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第17話 ダンジョン攻略④ ダンジョン踏破

 A級最上位ダンジョン、屍坑道。

 そのダンジョンボスである屍黒馬を倒した二人は、ボスエリアの先にやってきた。


 小部屋の中に帰還用転移魔法陣と宝箱が設置されている。

 リヒトは迷うことなく宝箱を開く。


「回収完了」


 リヒトは屍坑道を攻略したもう一つの目的であるそのアイテムを手に取った。


 ただならぬ気配を放つ剣だ。

 柄に豪華な装飾が施されているが、それよりも漆黒の剣身が目立つ。

 市販品とは比べ物にならない業物であることは明白だった。


「それは?」



「──魔剣アロンダイト。このダンジョンの初踏破報酬だ」



 純粋な切れ味がとてつもなく鋭いのに加えて、魔力の伝導率やスキル・魔法への耐性が市販品じゃ実現できないほど高い。

 さらにアロンダイトには自己修復機能まで備わっている。


 いずれ魔王やハイエンドと戦うことになるリヒトとしては、ぜひとも手に入れておきたかったアイテムだ。


「……さて、ダンジョン踏破は済んだ。煩わしい教師たちを黙らせに行くか」






◇◇◇◇



 学園内ダンジョンの入出管理場。

 そこに複数の教師が集まっていた。

 もちろんリヒトたちの不正を追及していた教師たちだ。


 彼らが見ているのは帰還用の転移魔法陣。

 途中帰還と踏破で別々に分かれているのだが、もちろん途中帰還の転移魔法陣を見ている。


「何分経過した?」

「二人が突入してから三時間ほどになります。ルミナの実力であればそろそろダンジョンボスと接敵することでしょう」

「未だ二人が帰還していないことからダンジョンボスまでたどり着けたと考える。つまり、ダンジョンの難易度に対して圧倒的に実力の足りていないリヒトが違法薬物を使用している頃合いということだ」

「ダグラス君ならば確実に証拠を押さえてくれるだろう」


 教師たちは自分たちが正しいと信じ、呑気に皮算用する。

 その時、踏破の帰還用魔法陣が光り中からリヒトとルミナが現れた。



「言われた通りダンジョンを踏破してきた。踏破の帰還用魔法陣から俺たちが現れた瞬間を見届けてもらえてよかったよ。一番の証拠だからな」

「「「……………………は……?」」」



 教師たちは予想外の展開に呆ける。

 が、すぐに喚き出した。


「そ、そんなはずがあるものか!」

「そうだ! B級討伐者相当の実力があるルミナですら怪我しているのに、F級未満のお前が無傷とはどういうことだ!」


 なんとか突破口を見つけようと必死になる教師たち。

 リヒトは懐から屍黒馬の魔核を取り出した。


「今回俺たちはこの訓練ダンジョン内で別のダンジョン屍坑道を発見した。この魔核は、ダンジョンボスだった屍黒馬のものだ」


 そこら辺の魔核とは比にならないエネルギーを内包した紫の魔核。

 それを見た教師たちは驚きのあまりしどろもどろになる。


「さ、最初から持ち込んだのなら……」

「A級魔物の魔核はとても貴重だ。それくらい貴方たちなら知っているでしょう? ただのしがない平民でしかない俺が買えるとでも?」

「う……」


 反論の言葉が思い浮かばず教師たちは押し黙る。

 そのタイミングで途中帰還の魔法陣が光り、気絶した取り巻きを闇で抱えたダグラスが現れた。


「だ、ダグラス君!」


 活路を見出した教師たちが目に光を取り戻す。

 リヒトはダグラスに問いかけた。


「ちょうどいいところに来てくれたな、ダグラス。俺が違法薬物を使う瞬間を抑えようと奔走してただろ?」

「……気づいてたのかよ」


 ダグラスは覇気のない声で忌々しそうに返す。


「さあ! リヒトの犯罪を暴くのだ、ダグラス!」


 教師たちが勝利を確信した様子でダグラスに希望を向けるが……。




「……リヒトが、違法薬物を使う瞬間も使った形跡も……なかった……ッ!」




 ダグラスは悔しそうに呟いた。

 教師たちは信じられない答えに言葉を失ってしまう。


 リヒトはここぞとばかりに畳みかけた。


「映像記録と簡易検査の魔道具を見てもらえれば結果は一目瞭然だ。それどころか、ダグラスの取り巻きによってルミナが殺されかけた! こっちのほうが問題だ」

「……ハッ。殺人未遂だと?」

「然るべき対処をしてくれるよな?」


 リヒトは教師に詰め寄る。

 が、ダグラスが割って入ってきた。


「冤罪を吹っ掛けるのも大概にしろよ! そこまで言うなら証拠を出せリヒト! やってねぇ証拠は悪魔の証明だなんだ言ってたテメェならできるよなぁ!?」

「その通りだ! 証拠もなく人を犯罪者として裁くわけにはいかんのだよ!」


 何も証拠を取れなかったのが悔しいから……。

 負けを認めたくないダグラスや教師としては、せめてこれ以上リヒトの好きにはさせたくないのだろう。


(まさか取り巻きがルミナを殺そうとするとは思わなかった。一週目でもそんなことは一度も起こらなかった。

 ……どの道証拠を取るのは不可能だったか。映像記録の魔道具なんて貴重なものを学園から借りようとしても突っぱねられただろうしな。不服だがこれに関しては俺の負けだ)


 リヒトはため息を吐く。

 証拠もなくリヒトたちを不正した犯罪者と決めつけていた教師たちに向かって口を開いた。


「殺人未遂の件は退く。だが、当初の約束通りダンジョンは踏破したし違法薬物の証拠も出なかった。俺たちの不正疑惑は取り消してもらえるよな?」


 教師たちは奥歯を噛みしめながら押し黙る。

 完全に反論できなくなったようだ。


「……ま、これで一応目的は達成ね。行きましょ、リヒト。もうこいつらの顔を見てたくないわ」

「ああ、そうだな」


 二人は踵を返して歩き出す。

 が、引き留められた。


「待て、リヒト!」

「……なんだよ、ダグラス。まだ何かあるのか?」


 どうしても結果を認めたくないダグラスは怒りをあらわに叫ぶ。



「テメェにもう一度決闘を申し込む! 日付は一週間後だ。テメェの本性を暴いてやる!」

「……しつこいな」



 リヒトは辟易しながらも。


(どうせコイツはいつまでも俺たちの邪魔をしてくる。正面から全力を出させたうえで完膚なきまでに叩きのめせば静かになるだろう。

 ……それにお前にはさんざん借りがあるからな。一週目でルミナの未来を奪って、二週目ではお前の取り巻きがルミナを殺そうとまでした。返すにはいい機会だ)


 そう思考をまとめて告げる。




「わかった。決闘の申し出を受ける」




 こうしてリヒトは……。


 一週間後、再びダグラスと決闘することになった。



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いつも読んでくださりありがとうございます!
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また、peepにて拙作『不知火の炎鳥転生』がリリースされました!!!

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超絶面白く仕上げているので、ぜひ読んでみてください! 青文字をタップするとすぐに読めます!
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