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初・回・戦・闘

 さて、眼前には複数のモンスター。棍棒を携えた小鬼……ゴブリンと槍を構えたトカゲ……リザードマンが合わせて10体はいた。

 そいつらが殺気に満ちた様子で僕を睨んでいる。

 僕は腰の剣を抜いて構えた。剣術の心得なんて無いので、アニメとかで見た剣士のキャラの構えを真似して。



「GUOOOO!!」



 僕の構えを宣戦布告と受け取ったのか、一番最初にしびれを切らしたリザードマンが槍を突き出して迫ってきた。

 その鋭い突きを身体を捻って躱すと同時に相手の懐に入り込み、水平に剣を振るう。



「うおおおおおお!!」




 ギャリィン!と剣は金属音を立ててリザードマンの鱗を切り裂いた。斬られたリザードマンが叫び声をあげながら吹き飛び、光の粒子となって消滅する。

 血とか出ないんだ。どういう存在なんだコイツら。……ということを考えている暇は無かった。



「WOOOOOO!!」

「!」



 文字で表現しにくい叫びと共に3体のゴブリン達が棍棒を振りかざし、僕にめがけて飛び掛かってこようとしたのが見えた。

 僕はそれより先に上空へと地面を蹴って跳躍し、モンスター達の攻撃を躱す。



「すっげー……。僕今、空飛んでるわ」



 3mくらいは飛んだだろうか。体育の成績なんてほぼ平均なのにアスリート顔負けの動きだと自分でも感じた。

 非情に身体が軽いのだ。まるで自分がアニメの世界のキャラクターになった気分だった。いや、そんな高揚感すら感じる暇は無いのだが。

 すぐに空中で身体を捻り、僕に飛び掛かろうとしてきたゴブリン達を視界に捉える。そしてそのまま勢い良く、薙ぎ払うように剣を振るって三体の首を切り落とした。ゴロリと3つの頭が地面に落ちて光の粒子となって消滅。これで残り6体。

 さらに空中から地面へ勢いよく着地した僕は残りのモンスターへと剣を向けて構える。

 残りの連中は分散して僕へと向かってくる。どうやら前、横、後ろと連携を組んで僕を仕留めるつもりらしい。

 小癪な。こう見えても剣道とか空手の心得は無いが、並外れた身体能力があればそれなりに立ち回れる筈!

 ……多分。

 一斉に襲い掛かるモンスター達の動きを素早く見極めた後、僕は剣を巧みに振るい、3体の槍を掻い潜る。



「――ッつ!」



 槍による攻撃の一つが僕の肩を掠めた。若干の衝撃が肩に走ったが、通常なら槍による一閃を受けて「多少痛い」で済むはずがない。どうやら今の僕は身体の頑丈さも向上しているようだった。

 慣れない痛みを堪え、僕は剣を振るう。

 肩口を切り裂いて隙が出来たゴブリンの首を跳ね、槍で貫こうとしてきたリザードマンを剣の柄による打撃で怯ませてから袈裟斬りに一閃し、光の粒子へ還す。これで残りは4体だ。

 しかし、そこで僕は背後から迫る殺気に気付いた。棍棒を持ったゴブリンが僕の脳天目掛けて勢いよく振り下ろされたのだ。

 だが、その程度なら反応出来る! 僕は身体を捻って間一髪で敵の攻撃を躱し、そのままゴブリンの腹目掛けて前蹴りを見舞った。そして怯んだところに一撃を……といったところで、リザードマンの槍が僕の顔面目掛けて突き進んできた。

 慌てて顔を横に逸らして躱し、そのままバックステップで後ろに下がる。

 残り4体とはいえ、流石にこのまま1体1体処理していくのはしんどいな。慣れない派手な動きをやり過ぎて僕も若干息が上がってきた。


 ……なんかこう、必殺技ー!みたいな感じのスキルでまとめて一掃できたりしないだろうか?

 変身ヒーロー物によくある感じの……。

 と、その時、僕の頭の中にイメージが流れ込んできた。自分の中の内なる意思が『必殺技とか使いたいならこんな動きするといいよ』と語りかけてくるような感じで。

 ……とりあえず、イメージ通りにやってみるか。

 それをぶっ放そうと僕は剣の柄を両手で掴んで身体の左横に持っていき、そのまま腰を深く落として剣を後ろに引き絞る。

 そして迫ってきたモンスター達目掛けて地面を蹴り、思い切り駆けた。

 これが必殺技の始動モーション!の筈!そう自分の中の何かが言っている!

 出来る出来る!出来ると本気で思いこめ!

 本気になれば自分が変わる。本気になれば全てが変わるとあの有名なテニスプレイヤーも言っていた!

 今日から僕は富士山だ!



「いや富士山ではないな――ってうおおおおおお!!?」



 すると僕の身体は光となって加速し、構えていた剣も青い光に包まれて巨大化する。その剣の輝きにモンスター達が一瞬怯んだ隙をついて、僕は横一文字に剣を薙ぎ払う。

 すると僕の身体は青い光となってさらに加速し、そのまま3体の敵を一閃する。

 そして最後の1体となったリザードマンは槍で防御しようと構えるが、そんな物お構いなしに僕の手から放たれた巨大な光の斬撃はそのままリザードマンの胴体を切り裂いて消滅させた。


 ――き、気持ち良いィ~~!!



「……これにて、一件落着ゥ!」



 まるでヒーローにでもなったような高揚感に耐え切れず、思わずそう叫んでしまった。

 モンスター達が消滅して光の粒子が舞う。

 それらは舞い散る桜吹雪のような、儚さと美しさを感じてしまう。……そう感傷に浸っていると、校舎の3階から降りて来たのか、虹街先生が僕の後方に立っていた。



「お疲れ様。思ったより早く片付いたな……。まさかあんなにノリノリで戦ってくれるとは思わなかった」

「ノリノリって……。確かにちょっと調子乗っちゃった感は否めませんけど。……やっぱ恥ずかしいな。なんか勢いで色々叫んじゃった……」



 あのカッコつけた跳躍とか最後の叫びとか富士山とか全部ほぼ初対面の人に知られちゃったんだな……。

 うーわ、穴があったら入りてえ。



「ま、ノリの良さは重要だからね。嫌々戦ってもらうよりよっぽど良い。……おっと不味い。モンスターを全滅させたからそろそろ異時間が終わるな」

「イジカン?」



 聞いた覚えのない単語に僕は疑問符を浮かべた。

 そして、その疑問符に応えるかのように周囲の空気が何やら変わり始めるのを感じる。もしかして止まった時間が動き出そうとしているのか。



「色々説明したいな。とりあえず……人気の無い場所に移動しようか。そこで説明しよう」



 虹街先生はそう言って踵を返し、再び校舎へ向かって歩き出す。

 ……しかし、グラウンドは戦いの衝撃でボコボコだけど、これこのままでいいのかな……?

 あと僕の服装、これどうやって戻すのかな……。

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