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皇帝久留巳

「ハッ……ここは、俺の部屋か」


 目を覚ましたレイジはベットから起き上がり、頭に手を当てる。


「いってぇ~……まだあちこちが痛い。流石は最高位の女神……実力が高すぎる」

「主殿もなかなかだったぞ」

「うわぁ!?」


 部屋にポセイドンがいる事に驚いたレイジは、ベットから落ちる。


「いててて。ポセイドン、いたのか」

「ああ」

「俺のことを主って言うってことは」

「ああ。お前を認めてやる。私はお前の配下となろう」

「別に配下にならなくても良いんだが…まぁいいや。そんなことよりも……ポセイドン、一つ頼みがある」

「なんだ?」

「真化を教えてくれ。あれが使えれば」

「無理だ」


 ポセイドンは即答した。


「む、無理なのか?」

「ああ、無理だ。あの技は私と姉上、アテナ……そしてゼウスにしか使うことができない」

「そうなのか?」

「ああ。真化は……強い想いと大量の神力が必要なのだ」

「想い?」

「何かを成し遂げたい。何かを超えたい……とにかく強い想いを神力とともに武器に流し込むんだ。そうすると真化はできる」

「なら俺でも」

「真化は才能にも関わってくる。真化は才能がないものには使えない」

「そう…なのか。残念だ」


 ポセイドンの言葉を聞いて、レイジは肩を落とす。

 真化が使えれば邪神教の教皇との戦いで有利になると考えていたのだが……使えないと知り、レイジは落ち込む。


「そう落ち込むな、主殿」

「そう……だよな。落ち込んでも仕方ないよな」


 レイジは自分の両頬をパンパン!と叩き、気持ちを切り替える。


「よし。じゃあポセイドン。別のことを頼みたい」

「なんだ?」

「俺と一緒にLV7の魔獣と戦ってほしい」

「分かった。ゼウスを復活させるのにLV7の魔獣の魔石が必要なのだろう?」

「話が早くて助かるよ」


 ポセイドンの言う通り、ゼウスを復活させるにはLV7の魔獣の魔石が必要不可欠。

 ロボット型魔道具の動力源である魔神石。それを作るのにLV7の魔獣の魔石が必要なのだ。


「ではさっそく行くか……」


 レイジがポセイドンと共にLV7の魔獣の所に転移しようとしたその時、


「マスター、入りますよ」


 ルルアが部屋に入ってきた。


「あ、目覚めたんですね」

「ルルア…どうした?」

「なんかマスター宛に手紙が」

「手紙?」


 ルルアから手紙を受け取ったレイジは中身を確認する。

 手紙の内容を読んだレイジは目を細める。


「悪い、ポセイドン。別の用事ができた」


 そう言ってレイジは手紙を持ったまま、部屋から出て行った。


◁◆◇◆◇◆◇◆▷


 魔導騎士育成学校【陸王学園】。

 その学園の校舎の屋上にレイジはやってきた。

 屋上にはレイジ以外にも人がいた。

 その人はオレンジ色の髪を伸ばした幼い少女。


「俺を呼ぶなんて思わなかったよ、久留巳ちゃん」


 少女—――皇帝久留巳は鋭い目つきでレイジを睨む。


「俺の名前を気安く呼ぶな、銀髪」

「相変わらず嫌われているな、俺は。で?手紙で俺を呼ぶなんて……どういうことだ?」


 レイジ宛にやって来た手紙は久留巳が書いたものだった。

 手紙には一人で学園に来いと書かれていたのだ。


「少し…お前と話がしたい」

「俺も君と話がしたかった」

「……」

「君は―――」


 レイジが問い掛けようとした。

 その時、虚空から光り輝く無数の鎖が出現。

 鎖はレイジの腕や脚などに巻き付き、拘束する。


「これはエクストラスキル〔聖神せいじんの鎖〕!」

「ほう…知っているのか。これは驚いた」


 エクストラスキル〔聖神の鎖〕。

 久留巳が持つエクストラスキル。

 相手の全てのスキルを封じ、魔法を発動させなくする拘束系最強スキル。


「なん…で、こんなことを!」

「なんで?そんなのお前が……世界を滅ぼす死神だからだ」


 久留巳は右手をレイジに向ける。


(まずい!今、スキルか魔法で攻撃されたら死ぬ!)


 危険を感じたレイジは鎖を外そうとした。

 だが鎖は外れない。


「死ね、死神」


 久留巳が魔法を発動しようとした。

 その時、


「まったく……ふざけたことをする娘だ」


 レイジの目の前に軍服を着た蒼髪の女神—――ポセイドンが現れた。


「お、お前は誰だがはっ!?」


 ポセイドンは久留巳の首を掴み、持ち上げた。


「今すぐ主殿を縛っている鎖を解除しろ。さもないと」

「やめろポセイドン!その子を離せ」

「しかし主殿。こいつは」

「頼む」

「……」


 ポセイドンはハァとため息を吐いた後、久留巳を離した。

 久留巳はゲホゲホと咳をする。


「久留巳ちゃん。聞いてほしい。俺は……君の家族や友人を殺すつもりはない。世界を滅ぼす死神になるつもりもない」

「!?お前……自分がどんな奴なのか知っているのか?」

「ああ。俺は……本当の光闇レイジは最悪で最凶の死神だって知ってる。世界を滅ぼそうとした存在だって知ってる」

「……お前、光闇レイジじゃないな」

「いや…俺は正真正銘の光闇レイジだ。ただ君の知っているレイジじゃない。……俺は前世の記憶を持つ転生者だ」

「転……生者?」

「君もそうなんだろう?だから俺のことを死神だって分かっている。違うか?」


 レイジの質問に対し、久留巳は、


「違う」

「え?」

「オレは……転生者というやつじゃない」

「なっ!?」


 彼女は否定した。自分は転生者じゃないと。

 予想が外れて、レイジは驚く。


「転生者ってなんだ?…お前はいったい……なんなんだ?」

「……全て話す。だから、とりあえずこの鎖を解除してくれ」




「—――と、いうわけだ」

「……とても信じられないな。そんな話」


 レイジは全て話した。自分が転生者であること、そしてこの世界はアニメである事を。

 だが久留巳は信じられなかった。


「証拠はある」

「証拠?いったいどんな―――」

「久留巳ちゃん。君は男同士の恋愛が大好き」

「なぜそれを!?」

「好きな人は小さな駄菓子屋さんで働く十歳年上の男性」

「お、おい!」

「そしてその男性を君は無理矢理押し倒して童貞を―――」

「ああああああもう、分かった。分かったから!もう黙ってろ!」


 久留巳は顔を真っ赤に染めて、レイジの口を手で塞ぐ。

 レイジの話を聞いていたポセイドンは久留巳にドン引きする。


「その反応……どうやら主殿が言ったことは本当みたいだな」

「そんなにドン引きするな蒼髪女神!仕方ないだろ、惚れたんだから!!惚れたら押し倒したくなるだろう」

「……」


 ポセイドンはレイジをチラッと見て、頬を赤く染める。


「まぁ……そうだな」

「ポセイドン。なんで俺を見るの?」

「そんなことよりも……小娘、主殿の言葉を聞いて、どう思った?」

「……正直信じられない。信じられないが、信じるしかないようだな……この世界がアニメだということを」

「俺がいた元の世界もこっちではドラマや映画になっている」

「そうなのか?」

「ああ。……久留巳ちゃん、君に聞きたいことがある」

「……言ってみろ」

「なんで…俺が世界を滅ぼす死神だって知ってたんだ?君はいったい……何者なんだ?」

「……」


 黙り込む久留巳。

 レイジは彼女が話すまで待った。

 しばらく時間が経つと、彼女は話しだす。


「……オレの神魔体質はどんなのか知っているか?」

「いや……アニメだと君は謎が多いキャラだったからよく知らない」

「オレの神魔体質はーーー」



「死ぬと過去に戻るというものだ」

「なっ!?」


 あまりの衝撃的な事実に、レイジは言葉を失った。

 久留巳は言葉を続ける。


「オレは死ぬ度に―――お前に殺されるたびに過去に戻った。それも何十回……何百回も」


 レイジはとても信じられなかった。

 だが嘘を言っていないのは間違いない。

 そして同時に……納得した。


 なぜ久留巳は誰もが知らないことを知っているのか?

 なぜレイジの弱点を知っていたのか?

 なぜ歴戦の猛者のような強さを持っていたのか?


 その疑問が解けた。


(まさか久留巳ちゃんが何度も過去に戻っていたとは……こんな裏設定があったなんて)


 過去に戻る神魔体質。

 それはチート中のチートだろう。


「レイジ……いや、早崎耕平。お前に聞きたい」


 真剣な表情で久留巳はレイジに問う。


「お前は……何を望む」

「……そんなの決まってる」


 レイジは久留巳の目を見て、答える。


「俺は…家族と平和に暮らしたい。それが俺の望みだ」

「……本当にお前はオレが知っている光闇レイジではないんだな」


 フーと息を吐いた後、久留巳は手を差しだす。


「お前に世界を滅ぼす意思がないのなら、オレはお前と敵対しないと約束しよう」

「!ありがとう。皇帝…さん?」

「久留巳でいい。レイジ」

「ありがとう、久留巳ちゃん」


 レイジは久留巳と握手する。


◁◆◇◆◇◆◇◆▷


 久留巳と別れたレイジとポセイドンは家に向かって歩いていた。


「いや~…まさか久留巳が何度も過去に戻っていたとは思わなかったな」


 久留巳が転生者ではなく、タイムリーパーだったということにレイジはまだ信じられなかった。


(けど久留巳ちゃんと仲良くなれてよかった……あとは)


 レイジは足を止め、振り返る。


「おい……隠れてないで出て来い」


 レイジがそう言うと、なにもないところから二人の少女が現れた。

 その少女達は白い狐の尻尾と耳を生やしており、不気味な笑みを浮かべていた。


「あら?気付いていたの?」

「流石は光闇レイジね」


 クスクスと笑う二人の少女。

 そんな二人をレイジは睨む。


「ああ気づいてたよ……お前らがミル―先輩とミラー先輩だったってことも」

「へぇ……そこまで気付いてたんだ」

「なら私達のことも知ってるね」

「知っているさ。邪神教の幹部、《邪聖の十二星座》の双子座の幻奈げんな幻葉げんは


《邪聖の十二星座》の双子座、幻奈と幻葉。

 彼女達は姿を変えるのが得意で、あらゆるところに侵入する。

 だが彼女達は必ず双子の姉妹として侵入するのだ。

 その事を知っていたレイジは、ミル―とミラーが幻奈と幻葉であると気づいていた。


(アニメ知識がなかったら、気づけなかっただろうな)


 レイジはスキルで肉体を成長させ、服装を戦闘服へと変える。

 戦闘態勢に入ったレイジを見て、幻奈と幻葉はクスクスと笑う。


「あらあら血の気が多いね」

「動かない方がいいよ」

「……どういう意味だ」

「「これを見て」」


 幻奈と幻葉が声を揃えてそう言った時、なにもない所から大きな十字架が五つ現れた。

 その五つの十字架には血塗れになったクリアーナ、カルラ、火炎、黒鉄、白影の五人が張り付けられていた。

 十字架に張り付けられていた高等部三年S組の生徒と教師を見て、レイジは額に青筋を浮かべる。


「お前ら……」


 レイジの声には殺意が宿っていた。


「動かないでね。もし動いたら―――、」


 幻奈が口元を歪めながら喋っている時、


「スキル〔超加速〕〔神兎〕〔脚力上昇〕〔神速〕」


 レイジはスピードと脚を強化するスキルを複数発動。

 己を強化した彼は閃光の如き速さで駆け出し、一瞬で幻奈の懐に入った。


「なっ!?」

「人質を使って脅す程度で俺が止まるとでも?」


 レイジは幻奈の腹に強烈な蹴りを放つ。

 重い一撃を受けた彼女は吹き飛ぶ。


「幻奈!?」

「次はお前だ。幻葉」


 レイジは拳を構え、スキル名を唱える。


「スキル〔筋肉増強〕〔暴君〕〔打撃強化〕〔拳強化〕〔硬質化〕〔一撃必殺〕」


 幾つものスキルで自分を強化したレイジは拳で幻葉の顔を殴り、地面に叩き付ける。

 幻葉の顔が地面に深くめり込む。


「ガハッ!」

「ポセイドン、人質は任せた」


 レイジは幻葉の首を掴み、吹き飛ばした幻奈の所に向かって走る。


◁◆◇◆◇◆◇◆▷


「いった……油断した」


 山の方まで吹き飛ばされた幻奈は腹を手で押さえながら、立ち上がる。


「甘く見てたよ……まさか人質を使う前に攻撃されるとは」


 幻奈は今日までレイジのことを調べてきた。

 どういう戦いをするか。

 どういう人物なのか。

 なにが嫌がるのか。


(レイジの性格上、人質を使えば言うことを聞くと思ったのに……失敗した。でもまぁいい……失敗した時のために他の準備をしてきた)


 幻奈と幻葉はあらゆる準備をしてきた。

 レイジを確実に捕まえるために。


「ここにいたのか」


 いつのまにか現れたのか、幻奈の目の前にレイジがいた。

 そして彼の右手には幻葉の首が握られていた。


「幻葉を返せ!」

「ほらよ」


 レイジは幻葉を幻奈に向かって力強く投げた。

 飛んできた幻葉を幻奈は受け止める。


「さぁ、かかってこいよ。〈双子座〉」


 レイジが挑発すると、幻葉と幻奈は眉間に皺を寄せる。


「幻葉」

「うん…分かってるよ、幻奈」

「「魔装展開」」


 幻葉と幻奈は短剣型魔装を顕現させ、装備する。

 そして、


「「全魔道具……起動」」


 彼女達は両手の全ての指にはめてある指輪型魔道具の力を解放。

 幻葉と幻奈の身体から陽炎のような白いオーラが発生する。


「へぇ…魔道具で自分を強化したのか。しかも全部神話級……集めるの苦労しただろう」

「そうだよ」

「君を捕まえるために頑張って集めたのさ」


 幻奈と幻葉は短剣を構える。


「今日、ここで」

「君を捕まえる」

「……」


 レイジは漆黒の大鎌を生み出し、瞳を怪しく輝かせる。


「やってみろよ、狐共」

 読んでくれてありがとうございます。

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