ダンジョン《山賊の塒》・6
ギリギリ! 遅くなりました。
戦闘回です。残酷シーンあります。
ああ~。
棒切れ引きずってでも、あの時に逃げてれば………。
何してんの自分。馬鹿なの? お馬鹿なの?
宙吊り状態で自分を責める。
来た道を戻っている現在、テンションだだ下がりの自分とは反対に、赤ゴブ達は浮かれまくっている。
「ギャギャー!」
「ギギャー!」
赤ゴブ語とゴブさん(緑小鬼)語って違う言葉なの?
そもそも違うモンスター同士で意思疎通ってどーやってるの?
……話が出来たら、解放してくれてたのかな?
どうだろ。
自分が石を手放さない以上、無理か。
はあ……。
揺れる自分に合わせて、赤ゴブ達の影も動いた。
洞窟内はいくつもの分かれ道がある。
赤ゴブ達に迷う様子はない。通い慣れた道なのか。
うん、やっぱダンジョンだな。
……そんで宝箱はないんデスネ、残念です。
たまーに、曲がり角から飛行物体(コウモリ?)が現れたり。
上からゼリー状物体が落ちてきたりする。
赤ゴブ達はそれらを上手く回避して移動している。
青さんや闇狼とは違い、そこまで好戦的ではないみたい。
今は二体しかいないから、かな? 多分集団戦推奨なんだろう。
赤ゴブの戦闘力はあまり高くない……え、自分? 戦闘力皆無ですが何か。
鬼さんから貰った短刀は、実は凄いモノなのだろうか。
こんなに喜んでるって事は、戦力アップになる何かの効果でも秘めてるのか。
ダンジョン外でも使えるのかな? 直接貰った相手以外でも、使える?
もしそうだとしたら。
このダンジョン、……人間が訪れる事も、あるんじゃないだろうか。
いわゆるドロップアイテム、とゆーやつだ。
自分が見た人間は、今の所あの五人組だけ。
いかにも冒険者な見た目だった。
この世界にギルドとかあるとしたら。
冒険者にとって、ダンジョンは宝の山なのだろうか。
モンスターは搾取対象? それとも恐れられてる?
……赤ゴブやオーク達は、武装して、何をしているのだろう?
もし悪事のための武装なら、自分はやっぱり、コイツらから早く逃げ出したい。
スライムは平和主義者なのだ。
そろそろ赤ゴブ部屋の近くまで戻ってきたような。
ふと異変に気付いた。
地面が濡れている。
洞窟内で雨が降るはずもなし。よく目を凝らす。
所々に落ちた、水の塊………いや、ゼリー?
スライム?
スライムの、死骸?
「ギャギャギャッ!!」
赤ゴブの叫び声が聞こえた。
こっちの二体じゃない。別の赤ゴブの声だ。
赤ゴブ部屋から?
更に聞こえてきたのは、剣戟の響き。
まさか、戦闘?
「……ギ!」
「ギャッ!」
顔を見合わせ、二体の赤ゴブは駆け出す。
部屋に着くまでに、散乱したスライムの死骸をいくつも見た。
これはちょっと………気分が悪い、かも。
言葉が通じないとはいえ、同族だ。何とも言えない気持ちになってくる。
ハッ、と前方を見る。
白い光?
何だ?
「----!」
今のは。
人間の声?
風切り音がした。
急に視界が回る。
ぬえ!?
自分を持っていた赤ゴブがしゃがんだ!?
え?
もう片方の赤ゴブは、身をかがめるようにして、先に走って行く。
その手には、鞘から抜かれた短刀が。
また風切り音。
今度は分かった。
矢だ!
カンッ、とすぐ側で跳ね返る音。
ね、狙われてる?
あ。光ってるから。
理解と同時に、またぶん回される---振りかぶっている赤ゴブの姿。
投擲体勢。
何の?
赤ゴブが握り締める棒切れは。
まさか。
自分かぁぁぁーーー!!
ぶん投げられた!
カッ飛ぶ棒切れと自分。
あっという間に戦闘の真っ只中へ。
ガン! ガラン、ポヨン、コロコロ。
弓を構えた人間がこっちを凝視している。
まさか明かりが投げ飛ばされて来るとは思わなかったのか。
それともスライムだった事に驚いたのか。
お、お邪魔します?
てか赤ゴブ!
何しやがんだー!!
明かり持ってたら狙われるからって、ぶん投げんなーーー!
驚いている人間に迫る、小柄な影に気付いた。
白い光を短刀が反射する。
人間も気付いて、すぐさま迎撃--弓を投げ捨て、腰の剣を引き抜く。
赤ゴブが、速い!
駆け抜け様に一太刀。人間、慌てて避ける。
え、こんなに早かった? まさか短刀の効果?
驚く自分。赤ゴブも調子に乗ったのか、バックターンでもう一度切りつけようと、した。
刃の軌跡が振り抜かれる。
赤ゴブの首が、飛んだ。
斬り飛ばしたのは別の人間。
赤ゴブ部屋内にいたらしい。横合いから飛び出して来たのだ。
人間は、一人ではなかった。
地面に転がっている自分には、よく辺りが見えていた。
赤ゴブ部屋の出入り口。中の戦闘は、既に終わっていた。
あとはもう、一体---自分を投げた赤ゴブのみ。
ゴロゴロと転がっていく頭部を、呆然と見送る。
呆気なさすぎて逆にエグい。
さっきまで生きていたのに。
部屋から出て来たもう一人が、最後の赤ゴブへと顔を向ける。
赤ゴブは、多分、逃げようとした。
仲間が目の前で倒されたのだ。ダンジョンボスからの武器を持っていたにも関わらず。勝てない、と判断したのだろう。
でも、逃亡は果たせなかった。
「-」
短い詠唱--魔法陣は無く、ただ風だけが起きた。
それでお終いだった。
逃げようとしていた赤ゴブの後ろ姿が、パタリと倒れる。
首を無くした姿で。
---それで、戦闘終了。
赤ゴブ部屋の中は、血の海だった。
あ、やべ、夢に出そう。いや夢見ないんだった。てかそれ所じゃないよ自分!
逃げよう!
相手は多分、スライムも殺してる!
自分も攻撃されてしまう! 物理攻撃無効だけどね!
でも怖いもんは怖い!
ポヨポヨダッシュをする直前---さっき風の魔法を使った人間が、身をかがめる。
ヒョイと棒切れを持ち上げた。
あ。
ぶらん、と宙吊りになる自分。
……逃亡失敗。
何故かガン見された。
「----、---?」
「----」
人間同士で会話が交わされる。
自分はただのスライムランプですよー……。
どうも嫌な予感しかしない。
辺りを見回っていたもう一人、弓を持ってた人間も会話に加わる。
人間は三人。
ダンジョンに潜るには少ないような?
余程腕に自信があるのか。
そして自分は何で捕獲されてるのでしょーか。
自分を持ってる人間が出入り口で辺りを見張り、あとの二人が赤ゴブ部屋を何やら探索。荷物を持って出て来た。
あー、赤ゴブ達がはしゃいでた、あれ。
ひょっとして、この人間達の?
だとしたら………この惨劇は、赤ゴブ達の自業自得という事になるのか。
………。
酒瓶一本無いけど、大丈夫?
「---」
一人が外の赤ゴブを指差した。
自分を持つ人間がそちらに近寄り、落ちている短刀を拾う。
武器を検分して、頷いた。鞘も拾って刃を収める。
やっぱりいい物だったのか、持ち帰るようだ。
もう用事は済んだとばかりに、その場を立ち去る人間達。
軽く指先を振ると、赤ゴブ部屋を照らし出していた、白い光球がフワフワと追って来た。魔法?
………何故に。
なんで、自分まで、連れてくんだ。
明かりあるじゃないか。
なんでだ。
相変わらず網の中、ゆらゆら揺れながら、やっとダンジョン脱出を果たすのはしばらく後の事。
そして自分は、ドナドナされた。
やっとダンジョン脱出。




