【見舞】
それから新居の葬儀が済むと、智美に酒井から連絡があり「吉野君がどうしても貴女に会いたいと、病院まで来て貰えますか?」との事だった。
智美は酒井に案内され病室に入ると、ベッドに横たわる吉野の姿があった。智美に気付いた吉野が起き上がろうとすると、智美は「無理しないでください」と言った。
吉野は「新居さんの奥さんですね、僕のせいで本当に申し訳ありません」と泣き出した。智美が「そんな誰のせいでも……」と言うと、吉野は「いえ、雪崩があったとき僕は立ち竦むだけで……」と雪崩にあってから助け出されるまでの事を話した。
智美は吉野の話しを聞き終えると「吉野さんだけでも無事に帰れて良かった、吉野さんを無事に帰したいと思っての行動だと思うので……」と言った。吉野は「新居さんみたいな良い人がなくなて、僕みたいな……」と言うと、一緒に来ていた武が「父ちゃんがお兄ちゃん助けたの? やっぱ父ちゃんはヒーローだね!」と言った。吉野は泣きながら微笑むと「そうだね、お父さんは僕のヒーローだ!」と言った。
武はベッド上の平らになった部分を見て「お兄ちゃんの足ぺったんこだね」と言った。吉野は「お兄ちゃんドジだから、片足を山に忘れて来ちゃったんだ」と言った。智美が「まぁ……」と言うと、吉野は「片足くらい、新居さんに助けて貰っただけで……」と言った。武は「じゃぁ〜 山に探しに行かなきゃね」と言った。吉野は「そうだね、片足しか無くても、いつかもう一度山に挑戦するよ」と言った。