最強の魔獣ハングリー
翌日。
スキルの力で大人の姿になり、戦闘服に着替えたレイジは首に提げていたロケットをギュッと握り締める。
「よし……行けるか?ポセイドン、ルルア」
レイジは二人の女神に問う。
「もちろん」
「いつでも行けますよ、マスター」
「よし、なら行くぞ。スキル〔空間操作〕!」
レイジはスキルを発動。
レイジ達は一瞬でとある島に転移した。
その島は果実が沢山実った木や甘い香りがする石、まるまる太った豚や牛などがいた。
島の名は―――、食材島。
土や岩、木など全てが食べることができる食材の島。
「ここにいるのか?最強の魔獣は……」
「……ああ」
アニメ『クイーン・オブ・クイーン』に登場する魔獣の中で最強のキャラクター、ハングリー。
そのハングリーは、食材島にいる。
「二人とも……気を付けて進も」
「あなた達……誰かしら?」
「!!」
突然、聞こえた女性の声。
レイジは漆黒の大鎌を召喚し、声が聞こえた方向に視線を向ける。
視線の先にいたのは、黒い兎の耳を生やした少女。
可愛らしい顔立ち。
形が整った大きな胸と尻。
見た目はとても可愛い少女だが、レイジは目を鋭くする。
「初めましてハングリー。俺達はお前を殺しに来た者達だ」
「あらそうなの?そういうことなら……心置きなく、あなた達を食べることができるわ」
レイジは複数の強化系スキルを発動。
己を強化したレイジは兎耳の女性—――、ハングリーに高速接近し、鎌を振るう。
襲い掛かる鎌をハングリーは―――口で受け止めた。
そして鎌の刃を噛み砕き、咀嚼する。
「チッ……やっぱり食うのか」
「なかなかおいしいよ。お礼に……これをあげる」
ハングリーは閃光の如き速さで蹴りを放った。
レイジは蹴りを紙一重に躱す。
「あっぶね」
直撃すれば間違いなく死んでいたハングリーの蹴り。
ハングリーの武器は、圧倒的な破壊力を持つ脚。
防御は意味がない。解決方法は回避のみ。
「ポセイドン、ルルア!」
「了解」
「はい!」
ポセイドンは無数の水の槍を、ルルアは無数の雷の剣を生み出す。
「死ね」
「死になさい」
ポセイドンとルルアは水の槍を、雷の剣を放った。
迫りくる無数の槍と剣を、ハングリーは全て喰らう。
「こいつ……」
「やっぱりアニメ通りヤバイですね」
ハングリーの恐ろしさは、何でも喰らうこと。
毒だろうと、光線だろうと喰い、力に変える。
分かり易く言うなら、攻撃はほとんど効かない。
むしろ攻撃すればするほど、ハングリーは強くなる。
ほぼ無敵。
だが……攻略法がないわけじゃない。
「ポセイドン。機装を使うぞ」
「分かった」
ポセイドンは女神からロボットへと姿を変える。
「行くぞ。完全機装」
次の瞬間、ポセイドンの身体が細かく分離した。
分離したポセイドンの身体はレイジの手や脚、背中などを覆う。
ポセイドンを鎧として纏ったレイジは、ガトリングガンやレールガン、ロケットランチャーなどの重火器をハングリーに向ける。
「沢山……喰らいな」
レイジは無数の弾丸やミサイルなどを撃ちまくった。
襲い掛かる弾丸やミサイルをハングリーは高速で喰らう。
「ルルア!攻撃しまくれ!」
「はい!」
ルルアは両手から稲妻を放つ。
強力な稲妻攻撃をハングリーは口で食う。
弾丸も稲妻も食べてしまう魔獣の女神。
だがレイジ達は攻撃をやめなかった。
何度も何度も攻撃する。
そして一時間後、
「あ……れ……?」
レイジ達の攻撃を食べていたハングリーは、片膝を地面に付けた。
それを見てルルアはガッツポーズを取る。
「よし!攻撃を続けて正解でしたね、マスター!」
「ああ」
ハングリーはなんでも食べる魔獣。
だが無限に食べられるわけではない。
食べる過ぎると弱体化し、動けなくなる。
「今がチャンスだ」
レイジは左手に装備してあるレールガンでハングリーの左肩を撃ち抜く。
「ガアッ!?」
痛みで顔を歪めるハングリー。
「ルルア」
「分かってます!」
ルルアは両手から雷の球体を生み出し、それを力強く投げた。
雷の球体はハングリーの右腕に直撃。
バチバチバチと激しい音が鳴り響き、ハングリーの右腕は黒焦げになった。
「終わりだ」
レイジは全ての重火器でハングリーに攻撃しようとした。
その時、レイジは背筋が凍るような嫌な予感を感じた。
「!ルルア、離れろ!」
ルルアが「え?」と呟いた時、ハングリーは姿を消した。
直後、ルルアが吹き飛んだ。
「ガフッ!?」
「ルルア!」
辛うじてだがレイジは、ルルアを蹴ったハングリーの姿を見た。
「こいつ…弱体化したと思ったら急に強くなったぞ!」
レイジは重火器を構えようとする。
だがその時、レールガンやガトリングガンなどの重火器が大きな音を立てて壊れた。
いや……破壊された。
レイジが視認できない速さで。
(クソ!速すぎて分からない……いや、落ち着け俺。見えないなら感じればいい。奴の殺気を)
レイジは殺すことに特化したキャラクターだあり、最も殺気に敏感なキャラクターでもある。
だから姿は見えなくとも、さっきは感じ取れる。
「……そこか!」
レイジは振り返り、拳を放った。
彼の拳はハングリーの蹴りと衝突。
大きな音が鳴り響き、衝撃波が発生する。
「……へぇ、見えてなかったはずなのに…よく反応できたね」
「お前の殺気が分かり易いんだよ」
レイジはスキル〔装備装着〕を発動。
双剣型魔道具〘陽月〙を両手に装備し、振るう。
閃光の如き速さの剣撃を、ハングリーは蹴りで防ぐ。
(流石は魔獣最強。だが……)
レイジは目に見えない速さで、ハングリーの腹、胸、右の太腿を短剣で切り裂く。
赤い血が宙を舞う。
(今の俺のほうが速い!)
〘陽月〙の力でレイジのあらゆる動きが速く強化されている。
今のレイジならハングリーの速さについていける。
「蹴り殺す!」
「やってみろよ」
ハングリーは連続の蹴りを放ち、レイジは双剣を振るう。
蹴撃と剣撃が何度もぶつかり、火花が飛び散る。
高速戦闘をするレイジとハングリー。
「いいかげんに……しなさいよ!」
苛立ちを覚えたハングリーは、地面を強く踏んだ。
地面が大きく揺れ、レイジはバランスを崩す。
「クソッ!」
「死になさい!」
バランスを崩したレイジの頭に向かって、ハングリーは蹴りを放った。
だが蹴りが当たる寸前、雷の剣がハングリーの片脚を斬り飛ばす。
雷剣を振るったのは黒と金の髪を伸ばした女神—――ルルアだ。
「今です!」
「ああ!」
レイジは双剣を振るう。
音速を超えた速度で放たれた刃は、ハングリーの首を断ち切った。
切断されたハングリーの頭は地面の上をバウンドする。
最強の魔獣を殺したレイジは、地面に尻をつける。
「た、倒した~」
正直、勝てるか分からなかった戦い。
その戦いに勝利したレイジは、ホッと安堵する。
「サンキュー、ルルア。おかげで助かった」
「お礼はマスターのエロ写真で」
「やだよ。別なのにしろ」
『なら私は、主殿の血か汗が飲みたい』
「おい、ポセイドン。今、とんでもないことを言わなかったか?」
ハァとため息を吐くレイジ。
(けど……これでゼウスを復活させることができる)
ハングリーを倒したことで、魔獣LV7の魔石が手に入る。
これで魔神石を作ることが可能となった。
(あと少し……あと少しで教皇と戦う準備が完了する)
千年以上の間、多くの国を滅ぼし、多くの人々を苦しめてきた邪神教。
その邪神教の王を倒すときが近づいてきていた。
「絶対に……負けられない」
読んでくれてありがとうございます。
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