ルー高原・3
夜空を見上げる。
大分、月が太ってきた。明日には満月になるんじゃないかな?
二つの月の距離も近くなっている。
月光に照らされた高原は、驚く程明るい。……月が二つだからね。
青さんは草の上に寝転がっている。
右さん左さんは近くの灌木をクッションに。
自分は、ポヨポヨと灌木に近寄り、その根元に潜り込む。
……明る過ぎて眠りにくい。
自分、電気は消して眠る派です。
いつものごとく、青さんの頭上ポジション。
あの戦闘(?)以来、青さんから離れないようにしている。
兎怖い。
攻撃と防御の無限ループとか、どうしろと。
青さんが歩き出す。
高原にやってきてからの青さんの行動範囲は、意外に狭かったりする。
動くのは狩りの時だけだった。
それが、今日は変化した。
峡谷沿いを歩く。
歩く。
流れていく景色を、自分はのんびり眺めた。
雄大な大地。緑豊かだ。巨人である青さんさえ、この世界においては小さく思えてくる。
……って、自分は更にちっちゃいし。
ミジンコレベルだ!
単細胞生物だから、微生物並って意味でかなり正しい!
でも。
青さん達と一緒なら、この世界中のどこにでも行ける気がする。
青さん巨人だし?
まるで石碑のように、大きな岩が立っていた。
それ以外は何ら変わらない原っぱ。
何もいない、ように思える。
しかし、青さんは棍棒を構えた。
戦気、と言うのだろうか。覇気、殺気?
狩りとは違う気配……闇狼二十数体と戦った時に似ている。
あれも結局は宴のご馳走になっちゃったから、狩りではあるのか。
ってコトは……何かが、いる?
狼二十以上に匹敵する、何かって…………え、ボスモンスター?
右さん左さんが上空を旋回している……と思ったら、急降下!
え、岩!?
何故か怪鳥達は、岩へと襲いかかった!
不思議な事が、目の前で起こった。
岩が、伸びた。
……そして分裂した。
は?
岩の上部が餅のように伸びて膨らみ、自ら分裂、くるりと回って……狐さんに変化した!
はぃい!?
狐!?
何で!?
双尾狐かと思えば、尻尾の数が違う!
しかも一回り大きい。
九尾狐。
ボスモンスター? それともレアモンスター?
と、取り敢えずレアで!
レア狐、右さん左さんの襲来を華麗に避ける。
怪鳥達はすぐさま上空に戻った。多分、正体を現すための攻撃だったんだろう。
さっきのアレ……まさか、魔法? 幻術?
初めて見たよ!
凄い!
こっちの世界、そーゆーの、やっぱあったのか!!
……あ、初めてでもない?
魔神様が瞬間移動してた、確か。でもあれは魔神様だし!
とにかく凄い!
レア狐は元々そこにあった岩に、引っ付くように擬態していたようだ。
今はその岩を盾にして、青さんを窺っている。
青さん、無造作に足を踏み出した。
警戒とか無いの?
幻術だよ?
レア狐が仕掛けた!
ブワッと尻尾の一つが巨大化する!
毛の一本一本が太い針となり………針鼠!? あ、やな予感。
大量の針が発射された!
やっぱり!
狙われたのは、青さんの足元。
ドシュッドシュッ……音が重い! 結構威力がありそうだ!
青さん、棍棒で針を払い落とす!
流石に全部は無理だった。でも針の大半は外れて地面に突き刺さっている。
足は大丈夫!?
あ、刺さってら。
……でも無視すんだ?
青さん、お構いなしに更に岩へと近付いた。
うん、何か針治療思い出した。青さんの血行が良くなった? そんな馬鹿な。
レア狐の別の尻尾が膨らむ。今度は何?
なんと、炎が出た!
炎弾の連射!
これも青さんの足元へ!
小さな爆発が起きる!
青さんがちょっとだけ、顔をしかめた、気がする。
……何か、あんまダメージなさそう。
更に近付く青さん。
今度は氷の球が………ああ、尻尾の一本ずつで攻撃魔法が違うのか。
また足元に命中。青さん、動じない。
………やっぱ、あれだね。
サイズが違い過ぎる。
この九尾狐……小さいのだ。
確かに双尾狐よりは大きい。でも。
闇狼と比べれば、その半分。
小さ過ぎて、攻撃が青さんの足元にしか届いていない!
焦るように次々攻撃を繰り広げるレア狐。
青さんはもはや頓着していない。警戒していたのは最初だけだったみたい。
一気に距離を詰め---。
棍棒を振り下ろした。
そこで予想外の--いや、むしろ期待していた事が起こる。
確かに棍棒が捉えたはずの九尾狐の姿が、消えたのだ!
棍棒が虚しく地面を叩く。
!!
幻術キターーー!!
目眩まし! いや、姿眩まし!?
やると思ってた!
逃げる? 逃げた!?
さあ、どこ行った!
--空から飛来する影。
「ケーーーン!」
あ。鳴き声。
あ。お空……。
そこには右さん左さんに吊り上げられたレア狐が。
あれ。もしかして。
……上空って、幻術の効果範囲外?
そういや最初に攻撃したのって、右さん左さん……。
自分と青さんの目の前で落下する九尾狐。
青さんがちょっと悔しそうに見えた、気がする。
……右さん左さんの勝利!!




