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閑話  俺と僕と胃薬の出会い

不憫系風紀委員長と腹黒系風紀副委員長の出会いです。

ちょっと薔薇臭が漂っているかも…(笑)

「お前、あいつに何をしたんだ?」


同じクラスであってもあまり話したことのない少年、加賀正輝に唐突に聞かれ良樹は困惑した。


「あいつ?」


「十家の田崎のバカ息子だよ」


田崎もクラスメートなのだが、同じ十家の良樹が先生の覚えもよく自分よりも人気が高いことが気に入らず、何かにつけ邪魔をしてくる少年だった。


「何もしていないけど?」


今まで傍観していた加賀が突然、関わってきた思惑が分からず困惑しながらも否定する良樹だった。


「ウソだ!あいつ、お前のことイジメてたろ。なのに今は怯えているじゃないか」


「僕は何もしていないよ。聞いてみなよ」


田崎が加賀に助けを求められるようなやり方はしていないけどねと内心の思いを笑顔で隠す良樹だった。


「聞いたって言うわけないだろ」


良樹の思惑に気が付いているのか苦い顔をする正輝だったが、もう良樹から何かを聞き出すのは無理と悟ったらしく、その場はそれで話が終わった。



正輝はしばらくしてから、ある思惑があって田崎に良樹に何をされて怯えるようになったのかを聞いた。


「何もされていないよ!君には関係ないだろ!」


そう言って走り去った田崎が思惑通りに良樹の元に行ったことに後をつけながらほくそ笑む正輝だった。


「さっ佐々木おれ何も言ってないからな。あのことは黙ってろよ」


そう良樹に念押しをして立ち去る田崎が完全に見えなくなるのを待って、彼は良樹に問いかけた。


「で、あのことって何?」


「ゆさぶりをかけたんですか?まったく1月も僕に付きまとうとは…ストーカーですか?僕、そういう趣味無いんで別の人をあたってくれます?」


正輝の存在に気づいていた良樹はため息をつきながら彼にそう言った。


「俺も違うわ!ちゃんと好きな女の子がいる!」


妙な誤解を解こうと必死な彼には、実は薔薇な趣味を持つ姉がいた。


「ああ、美奈子さんですか」


彼の必死さを綺麗に無視して良樹は爆弾を落とした。


「なっなんで知って…そうか田崎を黙らせたのも弱味を握ったんだな」


自分しか知らないはずの恋心を良樹が知っていたことで彼は田崎が良樹に怯える理由を理解した。


「汚いことをするって言いたいんでしょ」


そう馬鹿にしたように正輝を笑う良樹だった。


「いや別に、戦略としてはいいんじゃないか?お前頭いいけどちっちゃいし…」


朗らかにそう言い放った正輝…良樹の逆鱗に触れたことを気づいていなかった。


「禁句をいいましたね…僕は平均です。あなたが大きいんです。成長期をみていなさい!」


怒りも隠さずに、そう宣言した良樹に目を丸くした正輝は、爆笑した。


「アッハッハお前やっぱり面白い!よし友達になろうぜ!そうしたらお前が弱味をたてに脅したこともちっちゃいこと気にしてることも黙っててやるし、…美奈子ちゃんの好み教えてくれるなら、我が家秘伝の背を伸ばす方法を教えてやろう」


笑いながら、脅しているのか取引をしようと言っているのかわかり難い正輝だったが、良樹は今までにない反応をした彼に興味をもった。


「そうか…加賀家は薬師が祖、今も医学関係を得意としていましたね…みんな大きいし…。友達になってあげてもいいですけどやっぱり面白いってどういうことですか?」


ツンデレな良樹になんなの、こいつかわいいという思いを隠そうともせずに正輝は答える。


「だってお前…笑っているのに笑ってないもん」


良樹のことを気にした理由はそれだった。

いつも笑顔のクラスメートだが、彼が本当に笑っているのかが疑問だったから観察していた正輝だった。


「君もですか…僕そんなに笑顔下手ですか?」


上手く笑っているはずなのに…とすこし、しょんぼりする良樹だった。


「君もって他にもいるのか」


こいつの笑みに気が付ける奴が、自分以外にもいたなんて!と自分の人を見る目に大いなる自信を持っている正輝。


「幼なじみです」


「へ~でも俺と幼なじみが凄いんじゃね。お前、親父たちより作り笑顔上手いぞ。まだ子供のくせにって気になったからずっと見てた」


正輝君…君の自信は一体どこから…?


「同い年のくせに…っていうかやっぱりそういう」


どこか、おっさんくさい正輝に再び薔薇臭漂う疑惑をぶつける良樹だった。


「違うからな!友情だぞ、友情!」


敏感に良樹の疑惑を察知して、そう叫ぶ彼を笑いながら見る良樹。


それは、本当の笑いだった。


そんな調子で良樹に付いて回る正輝が起こす問題を解決していく内に、彼等は親友になった。


だが、加賀家秘伝の方法を試しても、成長期をむかえても、180㎝の正輝の身長を抜けなかった良樹が八つ当たりとばかりに彼を巻き込み始めたことから、彼らの立位置は変化した。


そう、正輝の方がストッパー役になったのだった。


手段を問わず巻き添えを気にしない良樹の隠れ蓑にされるようになったことから彼の苦労は始まった…


良樹がやった邪魔者排除を自分が指示したことにされているため、冷徹な風紀委員長と思われた。


その上、初恋の美奈子ちゃんには怯えられている…しかも彼女の理想は良樹だった…。


不憫すぎる正輝だったが、彼らは親友だった。



そして、巻き添えを減らす為に、今日も正輝は加賀印の胃薬を片手に奮闘するのであった。


だが、そんな彼は知らない…良樹ご愛用の自白剤が加賀印だということを…。


正輝くん…真の敵は身内にいるぞ!



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