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うるさいねえさまで水遊び

作者: 瀬崎遊

 ぽとっ ぴちゃ ぽとり ぴちゃん 


 ねっとりとした液体がしたたる音が響く。

 浴室の中は錆臭い匂いと生臭い匂いに汚染されている。

 浴槽の中には十歳くらいの男の子が座り込んでいる。


 時折漏らす笑い声は何処か歪で聞くものを不快にさせるだろう。

「ねぇさま・・・とっても綺麗だよ」

 床を撫で、すくい上げてはしたたらせる。




 彼の目の前にぶら下がっているものは、生きていた時は彼のねえさまという生き物だった。


 ねえさまは口うるさかった。

 あれをしろ、これをするな、と僕のすることに口を出した。

 

 あまりにもうるさいので「しんじゃえ」とねえさまに向けて言った。

 すると一層うるさくなり、とうさまやかあさままでもがうるさく僕を咎めた。


「とうさまも、かあさまもうるさい。しんじゃえ」


 左の頬が熱くなった。

 ねえさまが手を握りしめ、やはりうるさく言っている。


 

 夜が来て皆が寝静まった時、僕は包丁を手にした。


 とうさまとかあさまの寝室に行くとかあさましかいなかった。


 かあさまの喉に包丁を当て、滑らせた。

 それほど力を入れなかったのに、はくはくと声を出そうとしたのか、息をしようとしたのか分からないけど、血がその度に溢れ出た。。


 僕に向けて手を伸ばし、目はどうして?と訴えかけていた。

 それでも胸が上下する度に血が溢れ出す。


 かあさまが動かなくなった時、部屋の扉が開いた。

 とおさまが明かりをつけたらバレちゃうな。と思ったけど、それならそれでもいいかと思った。

 僕はその場にしゃがみこみ、とうさまがどうするのかただ待った。


 とうさまは明かりも付けず、ベッドに入りそのまま眠りについた。


 とうさまにも同じ様に包丁を首に当て、ただ滑らせた。

 とうさまは声が出たみたいで、言葉にならない何かを言っていたけど、僕は笑ってとうさまを見下ろしていた。


 吹き出す血は闇の中ではただ黒く、つまらなかった。

 真っ赤な血が見たかったな。



 ねえさまでは真っ赤な血を見ようと決心して、それでも暴れられたら面倒だと思って、紐で首を絞めた。

 ねえさまは首に纏わり付く紐を取り除こうと首を掻きむしっていたが直ぐに意識を失った。

 死なせちゃ駄目なんだよね?


 手と足を縛ってお風呂場に引きずっていく。

 縛った足を、おばあさまをお風呂に入れる時のバスリフトに括り付け、巻き上げる。

 ねえさまは逆さまにぶら下がってぶらぶら揺れる。


 髪の毛を掴んで揺れをとめ、とうさまとかあさまと同じ様に喉に包丁を滑らせた。


 浴槽の中に落ちると思っていた血は僕に向かってきて目に入る。

 タオルで顔を拭いていたらねえさまが目を見開いて僕を見ていた。


「ねえさま、うるさいんだもの」


 ふっふふふふっ あはっははははっ

「ねえさまの血、赤くて綺麗だよ」


 ねえさまの傷は浅かったのか、長く暴れて、長く苦しんだ。


「ねえさまは期待を裏切らないね。さすがだ」


 僕はねえさまの血でひとしきり水遊びをして飽きてそのまま眠った。


 周りがうるさくて目が覚めると知らない男の人達に囲まれていた。

 大人たちは驚いたようで叫び声を上げていた。


 それが可笑しくて笑い、ぶら下がったねえさまを見てまた笑った。


 知らない男の人達は僕を浴槽から出し、バスタオルに包んでぴーぽーぴーぽーとうるさい車に乗せた。


 病院について痛いところはないか聞かれるが、僕は大人たちが面白くてただ笑っていた。

 怪我がないと診た医者は僕にシャワーを浴びさせ、ねえさまの血を洗い流してしまった。


 ちょっとねばついて臭かったから、まぁいいか。

 僕は目を覚ましてからずっと笑っていた。


 違う医者が来て、色々聞くけどただ面白くて僕はまた笑った。

 ベッドに入れられ、なにかの薬を飲むように言われたけど拒否すると、注射を打たれた。

 それでも笑っていたら眠くなって、眠ってしまった。


 十二歳になり、とうさまとかあさまとねえさまを殺した犯人は捕まらず、僕は病院を退院することになった。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  こっわ!  しかし指紋位は採るだろ警察よw    猟奇殺人犯というよりサイコパスっぽい?  でもカタルシスを感じているなら将来的には‥‥‥。
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