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第12話 糾弾

 ──俺は特別な人間だ。

 この世界の誰よりも優れている。

 俺こそが頂点に相応しい。


 だからこそ。


「この結果は間違っているッ!」


 ポケットに手を突っ込み校舎を意味もなくうろつきながら、ダグラスは怒りのままに吐き捨てる。


 幼いころから何もかもがうまくいってきた。

 俺は力に恵まれた、運が良かった──否、俺は選ばれた人間なのだから優れた力を持っていて当然だ。


 何も苦労せず努力することなく、俺は望むものを望むままに手に入れてきた。

 すべて俺の思い通りに進んできた。


 これからもそうだと信じて疑わなかった。

 俺の未来は輝かしいものだと確定していた。

 俺の邪魔をできる者などいるはずがないと思っていた。



「──なのにッ! なんだこの結果は!? どうしてこうなった!?」



 ダグラスの脳裏に浮かぶのはやはり先日の討伐演習。


 もともとルミナのことは目障りだった。

 女のくせに、平民のくせに、下等な存在のくせに力を持っていて。

 事あるごとにダグラスに引けを取らない結果を出してくる。


 だから妨害に屈せずタイラント・クイーンアントを倒したことにも納得はできた。

 認めたくはない結果だが理解はできた。


「でもあいつだけは! リヒトだけはどう考えてもおかしいッ!」


 何も持っていない存在のはずだった。

 強くなれるはずがない、一生弱者のままで終わる矮小な存在だったはずだ。


 それがダグラス以上の結果を出し、B級上位のタイラント・クイーンアント討伐まで成し遂げて。

 挙句の果てには特別な存在であるダグラスを差し置いて討伐局にスカウトされやがった。


 ダグラスにとっては絶対に認められない、受け入れられない結果だ。

 それだけじゃない。

 討伐演習の結果を以って、リヒトの学園ランキングが最下位から15位にまで急上昇したのだ。


「絶対にあり得るはずがない! あり得るはずがないんだ!」


 この結果は絶対におかしい。

 だって、何も持っていない落ちこぼれのリヒトが強くなれるわけがないから。


 だから、リヒトが不正をしたことは間違いない。


 ダグラスがそう確信を得た時、声をかけられた。


「ダグラス君。ちょっといいかね?」


 声の主は担任教師。

 ダグラスを持ち上げリヒトを小馬鹿にしていた教師だ。


「先日の討伐演習の件だが、あの結果をおかしいと思っているのは君だけではない。我々教師たちの中にもリヒトを疑う者がいる」


 疑う理由は明白だった。

 その言葉を受けてダグラスは。


「話を聞かせてもらおうか」


 勝利を確信したように笑った。


(優れた人間に味方は絶えないものだ。リヒト、テメェの化けの皮を剥いでやる)






◇◇◇◇



「順調だな」


 ルミナとの実戦修行を終えた休憩中、リヒトが呟く。


 討伐局トップのグレイに認められてスカウトされた討伐演習から二日が経った。

 あれから周囲の人間たちに邪魔されることはなく、修行に専念できている。


(おかげで【守護神】の新能力も解放できたしな)


 今のところ順調に進んでいた。


 ……が、やはり障壁はまだ残っている。


「ダグラスはどう動くのかしらね。あいつがあれで素直に引き下がるはずがないもの」

「だな」


 一番の障壁はダグラスだ。

 自尊心とプライドの塊のあの男が討伐演習の結果を認めるとは思えない。

 必ず近いうちに何か動いてくるだろう。


 二人がそう確信を得ていたまさにその時、目の前に担任教師が現れた。


(この男も執拗に俺のことを蔑んできたんだったな。となると、まず間違いなくいい話ではなさそうだ)


 リヒトの予想を裏付けるように担任教師が口を開く。


「大事な話がある。二人ともついてこい。……ああ、先に言っておくが拒否権はないぞ」

「釘を刺さなくても逃げませんよ」

「どうせ討伐演習の話でしょ。そう来ると思ってたわ」

「……ふん。分かっているなら話が早い」


 二人は担任教師の後を追う。


 着いたのはとある教室。

 担任教師が扉を開くと、中には十名近い教師たちが控えていた。

 さらにその後ろにはダグラスの姿もある。


「そこに座れ」


 担任教師が指さしたのは、教室の中央に置かれた二つの椅子。

 その椅子を取り囲むようにぐるっと教師たちが座っている。


 話を聞く……というよりは尋問のほうが相応しい様相で話が始まった。



「先日の討伐演習だが、いったいどのような不正をしたのかね? リヒト君」



 まず最初に切り出したのは担任教師。

 リヒトが不正をしたというのは確定事項のようだ。


「我々は決して不正を見逃さない」

「リヒト、貴様の能力ではあの結果を出すことは不可能なのだ」

「その通りだ。学園ランキングの件も私たちは不当だと考えている」

「お前は間違いなく最下位の実力しか持ち合わせていない!」

「ルミナ、貴様もリヒトの不正に加担したとみなしている」

「共犯の時点で見逃す選択肢はない。どうなるかわかっているのだろうなぁ?」


 担任教師に続いて他の教師たちも口々に告げる。

 ここにいる全員が同じ考えのようだ。


 それを総括するように担任教師がまとめる。


「才能ナシの君が短期間で強くなるなど不可能だ。何か裏があるのだろう?」


 教師たちによる糾弾はエスカレートしていく。

 そして、ついに担任教師は核心を持ち出した。



「……そう。例えば違法薬物を使ったりなぁ! 君があの結果を出せた理由などそれしか思いつかんのだよ!」



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いつも読んでくださりありがとうございます!
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また、peepにて拙作『不知火の炎鳥転生』がリリースされました!!!

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超絶面白く仕上げているので、ぜひ読んでみてください! 青文字をタップするとすぐに読めます!
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