ルー高原・5
あまり頑張れなかった。
青さんの吠え声が響き渡る。
重低音のそれは、威圧を伴っていた。
もし自分が人間だったなら、ちびって失神、最悪ショック死、それくらいのレベルだ。
だが五人組は耐えきった。
「おおおおお!」
負けじと重鎧が吠える。そして、何かを言った。
「---!」
大剣が光る--反射光じゃない。剣そのものに、光が宿った! 魔法剣!?
てか魔法使えるの?
タンカーでしょ!?
アタッカーも兼ねてるの!?
盾を構えたまま突進。速い。
そもそもの体格差。重鎧が狙っているのは青さんの足しかないだろう。
青さんが膝をつけば、上体への攻撃が届く。
青さんも勿論、大人しく見ているだけではない。重鎧へと、棍棒を振り下ろす!
重鎧が盾を頭上に掲げた! 盾に描かれた紋様が不思議な輝きを放つ!
青さんの一撃を受け止めた!
有り得ない!
何それホントに人間!?
闇狼だって直撃したら即殺してたんだよ!?
驚きの連続だ。
人間は、思っていたよりも、遥かに強い。あるいは盾の性能か。
光ってるし、ゲームでよくある「打撃半減」とか「防御力向上」とかの効果があるのかも。
棍棒を受け止めた盾の陰から、剣閃が走る。下から真上へと。
棍棒の端がスッパリと斬られた。光の軌跡が青さんの顔面へと届く--よりも先に、青さんがのけぞった。
魔法剣による剣圧。
それは青さんの左耳を僅かに掠め、小さな傷を付ける。
攻撃が届いた!?
ゾッとした。
だがその一撃で重鎧の剣は輝きを失っている。どうやら一発ずつしか放てないみたいだ。
でも油断出来ない。
青さんは頑丈だけど、万が一、目に命中でもしたら……。
怖い。
敵は、強い。
自分を乗せた怪鳥達は、夜空をゆっくりと旋回する。
今は様子見とばかりに。
弓矢を構えた者もいる。迂闊には近付けない。
それに、いかにも魔法使いといった格好の黒ローブ……あっちも要注意だ。
後衛に位置してるってコトは、そこからでも相手に届く攻撃手段を持ってるはず。
それが空まで届かないって保証はない。
黒ローブの方も警戒しているのか、時折こちらに視線を向けていた。
重鎧が青さんの攻撃を受け止め、かつ反撃を放つ間、他の戦士達も遊んではいなかった。
軽鎧姿の双剣使いが、駆ける。重鎧の側をすり抜け、一気に青さんの足元まで到達した。
一閃。
「……チッ」
ガキン、と剣が弾かれる。
え、生足だよね?
青さん、どんだけ肌かったいの?
別の軽鎧--こちらは槍を背負っているが、それとは別に剣を握っている。その剣を、水平に構える。
「---」
唱えながら、走る。
青い炎が剣身に宿る---長く長く尾を引いて、まるで細く長い蛇のように残像を灼き付ける。
刺突を繰り出した。
狙いはやはり、青さんの足。双剣使いが斬れなかった箇所へ。
ギィン、と刺突そのものは弾かれたが---青さんの足が、炎に包まれた!
ちょっ、何してくれてんの!?
あ、青さん!
焦った自分が見つめる中、青さんは一旦後退し、燃えている自信の足に目を向けた。
おもむろに左手でぱんっと叩く。消火完了。
……特にダメージは無いらしい。
青さんも、なかなかに頑丈だった。
「---」「---」
双剣使いと槍持ちが何か言い合いながら退避していく。
まあ多分、硬いとか、マジか魔法効かねーとか、そんなコトを話してんじゃないかと。
まだまだ序盤、互いに小手調べの域を出ていない。
自分だったら、どうだろう? 人間だったら、青さん相手にどう戦うのか?
ふと思った。
体格差イコール体力差とまずは考えるかな。青さん、明らかにタフだ。
こっちの世界に回復薬はあるのかな? あったとしても、全回復は難しいだろう。
それなら---短期決着を狙う?
最大の火力で、一気に押す?
武器も魔法も効きにくい巨人への対策を、彼等が考えていないはずが無い。
何か奥の手があるんじゃ……?
申し訳ありません、次回へ持ち越しです。




