旅は楽しく行きましょう
エミーが持ち帰った情報を元に、これからの予定を組む。今回はリディアの趣味である温泉街がこの大陸にもあると言う事もあってかリディアの機嫌も非常に良い。
私達の国セレッソ独特の温泉は他国にはなかなか無い。
火山があり、そして地下水源が無いと出来ない物だからだ。
しかも温泉が出る所によってはその温泉の効能が違う。
地質の関係で、体のどの部分に効くかが変わるからだ。
この国の温泉はどんな効能を持つのか分からないが、リディアはそれでも楽しそうだ。
しかし、此処は火の大陸程、火山活動が活発では無いから温泉を見付けるのにも相当苦労した筈だ。
私達の国は本当に狭いながら色々な資源に囲まれているのだと改めて実感させられた。情報が乏しかったのは何でも此処最近出来たばかりだと言う事もあった為である。
大国が揃う大陸の片隅に存在する我が国にその噂が届くのはきっと一年後位だろう。
まあ、温泉好きのリディアがいるから早まった可能性もあるが、やはり情報伝達の面で我が国は他の国に少々遅れがちだ。
情報収集が得意な一族がいるが、やはり伝達系統が未だに発展途上なのだ。
今、出来るだけの範囲でも早い情報伝達を心掛けている。我が国に不利になる様な物は出来るだけ優先的に仕入れておきたい。
我が国を守る為にもそれが有効なのだ。
それ故、王家所属のお庭番衆にはそう言った情報を優先的に集める様に命を下しているのだから観光名所の~何て情報が遅くなるのは当たり前なのだ。
(最も、我が国の観光資源の一つににもなっているのだから、これは敵情視察としても…)
と、そこまで考えた私は苦笑して、その考えを振り切る。
今回はあくまでも観光でついでに国の面子を守る為に帝国の見合い宴に行くのだ。
その宴はきっと混沌とした物になるに違いない。
だからこそきな臭い宴等の事は今は考えず、息を抜いて気楽な旅をする事にした。
でないと、帝国ではもの凄くストレスが溜まりそうな気がするのだから。
そんな風に考えながら、この街に一泊してから私達は次の街へと繰り出し、そこを二泊してエミーにリディア共々連れ回されて、胸焼け気味になりながらリディア待望の温泉街にまで歩みを進めていた。
その街に近付くにつれて、温泉独特の香りが鼻を刺激する。
紛れも無く、本物の温泉の様だ。
「きゃあああああ。愛しの温泉ちゃあああああんんんん」
耐え切れなくなったかの様にリディアの嬌声が上がる。
ああ、分かってたさ、こうなる事なんて。
最も菓子の街を堪能した時にエミーも同じ様な状態だったので、私の懐刀達は揃って似た者同志なのだ。まあ、普段がストレスが溜まる様な仕事をしているのだからこればかりは多めに見る。
私だって早く闘技大会に出たいものだ。
それぞれのストレス発散方法が食い気、湯浴み、運動…うん。何だかとても色気の無い組み合わせだがそれはそれで私達にはお似合いの気がした。
それからは菓子の街でエミーに引きずり回されたのとは逆に、今度はリディアにあちこちにある温泉に連れ回される羽目になった。
嫌いでも無いが、リディア程長時間も入っていられないし、エミー等は早々にリタイアしたり、何だかかんだで忙しないがとても楽しい旅行の良い思い出となったのは事実だった。
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そして温泉街を堪能する事、三日後。
温泉を惜しむリディアを促しながら私にとってのストレス発散を兼ねた闘技大会が開かれる街へと向かう事になった。
流石にこれ以上泊っていたら、参加出来なくなるのだ。
「ふう…。しかし、久々に思いっきり体が動かせそうで楽しみだな」
私の気分も久々に高揚していた。
「うんうん。イリアちゃんもの凄く良い顔! 何時もの眉間の皺も取れてるし、すっごい上機嫌だね!」
「眉間の皺が取れるのは良い事だけれど…。その取れる理由が闘技大会ってのがまたイリアらしいわね。まあ、それは私やエミーも人の事言えないけどね」
「眉間の皺? これはもう癖の様な物だから意識していないが…。そうか。私はやはり政務等より、国の為に剣を取って戦う方が性に合うのだろうな。私の身の内にある《アレ》もまた歓喜に震えているからな」
「ま、気持ち分からなく無いわよ。あんだけ我が侭し放題の自己中女達やら腹黒狸やら達と付き合ってんだからね。ストレス蓄積されもするわよ」
私の言葉にリディアがそう言い、エミーがうん、うんと頷く。
「そうだよね~。私ももう時々暗殺しちゃって良いかな? って思っちゃう位だもん。けど我慢、我慢。あんな人達でも使い道はあるからねぇ~」
二人ともさらっと毒を吐く。私とて同じ気持ちだからな。しかし、言う通り使い道がある限りは暗殺は良くない。
ん? 使い道が無くなったら? そんなのは自業自得。国、強いては国民の害にしかならない者等、散るが良い。
「まあ、今回の闘技大会でそれの気も少しは薄まれば良いな。今回はどの様な形でエントリーする? 以前の様に個人戦、団体戦両方あるのだろう?」
「うん。前と変わらない形式みたい。此処はやっぱり両方だよね! 両方参加して、それから帝国に向かって丁度良い位の日程だよ~」
「ならば、そうするか。個人戦で当たっても恨みっこ無しだからな」
「分かってるわよ。イリア、今回こそ勝たせて貰うからね!」
「私だって、負ける気無いよ~~~!」
私達はそれぞれの言葉ににっと笑い合うと、愛馬達を走らせた。
これは楽しめそうな予感がする闘技大会になりそうだ。
だが、まさかその闘技大会で思いにもよらぬ事態に巻き込まれる何てこの時の私達は予測すら出来なかった。