まじでこの人どうにかしてくださいよ
~まじでこの人どうにかしてくださいよ~
登場人物
・水鏡凩(みずかがみ-こがらし)
香葉に振り回される純情な男の子。男の娘説有りw
・椿香葉(つばき-かおるは)
単眼の覚さん。まぁ、覚全員単眼なんだけどね。私の中ではw
凩命w
「こ・が・ら・しぃーーーー!!どこじゃーー!!
どこにおるうぅうぅぅぅ!!!」
香葉がドタバタと屋敷を駆けながら、凩を呼ぶ。
そんな彼女の手には、ふりっふりの着物があった。
「やっと完成した新作なんじゃ!!着てみてくれんかのぉぉぉぉぉぉ!!!」
叫びまくっている香葉。瞳にはキラキラと星が瞬き、頬は赤く染まり、
ぜぇはぁと息を荒げている。
そんな100%怪しい状態の人(妖怪)に近づきたい、なんて思わないだろう。
凩はひっそりと息を潜め、自室の押し入れに隠れていた。
「(まずい今見つかったら完全に女装させられる
やばいやばいやばいやばいYABAI)」
脳内でパニックを起こしながらガクガクと震えていた。
とりあえず香葉の熱が冷めることを願いながら
上手くここで過ごすことにしよう・・・。
何故自分の住んでいる家でこんなにも怯えていなくてはいけないのだろうかw
こうして隠れてはいるが、凩自身は着せ替えが嫌いな訳ではない。
普通の男物の服なら全然一向に構わないのだ。むしろいくらでも付き合う。
香葉のこと好きだし。
しかし、香葉が着せようとしてくるのはいつだって女物の服だ。解せぬ・・・。
可愛いからじゃ☆と前に言われたが、
男なのに可愛いと言われても複雑だった。むしろ嬉しくない。
もっと男らしいイケメンにでも生まれたかったが、
妖怪である彼は残念なことに一生この女々しい少年の姿のままなのであった。
ちくしょー。
そもそもどうして町で買い物をする度に、お嬢ちゃん一人で来たの?えらいねぇ!とか言われなくてはいけないのだ。理不尽だ。男なのに・・・!!
「おっといけないいけない・・・。ついつい愚痴ってしまった・・・」
ふるふると首を振って、とりあえず今のは頭の片隅へ追いやる。
す・・・っと押し入れの戸を開けて外の様子を伺おうとした。
うっすらと開ける。
目の前には大きな単眼を爛々とさせた香葉が居た。
閉めた。
「あー・・・。気のせい気のせい」
「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!見つけたぞいKOGARASI!!!」
スッパーーーーンッ!!と戸が勢いよく全開になる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
気のせいだと信じたかったのにぃぃぃぃぃ!!!」
涙目で叫ぶ凩。
捕まってたまるものかと脱出を試みるが、
香葉に片手で着物の首根っこを掴まれてしまった。
「離して下さい香葉様ッ!!俺女装なんてしたくないです!!」
じたばたと暴れてみるが、
香葉のこういう時に発揮される凄まじい握力の前では無意味だった。
「離す訳ないじゃろうが☆」
デスヨネー・・・と、凩は観念したかのように大人しくなった。
「お、今回はなんだか納得するのが早いのぅ。
やっと逃げても無駄だと気づいたかの?凩」
香葉が満足気な笑みを浮かべる。
「妾の凩センサーと風美君お手製の透視ヴィデオキャメラがあれば
どこへ逃げようとも無駄なのじゃ♪」
凩を掴む手を放し、懐からビデオカメラを取り出す香葉。
「ちなみに、さっきの怯えてガタガタ震える姿もバッチリ丸見えじゃったぞ☆
勿論撮ってある☆」
にやにやと嬉しそうに笑う彼女と反対に、凩は真っ青になりながら懇願した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?い、今すぐ消して下さい!!今すぐッ!!」
「じゃ??」
香葉はきょとんとしながら小首を傾げる。
「じゃ??じゃないですよ!分かってるくせに!」
「まぁ、分かってるがのw」
「じゃ、じゃあ消してくれますよね!?」
「あぁ・・・」
「!」
凩の必死な様子に香葉はさすがに哀れみを感じて消してくれる
・・・という訳でもなく。
「だが断る☆のじゃ☆」
「うざいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
むしろ楽しそうにキラッキラのスマイルで断ってくれやがった。
凩は地面に突っ伏して泣いた。
「おふっ・・・!泣いてる凩可愛いのぅ・・・w撮るべし撮るべし」
「撮るな馬鹿香葉様ぁぁぁぁ!!」
「冗談じゃwさすがの妾でもそこまではせんわw」
はっはっはと笑う香葉。間違いなくするだろあんたw
「今のは心のキャメラに撮ることにするぞぃ。
さっきの映像は毎晩眺めて幸せな気持ちにさせてもらうつもりじゃから
消す気はサラサラないがの!」
「どういう意味ですか・・・!?」
げっそりとした様子で、凩が問う。なんかもう目が死んでいるw
「さぁてのぉ?想像にお任せするのじゃ!・・・あ、そうじゃ」
「な、なんですか・・・?」
何かを思いついたらしい香葉。嫌な予感しかしないのが何とも悲しい現実だ。
「消す代わりに、凩本人が毎晩妾の前で
泣くというのはどうz「余計嫌ですよ!!?」
なんて恐ろしいことをさらりと口に出すんだこの変態は。理解できない。
「そんなことするくらいなら女装する方がまだマシ
・・・・・・・・・・ハッ!?」
勢いで思わず言ってしまった言葉に早くも後悔する。
目の前の香葉の嬉しそうな表情と言ったら・・・。
「ようやく言ってくれたのぅ凩♪
そうかそうかそんなに女装がいいかでは今すぐ着てくれさぁさぁさぁ!!」
どこから出したのか。
いつの間にかさっき新作だどうのこうの言っていた
ふりっふりの着物が香葉の手にあった。
「お着替えしましょうねぇ凩~なのじゃ☆」
「嫌だぁぁぁ!!さっきのは口が滑っただけで!!」
「ん?聴こえないのぅ。耳が遠くなったかのぅ?」
「じゃ、じゃあ今すぐ病院行ってきたらどうですか!?」
「あー。そんなことなどどうでもいいのじゃとにかく今は凩じゃ凩」
「ひぃぃっ!?」
じりじりにじり寄ってくる香葉から逃げるようにあわあわと後退する凩。
やがて屋敷が凩を裏切り、彼は部屋の隅に追い詰められた。
「さぁてもう逃げられんぞぃ凩・・・!!」
「う、うぐぐッ・・・!!」
悔しそうに呻いた後、これはどう考えてももう逃げられないな・・・
と悟った凩は、すっと腕を持ち上げて自分の顔の近くまで持っていき、
人差し指を立てた。
「・・・じゃあ1つ約束して下さい」
「?何かのぅ??」
「もう盗撮しないで下さいね。あとそれ消してくださいね」
「ちっ・・・」
「え?」
「何でもないぞい。分かった分かった・・・ほら、消したのじゃ」
ビデオカメラの操作画面を見せつける。ちゃんと消してあるようだった。
「よし!なら安心です」
ほっと一息ついた凩に、香葉の魔の手が伸びる。
「じゃあ、始めるとするかのぅ♪」
わっきわっき忙しなく手を動かす香葉。
「今回だけですからね」
ジトーっとした目で香葉を見る凩。
「え?」
きょとーんと目を丸くする香葉。
「何か言ったかのぅ凩?あぁ、いっぱい女装がしたいと。
ソウイッタノジャナ☆」
「言ってないですよ!!」
片言でとぼける香葉。もう泣きたい誰か助けてください。
そんな願いは誰にも届かず。凩は今日も女装させられたのであった・・・
~後日☆~
「香葉さん、約束のブツお届けに参りやしたぜぃ・・・です」
「おぉ、風美君・・・ご苦労じゃったのう・・・」
「全く、ガクブル凩ちゃんという
素晴らしいモノを撮影してくれるとは・・・です。
キャメラ作成者として冥利に尽きるってもんです・・・w」
「ふっふっふ・・・それ程でもあるのじゃ・・・
して、あの映像を焼いたDVDは?」
「こちらになるです・・・」
「こ、これは素晴らしいッ・・・!!
映像も物凄く綺麗に仕上がっておるではないか!」
「喜んで頂けて幸いです・・・」
「うむ、またよろしく頼むぞい・・・。これは代わりのブツじゃ」
「ぬぉぉ!!
これは新作フリフリ着物凩ちゃんのプロマイドじゃないですかッ!!」
「自信作じゃよ・・・いつも良い布をありがとう、風美君・・・じゃ」
「いえいえ、あたしはこれさえ頂ければ
いくらでも布なんて作りますですです・・・」
「ふぇっふぇっふぇ・・・風美君、お主も悪よのぅ・・・w」
「へっへっへ・・・香葉さんこそ・・・w」
といった一連のやり取りを、凩は黙って見ていた。ガン見していた。
ビデオカメラでその光景を撮影しながら。
後で尋問してやろうこれを証拠品として・・・と、凩は心の中でにやりと笑った。
そんなことも露知らず、悪友2人は高笑いしていたのだった・・・