マルカの街《モンスター密売所》・1
一日一話厳守はどうなった。
スミマセン……。
今、自分は白い壺の中にいる。
え?
何を言っているのか分からない? 大丈夫、自分もよく分かっていない。
あ、骨壺じゃないよ(ブラックジョーク)!
もっと大きい。
人間の子供が入れるサイズの壺だ。
隠れんぼに最適だね!
勿論自分は隠れているワケじゃない。
それは遡る事数日前---。
三人組に捕獲された自分は、念願のダンジョン脱出を果たした。
布袋に突っ込まれた状態で。
久しぶりにシャバの空気を吸っ……てねーし。
ずっと布袋の中だったし。
ガタゴト揺れてたのも布袋の中で感じ取ってただけだし。
……それがドナドナだったと知ったのは、袋から出された時。
ガタゴトしてんのが馬車っぽいな、というのも感じてた。
三人組の声と、別のおっさんぽい声が話し合ってるのも聞こえてた。
一度だけ袋が開けられて、誰かがのぞいてたのも気付いてた。
でも袋から出たとたん、辺りを見る暇もなく壺に突っ込まれるとは。
訳が分からない。
しばらく壺の中でポカンとしていた。
取り敢えず脱出してみよう、と壺内に張り付こうとして---出来なかった。
ツルン、ベショッ。
全く登れない。壺の内側は凄いツルツルしていた。
今度は試しにジャンプ。届かない。
これヤバくね?
てか何かおかしくね?
スライムをなんで壺に?
と思っていたら。
ぬっと、おっさんが上から覗いてきた。
ビクッと震えたのは仕方ないよね? キモイし怖い。
すると壺の外から暗幕みたいなのを被せられた。
暗くなる壺の中。
そして光る自分。
暗幕の隙間から見ていたおっさんが、にやりと笑った。
---で、気が付いた。
これ、商品を見る眼差しだ、と。
あの話し合ってた声は、自分の取引だったのだと、分かってしまった。
あの後から、三人組の声が聞こえなくなってたのだ。
自分は、おっさんの持ち物になってしまった!
その後、壺ごと移動されて、今現在。
自分はモンスター達の鳴き声が聞こえる場所にいる。
うん、自分だけじゃなかったデス。どうもおっさん、何体もモンスター確保してるみたいです。
んで、自分は今、命の危機に直面している。
長いコト、食事をしておりませぬ。
……あれ?
ひょっとして、青さんと別れてからずっと食べてないのでは。
……スライムって、飲まず食わずでどんくらい保つの?
自分、大丈夫?
そいや空腹感とか感じた覚えが無い。
え、別の意味で大丈夫?
自覚ナシで餓死しないよね?
怖い。
何度か謎の物体が壺の中に放り込まれてきたけど、食べなかった。
自分、草食だからね!
はっきり植物と分かるものしか食べないよ!
でもおっさんがそれを知るよしも無く。
結局、自分はいまだ食事にありつけていない。
---ふと思い付いた。
限界まで食べないで死んだフリしたら、壺から出されるんじゃないか? と。
試す価値はあるかも。おっさんは壺を覗くたびに、自分がエサを食べてないのを気にしてるみたいだし。
ちょっと動かないでいたら、死んでるか、死にかけてると思うかも。
よし、やってみよう。
さっそく自分は行動に移した。
おっさんが壺を覗き込んだ。
自分、動かない。
謎の固形物が投げ込まれる。
自分、無反応。
「---」
おっさんが何かを言った。
自分は死にかけスライムです。聞こえない。
ちら、とおっさんを見上げた。
あ、サンドイッチ食ってやがる。てめえ、こっちが何も口にしてないとゆーのに………ハムレタスサンドっぽいな。美味しそう。
てか食べながら喋んないで………あ。
ボタボタッ、とおっさんが口にくわえていたサンドイッチが、壺の中に落ちてきた!
おお! 葉っぱ!
つい体が反応。
レタス(仮)に飛び付いた!
………シャキシャキとしてそれでいてマイルドな食べ応えです。
うむ、よい葉っぱですな!
………。
うん?
おっさんが見ていた。
その後、自分の壺には謎の葉っぱ(レタス?)が放り込まれるようになったとさ。
次は頑張ります。




