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そして、ヒーローは・・・

不憫すぎるヒーローの回です。

「なんなのよ!どういうこと!あんたが魔王になんなきゃ、良樹が私のものにならないじゃない!」


顔を歪めて叫ぶ由香里は彼らに掴み掛かろうとしたが事態を察した風紀委員に身柄を拘束され、良樹達に近づくことはかなわなかった。正明たちも由香里を助けようとした為に、ついでに拘束された。


「魔王…?私が?魔もいない世界で魔王?どうやって?しかも、正明様は捨てられたのかしら?」


雰囲気をこわされてご立腹な響子は彼女を問い詰めようとした。それを止めるのは、由香里の乙女ゲーム妄想を知って、利用していた良樹だった。響子によってとどめを刺された正明が蒼白になっているのを気遣う人間は誰もいなかった。


「狭山さんは君が婚約破棄された怒りで魔王になって自分が勇者になれば僕が彼女に惚れるって信じているらしいんだ。加賀に彼女の妄想を聞かされた時は驚いたよ。本気でそんなこと信じられるなんてね。勇者によって魔は完全に滅ぼされ魔王はもう生まれないことは、幼い時から繰り返し教えられてきたはずなのにね」


しれっとした顔で加賀から聞いたと嘘をつく彼はゲームがうんたらと由香里が騒ぐ前に手下の風紀委員達に彼女を風紀室で落ち着かせるようにと、その場から連れて行かせた。もちろん、彼女が何を言おうが自分の事を信じる人間に見張りを任せた。加賀印の鎮静剤をもたせて…。


残された正明たちも彼女に危害は与えないし、落ち着いたら拘束をはずすと言われた為に、静かになった。もとより、お坊っちゃんの集まりの生徒会、しかも草食系ばかりだった彼らが風紀の武闘派に逆らえるわけもなかった。俺様系の正明も勇者の力(笑)に目覚めちゃったら困るとの考えから武術は教えられていなかった。なにより、良樹狙いという由香里の発言に力が抜けて逆らう気力を無くしていた。


「加賀さんは、どうして彼女の妄想を知っていたの?」


近づいて来る加賀ではなく良樹に疑問をぶつける響子は、彼の言葉に怪しさを感じていた。


「彼女の過去や言動を調べて知ったらしいよ。学園に入る前からの妄想らしいけど、それを調べ上げるんだから、加賀はすごいよね」


不憫な男の加賀正輝には元凶によって、また新たな伝説が付け加えられた。


褒められているはずの加賀の引きつった顔を見て良樹の嘘に確信を持つが、彼が私に知らせたくないと思ったんならいいやとあっさり追及をやめた響子だった。愛ゆえか?響子の良樹への信頼度は高かった…。そして、さりげなく余計な事を言うなといわんばかりに自分に威圧を与えてくる良樹に、正輝は反論を諦めた。顔は引きつっていたが、見かけだけは風紀委員長として堂々とした態度で良樹に話しかけた。


「学園長から許可が下りた。彼らの処分が決まった」


そして、おとなしくなった生徒会を厳しい顔で見ながら彼は彼らの処分を告げた。


「高神正明以下生徒会役員達は、度重なる仕事の放棄や授業の無断欠席が学生として相応しくない行動との判断の為、罰則を受けてもらう。君達には五日間の自宅謹慎を命じる。そして、今期は風紀が生徒会の代行を行う。生徒会選挙は夏休み明けに行うことになった」


「なっ!役員を辞めろということか!」


正輝の言葉に激昂する役員達だが、良樹と響子に絶対零度の視線にすぐにおとなしくなった。


「そうだ、君達には任期途中でやめてもらう。下手な時期の選挙は目立つし、選挙の準備や立候補がそろうまで時間がかかるからといって三ヶ月も君達の尻拭いをしなくてはならないとはな」


そう吐き捨てるように言う正輝は、学園長や教師への説得や書類仕事が増えるのを嫌がった風紀委員達との攻防戦を思い出していた。


高神家に歯向かいたくない日和見学園長には、良樹に教えられたことを耳打ちし…頭がってつぶやけって…まさか…。教師には彼らが授業に出ないのは指導方法に難があるからって思われたら再就職も難しいですよね~味方になって欲しいですよね?って良樹が説得…あれ?脅しじゃね?

風紀の脳筋共には書類一枚処理するごとに好きな女の子の写真やるっていったら…好きな子を把握済みの良樹からカメラ目線じゃない写真をもらって喜んでいたな…あれ…犯罪じゃね…?


処分を認めさせるまでを思い出せば思い出すほど、良樹への恐怖が湧く正輝だった。


「加賀、由香里は何の処分になるんだ?彼女は何もしていない。授業の無断欠席ぐらいで拘束して風紀室に連れて行ったのは何故だ?変な妄想をしたことが罪にでもなるのか?ならないだろう!誰かに吹き込まれたのかもしれない!そうだ、響子!俺との婚約が不満だったお前が彼女を利用したんだろう!」


意外に鋭かった正明だが、彼はやっぱり残念だった。


「私が彼女に接触していないことは高神の監視がよくご存知よ。私は常に位置情報を確認されているし、私に接触する人も調査されているのよ。証拠も無く人を罵倒する気なのかしら?」


冷たい目をして、そう言い切る響子の迫力に勝てない残念な俺様正明だった。


「じゃあ!佐々木が!」


「ふざけないでくれる?それこそ、明確な証拠を持ってきてから言ってくれないかな。彼女と接触したのは校内を案内した時だけ。彼女の警護をしていた風紀や監視カメラも僕の無実を証明するよ」


そう微笑みながら冷たい目で自分を見る良樹に、尻尾を巻くしかない正明だった。


真実を知る男正輝は、主犯(良樹)に転がされている正明に同情の目を向けていた。

逆らっちゃいけない人に逆らおうとするなんて、あいつが証拠を残す訳無いだろうと…。


まだ、由香里を信じようとする正明と違って、失恋済みの役員たちは佐々木の為に高神を選んだのかと妙に納得していた。哀れなり…正明。自分たちが選ばれなかった理由が正明ではなく、良樹だと当たり前だと思うらしい…。ちなみに、傍観者たちも由香里の狙いが良樹だったと知って納得していた。正明様はありえないものね~と。…不憫すぎる勇者の末裔、高神正明だった。







ヒロインは、はやすぎる退場ですが彼女にはこれからある方との対決が控えておりますのでね…(黒笑)


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