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ヒーローとヒロインは出会った

とうとう、彼らが出会いました。

そして、次の日。

彼女の噂を聞いて興味を持った彼だが、わざわざ普通科に彼女を見に行くほどではなかった。


そんな時に彼女が一人で中庭のベンチに座っているのに気付いた。


茶色の長い髪に五家を示すブレザーの襟の緑の線、あれが噂の狭山の娘か、ちょうど良いと彼は話しかけてみることにした。


そう、家の格によって制服のブレザーの線の色が違うのである。

そして、五家から学園の高等部に在籍している女性は自分の婚約者を除いては彼女だけだった。

このタイミングの良い出会いが彼の運命を変えることになった。


彼女の座るベンチの前に立って開口一番に彼は言った。


「お前が転入生の狭山の娘だな。あの佐々木を怒らしたっていうからどんな女かと思ったら、普通だな」


かわいらしい顔だが、抜きん出た美人の婚約者を見慣れた彼には彼女はあまりにも普通だった。


「あなた誰よ!失礼ね!良樹さんは私のこと怒ってなんていないわ!親切に案内してくれたもの!」


ほう、下の名で呼ぶほど親しいのなら、噂が間違っていたのか…、面白いな、そうつぶやいた高神正明は彼女に興味を抱いた様子だった。


「俺は生徒会長の高神正明だ。俺にどういう態度をとればいいのかわかっているな」


自分の名を知らないからこそのこの態度が、どう変わるのかと意地悪な気持ちで彼は問いかけた。


「偉そうに!御三家だっていったってあなた自身が偉いわけじゃないじゃない!初対面の人に対する礼儀を知らないの!?」


「面白いことをいうな。それで俺が名乗ったのにお前は名乗らないのか?お前だって礼儀を知らないじゃないか?」


髪と同じ茶色の眼を大きく見開いて言う由香里に、なんだ…ただの世間知らずの無礼な娘かと内心がっかりした正明だったが続く彼女の素直な言葉にすこし興味を取り戻した。


「あっごめんなさい。私は狭山由香里よ、よろしくね」


「よろしくする気はないがな」


そう意地悪く彼女に答えた彼だった。


「そんなこといわないで、実はみんなに遠巻きにされていて寂しいの」


そういってしょぼんとする由香里にさっきまでの元気はなく、そのギャップは彼の心にさざ波を与えた。


彼の婚約者はとても優秀な女性で特進科の唯一の女性でもある。


その婚約者にいつも上位に立たれ、強い姿しか見たことがない彼には強気な発言をしたくせに、今は弱弱しい由香里はとても新鮮に見えた。


そして、素直に寂しさを口にする彼女に保護欲を誘われた。


実はこれらほぼゲームの流れと同じである。


ゲームでは、良樹と出会った中庭にて今度は生徒会長の高神正明に出会い、強気だが実は弱い女性ということをアピールすることにより彼の興味を誘い、好感度を上げるのである。


昨日は良樹との運命の出会いに浮かれていた彼女だったが、冷静になったら自分のアピールにあまり良樹が反応していなかった気がしていた。


良樹は自分を甘々に愛する男性と思い込んでいるために、彼に嫌がられていたことにはまったく気づいていなかった。


だから、腕を組むなどの接触が出来なかった理由として勇者ルートに入っていないからまだ攻略対象者ではない状態なので触れないのではと考えたのだ。


実際は反射神経の良い良樹が全力で接触を避けた結果だったのだが、由香里はそう思い込んでしまった。


彼女が現実をきちんと見つめていればそんな勘違いはしなかっただろうに…。


正明を攻略して彼に婚約破棄をさせなくてはいけない、そう思ったからこその行動だった。


なにしろ勇者ルートを繰り返していた彼女にとって正明とその婚約者は自分が良樹と幸せになるためのただの踏み台でしかなかった。


彼らにも感情があることは、彼女には思いもよらぬことだった。


そして高神正明と狭山由香里の出会ってしまった。そう、ゲームと同じように。


彼らのことが学園中に噂されるのはすぐのことだった。



まだまだ、好感度は低い正明です。でも、ある方の暗躍によりうなぎ上りに好感度が上がってしまうことでしょう。

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