表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

【雪崩】

 やがて斜面に差し掛かると、先頭から順に距離を置き、順番に斜面を渡って行った。4人目が渡りきり、新居が斜面を渡っていると頭上でゴーと音がした。


 酒井が「雪崩だ!」と叫んだ。雪崩から逃げる余裕が無いと思った新居は吉野に向かって「ピッケルを立てて身体を低くしろ!」と叫んだ。それから仲間を巻き込まない様にロープを外した。


 斜面を猛スピードで落ちてくる雪の壁に吉野はは呆然と立ち尽くすだけだった。襲い掛かる雪に新居は抵抗しだが、吉野との間に繋いだロープに引っ張られ2人は雪に飲まれて行った。


 新居は咄嗟に口を手で覆った為、なんとか息は出来たが、何処が上で何処が下かが分からなくなっていた。新居はとりあえず上だと思う方の雪をかいた。なんとか地上へ這い出し辺りを見回すが酒井達の姿はまるで見えなかった。


 新居は吉野のは無事か? と思い「吉野〜 !」と叫ぶが返事が無い。新居は吉野と繋いでいたロープを引っ張ってみると、弛んでいたロープが雪の中から姿を現した。新居は張り詰めたロープに手応えを感じ、ロープの先を手繰たぐって行った。


 雪に埋もれたロープの先を掘り起こすと、そこには吉野の姿があった。新居が吉野を引きずり出すと、辛うじて吉野は息があった。新居は「吉野君! 吉野君!」と言いながら吉野の頬を叩いた。吉野は思い切り深呼吸をしたかと思うと「ゲホッゲホッ」と咳込んだ。


 新居が吉野に「大丈夫か!?」と声を掛けると、吉野は「鼻に雪が……」と言ったかと思うと、今度は「うぅ……」と言って顔をしかめた。新居が「どうした? 何処か痛いのか?」と聞くと、吉野は「足が……」と言った。


 新居は吉野の足を確認して「折れてるかもしれないな……」と言って足を固定する為、ピッケルを足に括り付けた。新居は「これじゃ下山も難しいか…… とりあえず風がしのげる場所を探そう」と言った。


 新居が「辺りで避難出来る場所が無いか探して来るから吉野君は待っててくれ」と言うと、吉野は怪我をして不安だったのだろう「置いて行かないでください」と言った。新居は「大丈夫! ちょっと辺りを見てくるだけだから」と言った。


 新居は吉野の「絶対戻って来てください! 必ずですよ!」と言うのを背に、避難出来る場所を求めて歩き始めた。しかし、いくら探しても避難出来そうな場所が見つからずあきらめかけた時、岩穴を見つけた。新居は「熊の巣穴じゃないと良いが……」と岩穴の中を確認したが、動物が居た様な形跡は無かった。


 新居が吉野の所へ戻ると、吉野は新居を見て安心したのか「もう戻って来ないかと思いました……」と言って泣きだした。新居は「放って行く訳無いだろ! ちょっと遠いけど岩穴を見つけたから移動しよう」と言った。


 吉野が歩けない為、新居は吉野を背負って歩き始めた。吉野は新居の背中で「足手纏あしでまといになってすみません……」と新居に謝った。やっとの思いで岩穴に到着し、新居は食料を確認するが、チョコが少しあるだけだった。新居は「この天候じゃ直ぐに助けは来ないかもしれないな…… このチョコはちょこっとづつ食べよう!」と渾身こんしんの親父ギャクをかました。


 新居が少しでも吉野を元気づけようと思いかましたギャクだったが、吉野の耳には届いていない様だった。新居が吉野に「吉野君どうした?」と声を掛けるが、吉野は汗をかき意識が朦朧もうろうとしていた。新居は吉野に駆け寄り、おでこに手を当てると「不味いな、骨折したせいで熱が出てきたか……」と言った。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ