?
---初めて訪れた人間の街。
自分はしばらくをココで過ごす事になるのだった。
次は別視点になります。




