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アルファとオメガ  作者: nkt
1/2

プロローグ

―気が付いたら、そこは全てが終わった後だった。


先ほどまで綺麗に並んでいたビル群は無惨にも砕け散り、空中には砂塵と、何かのバラバラになった残骸が風に乗って浮遊している。


私がこの街で唯一好きだった、綺麗な川が流れる河川敷も、ゴミと瓦礫の侵略によってその原型を止めていなかった。


何故?どうしてこうなった?


この有り様になる前、自分は何をしていた?


ふと自分の手を見下ろすと、そこにあるはずの自分の手は存在しなかった。


左と右、両手共に手首から先がまるでガラスを割

ったような切断面を残して失くなっていた。


「―――ッ」


言葉にならない悲鳴とはこの事か。

いや、実際に声は出ていなかった。


「――」


私の喉は潰れていた。

声が出ないほどに、喉がボロボロに崩れていた。


何で、どうして。


追い討ちに追い討ちをかけるような絶望が次々と私の精神を抉る。


どうしてこうなったのか、記憶も定かではない。


ただ一つだけ確信していることがある。


この“破壊”の規模は、こんな“破壊”ができるのは、私が知る限りではこの世でたった一人しかいない。


そこまで考えた時、ふと私の視界に何かが映り込んだ。


瓦礫が散らばる地面に横たわる、一人の少女の姿。


「ァ゛…」


潰れてもう声が出せないはずの喉から絞り出される悲鳴は、この世の理不尽に対する私の精一杯の反抗だった。


「…ァ゛ァ゛…ァ゛ァ゛ァ゛…!」


手も喉も、他の部位もボロボロに崩れていく身体を引き摺って、その少女のもとへと向かう。


直感的に分かっていた。先程まで失われていた記憶も徐々に、少女に近づくにつれて“再生”されていく。


少女は死んだのだ。


私を庇い、そして私に“触れてしまった”せいで。


声にならない声を絞り出し、私は少女の頬にぽたぽたと涙を垂らすしかなかった。


私が一体何をした。

何も分からない。

何も考えたくない。


あまりのショックに思考を止めたくなった。


このまま消えてしまいたい。

消えたら楽になれるかな。


これが私の招いた結果なのだとしたら、もういっそのこと…。


そこまで思い詰めた時、背後でザリ、と地面を踏む音が聞こえた。


「…オメガ」


振り返ると、そこには銃を構えた“誰か”が立っていた。


「よく頑張ったな」


その顔を見るなり私はすぐに知っている人だと認識した。


そうだ、そうだよ。“彼女”も言ってじゃないか。


最後には必ず、“この人”が助けてくれるって。


助けて―――。


「…パ…」


私がその名を呼びかけると同時に、「パァン」と銃声が鳴り響いた。


ボヤける視界にうっすらと硝煙が映る。その硝煙が立ち上る後を追うように私の視界は徐々に上へ、上へとフェードアウトしていった。


最後に瞳に映った空には、禍々しい亀裂が、稲光のごとく広がっていた。


ここは…どこなの…?


私は…一体…

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