ダンジョン《山賊の塒》・4
今日も遅くなりました。
もう遅くてもいいんじゃないか、の心境になりつつあります。
逃げてやる! と意気込んではみたものの。
実際の所、網の中では身動きがとれない。
何なの、網、流行ってんの?
豚さんといい、赤ゴブといい。都合良く網なんか持ってんじゃないよ!
ゆらゆらと棒切れの先で揺れながらグチる。
自分が捕まってるのは、照明代わりが理由なワケで。
石を捨てたら解放されるかもだけど、そしたら移動が困るのだ。
暗いの怖………くないよ? うん。
でも先が見えないと、歩けないでしょ?
明かりはやっぱり必要だ。
なのでこの石はなるべく確保しておきたい。
さてどうするか。
自分は赤ゴブを見下ろした。
「ギャギャ」
「ギギャー」
二体の赤ゴブは呑気にお喋りをしている。
自分、完全にランプ扱いです。
試しに体を思いっきり揺らしてみた。
……チッ、はずれない。
しっかり棒に結ばれてしまっている。
あの結び目さえはずれたら、網から脱出できるのに!
スライムだったら網目から抜け出せそうだけど、この網、なかなか目が細かい。
網糸も強い。
豚さんの網もこんなのだったな……。
モンスターって、こういうの、作れるの?
それとも人間作?
あー、分からん。
どうしようもなくなって、周囲へと目を向ける。
自分が持ってる石の欠片は、小さいにもかかわらず、光量が強い。
赤ゴブが持つ明かりの中では一番光っている。流石は自分!
その光が洞窟の壁を仄かに照らし出す。
……この洞窟、どのくらいの広さなんだろうか。
豚さんがいて、赤ゴブがいて、スライムもいる。
他にもモンスターって、いるの?
こうして歩いててかち合わないって事は、かなり大きい洞窟なんじゃ?
ふと考える。
……複数のモンスターがいて、洞窟。
そして広い。
え。……ダンジョン?
もう一度周りを見る。
………ダンジョンかも?
まさかの冒険ロマンが今目の前に!?
マジか! リアルダンジョン!!
はっ、宝箱は!?
ミミックは!?
いないの!?
ちょっと赤ゴブ!
ここってダンジョンなの!?
赤ゴブに睨まれた。
興奮の余り網をゆっさゆっさ揺らし過ぎてた。
三白眼が怖……こ、怖くないからな!
自分が自由になったら、お前らなんか簀巻きにしてやる!
と思ったのが通じたのかどうか。
「ハッ」
鼻で笑いやがった!
赤ゴブのくせに!
む、ムカツクーーー!!
「ギャッ!」
突然、もう一体の赤ゴブが叫んだ。
自分も気が付いた。
---前方が、明るい。
誰か来る?
現れたのは、三体のオークだった。
赤ゴブ達は警戒している。
……いきなりバトル、って展開はなさそうだ。
ただ、その場に緊張感が走る。
オークの持つランプが動く。
相手を確認するためか、ランプを高く掲げ。
赤ゴブを見る。
次に、自分へと顔を向けた。
「ブヒヒヒヒヒ!」
笑いやがった!
またか! 前も笑ったよね!?
いや、同じオークかは分かんないけど!
何でだ!
スライムってオークのツボなのか!?
赤ゴブは……沈黙している。ちょっと意外。
いや、怒ってる?
でも我慢してるっぽい。
………あー、なんか分かったかも。
自分は、オークが持つランプを見た。
中に入ってるのは光る石。……赤ゴブ達が持つ石のどれよりも大きい。
多分だけども。
オークの勢力と赤ゴブの勢力がいたとして。
きっと、オークの方が強いんだな。
そして、光る石を独占している。……石が採掘できる場所は、オークの縄張りなのかな?
赤ゴブ達は、もしかしたらオークが捨てた屑石を拾って、明かりとして使ってる、とか。
……自分が捕まったの、オークのトイレ穴近くなんだよね。
あそこ、石拾いスポットなのでは。
ひとしきり笑ったオーク達は、そのまま通り過ぎて行った。
小馬鹿にしたような態度が微妙に腹立つ。
今ばかりは、自分も赤ゴブと同じ気持ちかも。
赤ゴブ達が足を早めたのが分かった。
さっさと目的を果たそう、という気持ちになったのか。
てか、どこ向かってんの?
今更だけど。
何だかなー。
……ちょっぴり毒気が抜けてしまった。
今だけはダンジョン観光のつもりで、赤ゴブ達に付き合ってやるか。
……今だけね?
大分歩いた。
途中で何体かのモンスターも見掛けた。
蛇みたいなのとか、コウモリみたいなのとか。
遠目だったし、暗いから本当にモンスターかは分からないけど。
ますますダンジョンっぽい。
どうもこの辺りから、空気が変わってきている。
こう……重い? 密度が濃い? カンジだ。
なんか雰囲気もヤバイような?
赤ゴブ……ここ、どこなの。道、合ってる?
こんな所に何の用があるのさ。
広い空間に出た。
自分は天井を見上げた……見えない。高い。
石の光が全く届かない。
地面を見る。
……?
あちこちに、クレーターがある。何これ。
何かを叩き付けた跡?
「ギギャギャ、ギャギャ!」
赤ゴブが、呼び掛けるように叫んだ。
すると。
広い暗闇の中、空中に、青い火の玉が浮かび上がった。
ダンジョン内にも勢力図はある、という話。
あと、このダンジョンには宝箱はありません。サブタイトル通りに、山賊モンスター達の巣窟なので。




