表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ兵のスペースオペラ。  作者: さうざんと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

モブは上陸する。

軍人というよりは会社員に近い。

 恒星系(システム)アルマ。同名の惑星(ワールド)をもつ共和国の勢力地でもある。


 惑星(ワールド)はコロニーや軌道構造体オービットオブジェクト等に比べて人口許容量が桁外れに多い。その分初期投資や維持管理もコストも莫大になる。よほどの大企業体や複合企業体であっても手を出さないほどに。古い組織形状の国家形態を維持する理由は、惑星(ワールド)の維持管理以外にありえないのだ。ある意味、究極の贅沢品とも呼ばれる。


「空が、蒼い」


 僕はそういいながら、アルマの地表にいる。後ろには軌道エレベーターの威容。その麓にある工業都市アルマスリーに僕は上陸したのだ。


 ディーププリンセス号事件のあと。国の大臣や役人、軍人が責任を取って辞職、更迭された。CL03の乗員も僕を含めた何人かがリストラされた。艦長は司令部付。副長が艦長代理。他何人かが人事異動となった。


 僕はアルマのフェルミオンプラント防衛隊に異動となった。その期間に余っていた有給を加えて長期の休みを取った。そこで、ちょうど開催されているイベントに向かうつもりだ。


 因みにフェルミオンプラントは惑星(ワールド)アルマの公転軌道上に存在し、大量の反物質を生成している。その反物質は惑星(ワールド)の維持に使われる。その量は総生産量の90%。7%でクレアドライブの運用。残りの3%で星系の経済を維持している。下手したら残りの9%も維持に使われるくらいエネルギーもバランスもシビアだ。


 もし、ブライトがフェルミオンプラントの襲撃に成功していたら、この惑星(ワールド)の維持管理が出来なくなり、星海情報、流通は滞り、場合によっては人類といったものの暗黒時代を、迎えてもおかしくない。既に二度そうなっている。


 それでも人類の歴史的なものは受け継がれているし、地球という人類発揚の地では、文化遺産が残されているという話だ。流石に暗黒時代を乗り越え、再起させて来た恒星系(システム)は違う。


 僕はその、地球時代の産物を観に行くつもりだ。まあ、何度か観たことはあるけど。


 軌道エレベーターと基部施設で検疫。入管手続き。とは言え、軍関係者なので優先してもらえた。他の人を尻目に目的地行きのバスを探す。近くの都市、正確にはその郊外。非常に広いスペースが必要なイベントるだから。


 バスを待つ間、近くのモデルショップに向かう。大手のチェーン店で品ぞろえが良い。実家の近くの実店舗に入り浸って変人扱いされたのは良い思い出だ。いや、よくないですが。


 中に入ると、大きな人間サイズのスケールモデルのホワイティとレッドグリブが出迎えていた。ホワイティは白い色の角張った金属製の鎧のような人型。顔に当たる部分には鋭い形の目がつ二つ。フェイスガードがあるので仮面のような印象を与える。額には二本のアンテナ。右手に大型の銃器、設定ではビーム砲。左手は盾。超金属製の物でビームすら防ぐ。実際は難しいだろうけど。もう一つの方、紅い色のグリブは一つ目、一本アンテナの丸っこい巨人兵器。一つ目は左右に動く。こちらはマシンガンと斧を持つ。


 これらは地球時代のアニメの主役機とライバル機。今だに再ドラマ化やアニメ化、小説とか映像化されている強いコンテンツだ。僕もファンだ。スケールモデルも何個か持っている。だからといって144サイズの精密モデルなんて言う高級品は手が出ない。電子的なEモデルがせいぜいだ。場所も取るし。


 で、僕はEモデルのコーナーに向かう。データ化したビジュアルモデル、デバイスやVR内再現する電子モデルの最新版を見る。下手したら安いスケールモデルより高いものもある。が、僕が買うのはスタンダードモデル。専用のツールアプリがあれば加工ができるやつ。で、ノーマルクラスのホワイティA3が出てたのでそれを買う。


 電子マネーでネズミみたいな顔の店主に支払い、手持ちのデバイスにインストール。中年の店主が愛想よく処理をする。


「ありがとう、お客さん。でも店舗で買うなんて珍しいねぇ」


 確かにオンラインショップで買うのが普通だ。でも、スケールモデルは実店舗でないとわからないところも多い。それはVRでも同じだ。リアルなデイスプレイ物でしか得られない栄養もある。でも僕が上陸したのは目的があるからだ。


「はい、ちょうどホワイティの年間イベントがあるものですから」


「ああ、そうだったね。もうそんな時期か。今年はここだったんだね。 惑星(ワールド)で年替わりでやるあのランダイとかビーノとかと各都市や自治体が提携しているやつだね。いや、結構行く人も多いけど、私は最初だけであとは行ったことがないねえ」


 少し驚く。一応リアル店舗をもち、スケールモデルをディスプレイしている店長。趣味だけではないだろうが、嫌いでやれる仕事じゃない。


「この商売やってるのに?」


 僕の質問にネズミみたいな店主は、少し困った顔をした。


「そうだね、まあ、昔はちょくちょく行ってたんだけどね。流石に何度もいけないっていうかね、単純に場所が広いんだよ。年取ると意外と辛くてね。体力が持たない」


 なるほど、とは思う。人の十倍弱の機械が動くんだから。かなりの広さが必要だ。まあ、500m×500mの広さは必要だろう。更にいろいろな機材やそを運ぶイベント関係者とか、この規模だとかなりの人数にわたる。更に客も結構来るし、更にいろんな関係者やお客様なんか入れるとかなりの規模で人がやってくる。体力ないと会場内を回るだけでも大変だ。


「それに、各年度版の編集盤出るからね。仕入れするときに鑑賞するから。もちろん自分用に買って、だけどね」


 へえ、商売にしてると、そんな裏技が使えるのか。各年度版は入手するだけでも困難なのだが。価格はともかく、毎年度版をそろえられるなんてうらやましい。僕なんか虫食いだらけなのに。


 店長と分かれてバスに乗る。会場に着くまでにバスの中でさっき買ったEモデルをデバイスで確認する。流石に何度もモデル化しているシリーズ。Eモデルもかなり洗練されていて、コクピット内装もかなり忠実だ。最も現在宇宙戦闘機は存在しないのだが。僕のザッコのコントロールブースや特機のコクピットは、量子接続を前提にしているため、体を固定する以外の意味はない。レバーやアクセルなんて言うものは使わないのだ。見たことはないがたぶん五国連合のミッカやブライトも同じようなものだろう。


 まあ、今回のイベントは地上戦。宇宙戦なんてやるなら軍、つまりぼくたちがでなければならないだろう。また仕事が増える。最も動画は難しいだろうけど。格闘戦なんか無理。速度やベクトルが問題だ。ザッコでやるにしても体当たりが限界。殺陣は宇宙空間でほとんど静止状態で行うだろうな。ライブは無理。


 そんな事を妄想したり、ホワイティA3のEモデルを鑑賞しつつ、バスに乗る事二十分。広大な会場についた。


 会場はオープン。一応観客席もある。僕はその一般チケットをもっているが、その前に会場の屋台で買い物をする。同人作家やサークルが色々出している。モデルやEモデル、書籍やE書籍やEマンガ、自主制作アニメ等。AIによるオリジナル保証つき。ちゃんと著作権保証されているのだ。まあ、少し離れたところだと保証なしの違法コピー商品などあるのだが。


 やがて開演時間十五分前。僕はチケットを呼び出して観客席に向かう。席につくとまずデバイスのアプリを立ち上げAI保証。このデバイスでの録画は個人での鑑賞のみ対応、要するに僕のデバイスのみで再生できるようになる。まあ、その代金込みのチケットだから。会場の他の人もデバイスを立ち上げ、対応しているのだろう。


 そして、地元の芸人によるオープニングセレモニーが終わってからホワイティとグリブ二機との操演が始まった。グリブは実店舗で見たレッドグリブではなく緑色。量産タイプ。操演は危険防止のため500mは離れている。それでも16mの大きさ。目立つ事にかわりはない。まあ、動くと迫力はあるのだが。それでも見栄えは少し良くない。


 と、操演が始まり、緑色の機体二機が動き出す。偵察時に待機状態のホワイティと遭遇という筋書き。流石にストーリーは変わらないものだ。グリブのスタイルと挙動を観察。オーソドックスなスタイルをとっているらしい。流石、動きは定型通り。マシンガンを手に持って連射。ホワイティ表面に着弾する。グリブが撃ってる弾頭は見栄えを前提とした花火。丸くエフェクトが出るように燃焼する。意外と熱くないのが特徴だ。いや、人が巻き込まれたら問題だが。


 ホワイティが手をつき、立ち上がる。これも一連の定型。やはり、33会とか53会とかの、いきなり頭部機関砲を撃ったり、タックルをかましたりはしないみたいだ。


 やがて立ち上がるホワイティ。うん、定番の操演。でも見事にメリハリをつけて動く。操演手の三人とも優秀だと分かる。何度もこなしている優秀な人なんだろう。多分元軍人。ザッコのコントロールにも慣れていないと出来ないだろう。まあ、今見てる機体も中古のザッコを改造して、ホワイティやグリブのような人型に見えるようにしたものだけど。


 ホワイティは、グリブに近づき、掌底でグリブの頭を殴りつけ、頭部を半壊させる。へぇ、今回はこんな解釈なのか。


 ホワイティの物語、戦機ホワイティには、細かなところで解釈が分かれているところがある。最初のホワイティとグリブの対峙、ここでホワイティはグリブの頭を破壊するのだが、通説は頭部のパーツを掴んで引きちぎるものだ。しかし、頭部を掴んで破壊するという説も有力だ。ホワイティの続編には掌底で頭部を破壊するものもあり、その機能が元々付いていたのではないか、とする説。あとは腕に装備しているバルカン砲で破壊したとか、ビームサーベルで破壊したとか言う説もある。それに合わせた操演もあるのだが、今回はオーソドックスな形になっているようだ。


 やがて、グリブがジャンプ、それを追撃するホワイティ。双方ともジャンプしており、スラスターは噴射していない。まあ、見せ場だから、視界がクリアなほうがいいからだろう。擬似慣性駆動(クレア ドライブ)が無せる技だ。慣性制御が無ければできない動き。


 グリブがホワイティに胴を切られる。その瞬間、火薬とホログラフィでおおきな火球が表現される。まあ、テキストによると、グリブは胴体を真っ二つにされるが、それをやると、次からは使い物にならない。なので、腰の核融合炉とビームが直接触れたとき、核爆発が起こったといる設定だ。22会では廃棄寸前の機体を、使って真っ二つにする演出もしたのだが、部品がばらまかれてスタッフが軽傷を負った事故が起こった。その為にやらないと不文律になったのはファンの一般常識だ。


 次の瞬間、グリブがホワイティに向かって走る。この演者さん、うまいな、と思う。位置取りもいいし、第一速すぎず、とは言え歩いているように見えない。擬似慣性駆動(クレア ドライブ)の細かい制御が出来てる証だ。


 そして、ホワイティがビームサーベルでグリブの胸を突き刺す。と、同時にそれからサーベルが消えてグリブが倒れる。


 これも諸説出ているシーンだ。ビームサーベルは要するにプラズマトーチみたいなものだ。コクピットだけを貫くならば持ち上げられない。上に切れてしまうはず。かといって、実体を持つとなるとどう倒すかが問題となる。実体のあるビームなら万事解決するが、実現するには技術的に難しい。


 プラズマトーチ派は上半身を上にきり上げるエフェクトを取る。実体のあるビーム派はホログラムでビームサーベルを形成し、擬似慣性駆動(クレア ドライブ)で制御。胸の破損は偽装でする。そんな今回の解釈は、コクピットを貫いたプラズマトーチをすぐ消した感じ。今回はコストを下げるための物かもしれない。


 因みに主流なのは実体のあるビームサーベルが派閥だ。僕もこれが好み。まあ、どちらにしろ同じくらいお金がかかる。あとは手間とかスタッフの、いや、現場の監督の好みによる物だ。


 操演が終わったあと、しばらく屋台を覗いて時間を潰す。食べ物や土産物、Eモデルや小物、キャラクターグッズなんかがあり、見てるだけでも面白い。因みに実家の連中は消え物以外はいらないと念を押されている。解せぬ。


 それからホワイティとグリブが支持トレーラに固定されたところを見計らって見に行く。バスが出ており、近くまで行く。固定されたホワイティとグリブ二機はやはり16mの大きさで迫力がある。安全性に配慮しての展示。外側に見学用のキャットウオークを登り歩く。


 と、ここで少し気になって、スタッフロールを呼び出して、監督の名前を見る。うん、仕事をきっちりとやる監督さんだ。アニメや実写映画等も手がける有名人。その後演出や大道具さんなどのクレジットの確認。結構有名人が多い。と、ここて操者の中に知り合いの名前をみた。たまに連絡を取り合う先輩。連絡先はデバイスに残っていたはず……




 デバイスを、取り出して番号を呼出、電話する。呼び出し音が続き、電話がつながる。


「もしもし?」


 相手が出た。少し緊張する。


「あ、お久しぶりです。タローです」


「あ、お前か。久しぶりだな、ってすまんがまだ仕事中でな」


「あ、すいません」


「まあ、いい。久しぶりに後で飯でも食いに行くか? どうせ、この会場にいるんだろう?」


 先輩の台詞についびっくりする。


「え、なんでわかります?」


「お前なあ、趣味人だろ。ホワイティ軍内で遊ぶような。あのとき、ごまかすので大変だったんだぞ」


「あ、はい」


「全く、勤務時間中に触るなよ。で、お前、相当のマニアかだろ。なら、このイベントかなり高い確率で来ている。しかも俺が操者してるのは分かったから連絡したろ」


「あ、はい」


「だったら

 自明の理じゃないか。まあいいさ。後でメールする。近くにいい料理屋あるからな。そこで会おう」


 そして、先輩が仕事を終わってからメールを見て合流。


「まさか、屋台に入るなんて思ってなかったですよ」


 僕の言葉に先輩は鼻を引くつかせる。


「意外とうまいんだ。ちゃんと営業許可持ってる優良店だからな。まあ、最近地元の屋台にハマってな」


 少し離れたところでは、イベントのみのキッチンカーを出している。しかしここは、大型の移動店舗を持っチェーン店。味も良いがそこまでするか、と言う感想もある。


 なんだかんだの近況報告をし合う。先輩の所は今年2人目が生まれるらしい。あと、僕がリストラされた経緯も何となく察しているらしく同情してくれていた。


「しかし、お前も災難だったな。士官になってもいいくらいの成果を上げてたのにな。惜しいよな」


「そんなことないですよ。普通のザッコ使いです」


「特機のパイロット候補だったんだろ。一時期は准尉たったとも聞いた」


「もう、興味は無くなりましたからね。特機に。それでも今の仕事に誇りはもってます」


 とりとめのない言葉の行き交い、そんなこんなが心地良い。


 先輩は酒を煽る。僕は合わせるように炭酸水を飲む。あ、この煮付け美味しい。


「で、このあとどうするんだ? 士官の道に進むのか? それとも下士官のままなのか?」


 うん、いつも聞かれてること。特に家族に。だから今のところの答えを言う。


「取り敢えず何年か軍に残れるだけのこってスキルと実績あげて、お金ためて、それから退役、再就職しようかな、と」


「土建業界か?」


「はい。生死の間で生きることはないし、多分建設業界これから来ると思います。反物質生成加速機(フェルミオンプラント)、これから大量生産するでしょうし、食料生産の為の軌道構造体オービットオブジェクトも建設増えるでしょうし」


 先の戦争で、戦略物資を作る軌道構造体オービットオブジェクトはかなり破壊された。経済復興の為にこういった軌道構造体オービットオブジェクトは大量生産されるだろう。


「そうか。お前は軍に居続けると思ってたのにな」


「すいません。ところで、最新のEモデル買ったんですよ」


「あ? ホワイティのか?」


「はい、かなり密度が濃いですよその割に安い」


「くっ、良いよな。独身貴族は。金がいるんだよ」


 でもニヤけながら愚痴る先輩。最近では珍しい家庭重視の人だ。

 子どものように目を輝かせる先輩を前に、僕はデバイスを取り出す。隠れた趣味だけど、確か奥さんにはバレているんじゃないかな。


 Eモデルを見せて、ホワイティ談義にはまりつつも楽しい時間を過ごした。少し帰る時間がおそくなってしまったが。


 明日からは軌道上での仕事が始まる。







 

ホワイティは某ガ〇ダムのファーストと思ってください。長い間人気のコンテンツで、愛されている設定。今で言う所の三国志や西遊記みたいなもの。もしくは四十七士とか織田信長みたいな物。その時代のアニメや実写、CGとかで再現されている設定。監督の個性でいろんな解釈がされてます。


もちろん他のコンテンツもありますが、長い時が経っているのでめちゃめちゃ変質してます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ