光闇愛花、登場
「ぶっ殺してやるよ」
殺意が込められたレイジの言葉。
その言葉を聞いたスリープは瞳を怪しく輝かせ、両手から水の双剣を生み出した。
「やってみなよ、人間風情が」
水の双剣を構えたスリープは、レイジの懐に一瞬で入り込み、斬撃を放った。
襲い掛かる斬撃をレイジは紙一重で躱し、拳をスリープの腹に打ち込んだ。
「がっ!」
ボキボキと骨が折れる音が鳴り、スリープの口から血が流れる。
「やってくれるね!」
スリープは水の双剣をレイジの両肩に突き刺した。
傷口から血が噴き出し、レイジの顔が激痛で歪む。
「この野郎!」
レイジはスリープの顔を鷲掴みし、地面に叩きつけた。
地面にクレーターが生まれ、粉塵が舞い上がる。
「ぐっ!こんのおおおおお!」
スリープは掌から大量の水を放射し、レイジを吹き飛ばす。
吹き飛ばされたレイジは地面の上に着地し、体勢を立て直した。
「お前は絶対に殺す!」
レイジは背中や足裏から炎を噴射して、高速でスリープに突撃した。
そして怒涛の連打を放ち、スリープに攻撃。
襲い掛かるレイジの連打をスリープは躱す、躱す、躱す。
「こんな攻撃で私を倒せないよ」
スリープは一瞬でレイジの背後に回り込み、回し蹴りを放つ。
強力な蹴撃がレイジの横腹に直撃。
レイジの身体が横に吹き飛び、巨大な木に激突する。
「ガハッ!」
口から血を吐き出す光闇レイジ。
彼の身体が魔神から人の姿へと元に戻る。
「クソっ…オーバースキルが」
「どうやらここまでのようだね」
人の姿に戻ったレイジに歩み寄るスリープ。
彼女の手には、水で出来た槍が握り締められていた。
「最後に言い残すことは?」
「くたばれ、クソ野郎」
「…そう」
スリープは槍を突き出し、鋭い刺突を放った。
彼女の刺突がレイジの胸を貫こうとした。
その時、
「させないよ」
黄色と黒の鎧を纏った小柄な女性が突然現れた。
その女性は手に持っていた巨大なメイスを振るい、水の槍を弾き飛ばす。
「なっ!」
驚愕するスリープ。
そんな彼女の鳩尾に、女性はメイスを叩き込んだ。
轟音が鳴り響き、スリープの身体は後ろに吹き飛ぶ。
魔獣の女神を吹き飛ばした小柄な女性は振り返り、レイジに尋ねる。
「大丈夫?レイくん」
「……嘘、なんで」
目の前にいた女性はレイジがよく知っている人だった。
「なんでここに……お母さんが!?」
そう。突然現れ、レイジを助けたのは死神の母―――光闇愛花だった。
「ルルアちゃんから聞いたの。レイくんが一人で魔獣大災害進行を食い止めようとしてるって」
「そうなんだ……」
「もう、無茶ばかりして。お母さんプンプンだよ!」
フグのように頬を膨らませて怒る愛花。
「ご、ごめん。心配かけて」
「本当だよ。もう……いつもいつも心配かけさせて、後でお仕置きよ」
「はい」
「でも……一番お仕置きをしないといけないのは、君ね」
愛花はメイスを構えながら、スリープを睨みつけた。
彼女の目には強い殺意と怒りが宿っていた。
「ずいぶんと私の息子を傷つけてくれたね、スリープ」
「君の方こそ、よくも邪魔してくれたね。あと少しでその人間を殺せたのに」
「死なせない…今度は死なせない。大切な家族を。そしてスリープ、君を…倒す」
そう告げた愛花は地面を勢い良く蹴り、一瞬でスリープの懐に入った。
「なっ!」
「君は私の妹と義弟を殺し、息子を傷つけた。絶対に許さない」
愛花は巨大なメイスを振り下ろし、スリープの頭に重い一撃を喰らわせた。
強い衝撃を受けたスリープの頭から血が流れる。
「ぐがぁ!」
「私ね…とっても怒ってるの」
拳を強く握り締めて、愛花は冷たい声で告げる。
「もう…死んで」
愛花は拳を放ち、スリープの顔面を殴った。
スリープの身体がピンポンボールのように吹き飛び、地面の上を何度もバウンドする。
「す…すご…」
愛花の戦いを見ていたレイジは、目を丸くしていた。
一方的にスリープを追い詰める愛花の強さに、レイジは驚きを隠せなかった。
(お母さんが強いのは知ってたけど…ここまでとは)
流石は元邪神教の幹部だなとレイジが思っていた時、スリープに異変が起きた。
「痛いな~…本当に痛いな~…」
地面の上に倒れていたスリープはゆっくりと起き上がり、愛花を睨みつけた。
「ここまで私を怒らせたの……君が初めてだよ」
スリープの身体が徐々に蒼く輝き出し始めた。
「本気…見せてあげる」
次の瞬間、スリープの姿が消えた。
「消えた!?」
慌てて愛花がスリープを探した。
その時、彼女の右太ももが水の槍に貫かれた。
槍を突き刺したのは他でもない。
スリープだ。
「ぐう!」
痛みで顔を歪める愛花。
そんな彼女にスリープは顔を近づける。
「君が悪いんだよ。私を……怒らせたんだから」
スリープは右手から水の剣を生み出し、愛花の胸を斬り裂いた。
赤い血が周囲に飛び散る。
「お母さん!」
血を流す母の姿を見て、レイジは助けに行こうとした。
しかし思うように身体が動かなかった。
「なんでだよ!こんな時に!」
必死に身体を動かそうとするが、魔力や体力などを消費しすぎたせいでうまく動かない。
スリープの斬撃によって、切り裂かれていく愛花。
それを見ていることしかできないレイジは、叫ぶ。
「動いてくれ!俺の身体!前世みたいに家族を失うわけには行かないんだ!」
前世で家族を失った光闇レイジ。
彼は同じ悲劇を生み出したくなかった。
「頼むから…動いてくれよおおおお!」
レイジが大声で叫んだ。
その時、黒い眼帯に覆われた彼の右目が蒼く輝き出した。
そして意識が白く染まった。
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