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カーナビ

皆さんは、「霊は電化製品や電波に影響を与えることが出来る」といううわさを聞いたことがありますか?


今回はそんなうわさについてのぞっとしたお話をします。

「え…」


目の前に広がる光景に、『身の毛がよだつ』とはこのことかとその身を以って思い知らされるとともに、すぐにその場を立ち去るよう私の中の全ての感覚と細胞が最大限の警告を発しているのをビリビリと感じました。

あれは5年ほど前、梅雨も明けカラッとした暑さの続く夏の出来事でした。


当時、私は彼女と車で名古屋へ旅行に行き、彼女が行きたいと言っていたとある観光スポットへ向かうために、宿のある名古屋駅からカーナビの目的地を設定して、40分ほどの道のりを向かい始めました。


彼女との初めての車での旅行ということで気分がとても高揚していたのを覚えています。


旅行はすきだ

その土地土地で匂いが違うということに気づいたのは、いつのころだろうか。

雲一つない青空や心地よい風にたなびく金色の稲穂に心を躍らせたことも突然の豪雨で全身ずぶ濡れになりコインランドリーで凍えながら暖を取ったことも良い思い出に昇華できる魅力がある。

この思い出はどんな昇華をみせるのだろうか。


20分ほど車を走らせたあたりにそれほど高くはない山があり、山の中腹あたりまで車で上り、下り、そこからまた20分ほど行ったところにあるお目当ての観光スポットに着きました。


夕方あたりまで、二人で楽しんだ後、宿のある名古屋駅方面へ戻ろうと、カーナビに「名古屋駅」を目的地に設定し、車を走らせました。


20分ほど車を走らせると、行きで通った山が見えてきて、来たときと同じく山を上って行きました。

山の中腹まで登ってきたところで、来たときには気づかなかったのですが、道路が二股に分かれていました。


カーナビの指し示す道は、


「左」


道路を見た瞬間、私は、


「あれ?こっち(右)じゃなかったっけ?」


と、どことなくそんな気がしたので彼女に聞くと、彼女は、


「んー。そうだったかもしれないけどわからない…。」


と言い、本当にどっちかわからない様子でした。


しかし、目的地を『名古屋駅』に設定したカーナビが「左」を指し示していたので、行きに右の道を通ってきていたとしても、左の道は、近道か別ルートなのかもしれないと思い、カーナビの指し示す左の道を進むことにしました。


左の道を車で登り始めたのですが、山を下るどころか、山の上に向けて右巻きの螺旋状に続く道路をぐるぐる、ぐるぐると車で上っていくと、次第に道端には雑草が無造作に生い茂り、頭上の木々もまるで覆いかぶさるかのように日差しを遮り、薄暗い雰囲気を醸し出していきました。


体感で5分くらい登り続けましたでしょうか。

すでに車がすれ違うには難しい道幅まで狭くなり、分岐から左ルートに進むまではすれ違っていた対向車は全く見なくなり、後ろから来る後続車も1台もなく、ひたすら上り続けるこの右回りの螺旋の道を進む車は私たちの乗る車だけでした。


その後も一向に山を下る様子もなく、ぐんぐん、ぐんぐん山を上り続ける状況に、私は、


絶対にこの道は違う…


と確信すると同時に、澱みのある水が渦を巻いているようなこの螺旋の道の先に待っている何か得体のしれないものに吸い寄せられるように、ただただカーナビの案内に従い引き返すことなく上へ上へ徐行しながら登り続けたのです。


ついには、Uターンすら難しい道幅になったあたりで、ふと助手席に座っている彼女のことを思い出し

、その様子を見ようと隣を見ると、助手席に座る彼女の表情は、緊張や不安などを見せつつもどこかしら何かを悟ったような表情にも見えました。


私は不安になっている彼女を勇気づけようと、


「道間違えっちゃったかもね~!ははは…」


と何の足しにもならないような言葉を投げかけましたが、彼女の強張った表情は解けないまま、


『この登り道は一体どこまでの登り続けるんだ』と思った矢先、


突然、終わりはやってきました。


おそらくこの山の頂上であろうその場所は、辺りは木々がそびえ立ち陽の明かりを遮り、夏の明るい夕方と言えど、薄暗くどことなく重苦しい空気をひしひしと感じました。


頑丈な錆びた鉄格子と所々朽ちた煉瓦で作られた立派な門。


頂上まで登った行き止まりのその眼前には、『それ』がありました。


車の中から4m先にあるその古くて重厚な重苦しい門は、鉄格子が硬く閉じられており、門扉には鎖がぐるぐる巻きにされて開かないように頑丈に閉じられていました。


なぜ、名古屋駅を目的地に設定したカーナビが山の頂上のこの行き止まりを案内したのか、


門に掲げてあった鉄製の表札の文字をなぞるように上から読んですべてを理解しました。


そこに書いてあった文字は、、、


『〇〇火葬場』


その文字を見つけ、身の毛がよだつとはこのことなんだと思い知らされるとともに、その門の先にそびえ立つ巨大な廃墟と化した建物に立ち込める現世とは異なる仄暗い雰囲気を全身で感じました。


以前、「霊は電化製品や電波に影響を与えることが出来る」といううわさを聞いたことを思い出し、おそらく、ここにいる霊が「カーナビ」に影響を及ぼし、ここまで呼ばれたんだと理解しました。


でないと、名古屋駅に設定したカーナビが、『山の頂上の行き止まりにある廃火葬場まで連れていく』という現象の辻褄が合いません。


その否定しようのない事実やここまで呼び寄せた者への恐れ、恐怖を全身で感じながらも、そのごちゃまぜの感情を噛みしめる間もなく、隣に座っている彼女のことが気になり目を向けると、助手席には硬直した表情を見せ、言葉も出ない様子の彼女が座っていました。


「やっぱり道間違えちゃってたね!右の道で良かったんだね~(笑)」


と、喉まで上がってきている恐怖で叫びたい言葉を限界まで押さえつけつつ、返事もそぞろの彼女に声をかけつつ、ゆっくり、ゆっくりと車を狭い道幅の中、車をUターンさせ、慌てず騒がず安全運転に細心の注意を払い、来た螺旋の道を逆巻きにゆっくりと下って行きました。


現世とあの世を繋ぐ、らせん状の渦の道を下り、山の中腹にあるあの分岐点まで何事もなく戻ってきました。


すると、カーナビが急に経路再検索を始め、「ポンッ♪」という軽いコール音とともに


ナビの画面には、山の頂上のあの場所へと続く左の道の案内表示から、最初に通ったであろう名古屋駅へと続く右の道へと案内表示が変わったのです。


そこで私は、言いようのない恐怖や恐れはありつつ、「からかわれた」という感情が沸き起こるのを感じました。


それからの帰路は何事もなく、無事宿へも着き、その後の彼女との旅行も楽しく過ごすことが出来ました。


あれはいったい何だったのか。


何かを見たわけではなかったのですが、むしろ曖昧に何かを見るよりも確実に何かの存在を感じた出来事でした。





余談ですが。


そもそもこの彼女、家系として霊感の強い血筋のようで、様々な経験をしている彼女なのですが、今回も彼女の周波数がこの場にいる「何か」と合った結果の出来事だったのかもしれません。


この彼女との出来事はまた次の機会がありましたら、、、。

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