【日課】
10年後…… 武は15歳になっても日曜の朝は早起きして、仮面ライダーや戦隊シリーズを欠かさず観ていた。武の部屋にある棚はウルトラQといった古い特撮物から最新のヒーローアニメまで、ありとあらゆるヒーロー物のDVDで埋め尽くされていた。
武のノートには、オリジナルで考えたヒーローの姿が何十頁にも渡って描かれていた。今でもヒーローになれると信じている武の日課は、腹筋・腕立て・背筋・スクワットを朝晩100回に、自作のヒーローのコスチュームを着て近所のパトロールをすることだった。
12歳の時からこのパトロールを始め、近所で虐められている子供を見つけると「弱い者虐めは辞めろ!」と言って武が現れると最初はコスチュームを着た武に驚くが「変な奴来たから帰ろうぜ!」と言って逃げて行った。最近では虐めをしている子供達は、武の姿を見つけた途端逃げる様になり、虐められていた子供も関わりたく無いのか逃げて行くのだった。
煙草のポイ捨てをした男に「落としましたよ!」と煙草を拾って駆け寄ると、大抵はコスチュームを着た武に驚き逃げるのだが「何だお前!」と言って反撃される事も有った。中学生の武が大人に勝てる訳もなく、武はボコボコに殴られダンボールで作ったコスチュームもボロボロにされたのだった。それから武はコスチュームをヘルメットや布で作り変え、テコンドーを習う様になり、最近ではボコボコにされる事も無くなっていた。
最近では近所で有名になり、武が庭でトレーニングをしていると「あの子気味が悪いわよね!?」と近所の人に噂され、子供が悪戯すると「そんな事すると変なお兄ちゃんが来るわよ!」と言われる様になった。ある意味、武のお陰で町の平和が保たれていた。
そんな武の中で、ある変化が起きようとしていた……