死神の挑発
「ハァ……酷い目に遭った」
悲鳴を聞きつけてやってきたハデスとアテナ、ポセイドンにレイジは助けられた。
現在、ゼウスはハデスに説教されている。
「大変だったね……主」
苦笑しながら、アテナはレイジに近付く。
「なんなのマジで。あれが女神の女王ゼウス?とんでもないヤンデレじゃないか」
「昔はあんなんじゃあなかったんだよ。ゼウスは」
「そうなのか?」
「感情なんてなくて……もっとこう……女王らしかったんだけど……主のことが相当気に入ったみたいだね」
「だからって……あそこまでなるか普通?」
「アハハハハハ……それはそうと主。これで全員そろったね」
「……ああ」
ハデス、アテナ、ポセイドン、そしてゼウス。
最高位の女神四人がそろったことで邪神教の教皇と戦えるようになった。
だが、
(はたして……これで勝てるのか?)
邪神教の教皇はレイジと同じく世界を滅ぼすことができる化物だ。
そして……レイジより強い。
ゼウス達の力を使えば勝てるかもしれないが、負ける可能性がないわけじゃない。
「もう少し……手札が欲しいな」
レイジがそう呟いた時、
「なら新しいスキルを作ればいいんじゃない?」
ポテチを食べながらアテナはそう言った。
「そんなことができるのか?」
「アタシ達四姉妹とルルアの力を合わせれば……エクストラスキルを三つか四つ作れると思うの。もしくはスキルをエクストラスキルに進化させるとか」
「おお!マジか!」
新たなエクストラスキル。
それは邪神教の教皇の戦いで、強力な切り札になるだろう。
「ならこういうエクストラスキルはどうだ?」
レイジは自分が考えたエクストラスキルをアテナに伝える。
主の話を聞いた彼女は「それは面白そうだね」と笑みを浮かべた。
ゼウスが復活してから数日後。
「ルルア……準備できたか?」
椅子に座っていたレイジはルルアに尋ねた。
今、彼は大人の姿をしており、いくつものカメラに囲まれている。
「準備できました……本当にやるんですか?」
「ああ。これが奴をおびき寄せることができる方法だからな」
レイジは邪神教の教皇をおびき寄せるために、全世界に映像を流そうとしているのだ。
「じゃあ……やりますよ」
「やってくれ」
ルルアはパソコンを操作して、全世界のテレビやパソコンなどにハッキングする。
「マスター。いいですよ」
「ああ」
レイジは軽く深呼吸をした後、凶悪な笑みを浮かべる。まるで死神のように。
「やぁ邪神教の教皇。気分はどうだい?幹部が全員いなくなったからさぞ気分最悪だろう」
レイジは嘲るように、挑発するように言葉を告げる。
「ほとんどの幹部を殺したのはこの俺……光闇レイジ様だ。ずいぶん弱かったよ《邪聖の十二星座》。雑魚過ぎて笑ってしまった。邪神教も大したことないな!」
レイジは真似をする。アニメ『クイーン・オブ・クイーン』のラスボスの口調を。
「悔しいか?んん?悔しいか?……悔しかったら、俺を倒してみろよ。邪神教の教皇。もしかして…俺と戦うのが怖いのか?もし違うなら……戦おうぜ。そして賭けをしよう。もし俺に勝つことができたら、あんたの部下になってやるよ」
レイジは懐から一枚の紙を取り出す。
「これは遺跡から見つけた神話級魔道具〘神の契約書〙。この紙型魔道具に書かれたことは必ず守られる。この契約書には『もし光闇レイジが邪神教の教皇に負けた時、光闇レイジを自由にできる』と書いてある。あとはあんたの名前をサインすれば……完了だ」
レイジは怪しく瞳を輝かせる。
「俺が欲しければ……直接戦え、教皇。俺がアンタを殺すか……それともアンタが勝って俺を配下にするか……決めようぜ」
それは……死神騎士からの決闘の申し込みだった。
「場所は捨てられた浮遊城。そこで俺は待っている」
レイジがそう言った時、ルルアは「はい、終了です」と告げる。
「お疲れさまでした。すっごい悪役っぽい喋り方でしたね」
「仕方ないだろう。あれぐらい言わないとこないだろうし」
「……来ますかね。教皇」
「来る。絶対に」
レイジは椅子から立ち上がる。
「よし行くぞ……最後の戦いだ」