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【遭難】
新居は吉野を乾いた服に着替えさせ、雪を自分の手で溶かし濡らしたタオルを吉野のおでこに乗せた。
新居は「吉野君の骨折の事を考えると、早く助けを呼んだ方が良いのだが、この吹雪では吉野君を連れて行くのは……」等と考えていた。すると吉野が「寒い……」と言った。新居は「吉野君、大丈夫か? これを食べなさい」とチョコを口に含ませると、自分の服を吉野に被せた。
新居は「吹雪が収まるのを待って助けを呼びに行こうと思う」と吉野に言った。すると吉野は新居に縋りつき「お願いです! 見捨てないで! 置いて行かないで……」と言って泣きだした。新居は「分かった! 分かったから、とりあえず休みなさい」と言って吉野を寝かせた。吉野は「寝てる間に置いて行ったりしないでください、絶対ですよ!」と言った。吉野は先ほど置いて行かれたのが余程不安だったのか、独り残されるのを執拗に嫌がった。
新居は岩穴周辺にある木に服を結び付け、救助を待つ事にした。岩穴付近の上空を救助ヘリが通過したが、それから2日経っても救助が来る事は無かった。