怪光線
頭に蹴りを受けて倒れた直後、にゅうめんマンは、頭部への強い衝撃により、まともにものを考えることもできなかった。無防備で危機的な状況だ。
社長は速やかに、にゅうめんマンへのとどめをさそうとした。そうして、とうとうにゅうめんマンも悪者にやられてしまうのかと思われたそのとき、急に社長の体の動きが止まった。
一体何が起こったのかと、社長本人も、周りで見ていたレイルウェイ・サボターズも不思議に思った。しかしすぐにサボターズの赤スーツがその理由に気づいた。床に倒れていたミズタケヒコが、社長の方に向かって片手を上げ、念力で行動を妨害していたのだ。
「こいつ、社長に何かしてやがるな。生意気な!」
赤スーツはミズタケヒコの体を踏みつけた。
「ぐぇっ」
ミズタケヒコの念力は途切れ、社長の体は自由になった。だが、このときすでに、にゅうめんマンは衝撃から立ち直り、どうにか床の上に立ち上がっていた。社長の活躍によりあと一歩でにゅうめんマンをやっつけられそうだったのに、ミズタケヒコのせいで絶好チャンスがふいになったので、戦いを見守っていたレイルウェイ・サボターズは腹を立てた。
「畜生。このミズタケ野郎!邪魔をしやがって」
その場に残っていたレイルウェイ・サボターズのほとんどは、先に受けたダメージからすでに回復していた。というか、元々大したダメージを受けていなかった。立腹したレイルウェイ・サボターズは、7人ばかりの集団で、倒れているミズタケヒコを攻撃しようとした。さすがのミズタケヒコも、床に伸びているところを、こんな大勢で攻め立てられたら無事では済まない。
《ミズタケヒコさんが危ない!》
にゅうめんマンはミズタケヒコを守るため、最近思いついた技を繰り出した。
「新技 流しそうめん連撃!」
「流しそうめん連撃」は、流しそうめんの気持ちになり切って、複数の敵の間をつるりと通り抜けながら攻撃を加える技だ。ミズタケヒコを襲撃しようとした者たちは、にゅうめんマンの滑らかなフットワークに翻弄されて次々に攻撃を受け、ある者は腹を抱えてうめき、ある者は床に倒れ、みんなそろって再び戦線を離脱した。
《ふう。何とかピンチを乗り切った》
にゅうめんマンは、最悪の危機を乗り越え、自分もミズタケヒコも決定的なダメージを受けずに済んだことを喜んだ。
だが、喜ぶのはまだ早かったのだ。最大の敵である社長はまだピンピンしていた。社長は体の前でL字に腕を組み、その腕から、隙を見せたにゅうめんマンに向かって、7色に輝く光線を放った。
「プレジデント光線!!」
にゅうめんマンは派手な光線をまともに浴びせられて焦ったが、幸い痛みなどはまったくなかった。それで気味悪がりながらもひとまずほっとしたが、すぐに、自分の体から力が抜けていくのを感じ取って、再び動揺した。
「何だ今の光線は!」
にゅうめんマンは社長に言った。社長は答えた。
「今のはプレジデント光線といって、直接相手を傷つける力はないが、『私より社会的地位が低い者の力をそぐ』効果を持つ技だ。技を受けた者の地位が低いほど効果は高まるが、君の場合はどうだろうな」
「なんという嫌味な技だ。俺もしばらく正義の味方をやっているが、こんな思い上がった攻撃を受けるのは始めてだよ」
にゅうめんマンは、他人に素姓を明かすことができないせいで戸籍さえ取得できず、日本の社会制度上、ある意味で最底辺の立場にあった。だが、正義の味方として積み上げてきた実績と、それに伴うまずまずの名声が評価されて、力の半分程度をそがれるだけで済んだ。




