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魔獣大災害進行

 暗い森の中を疾走するルルア。

 そんな彼女に抱えられていたレイジは「ルルア、降ろせ」と言う。


「駄目です。今のマスターは怪我をしているんですから」

「大丈夫だ。右腕はさっき再生させたから。とにかく降ろしてくれ…頼む」

「……分かりました」


 主の命令に従い、ルルアは走るのをいったんやめ、レイジを降ろした。

 レイジの右腕は確かに再生していた。


「ルルア……お前にどうしても頼みたいことがある」

「何ですか急に?今は逃げることの方が―――」

「魔獣大災害進行が起こる」

「!!」


 魔獣大災害進行。それは世界の半分を破壊するまで止まらない魔獣の大群の大侵攻。

 多くの命が奪われる最悪の災害。


「さっきスリープと戦っている時、スキル〔災悪視〕が発動したんだ」

「……家族を含めた多くの命が魔獣達に奪われる未来を見たんですね?」

「その通りだ。スリープは多くの魔獣を連れていくつもの国を滅ぼすつもりだ」

「なるほど……私は何をすればいいのですか?」

「ハデスとアテナと協力して、街の人達を避難させろ」

「……マスターはどうするんですか?まさか……戦うつもりですか」

「……」


 ルルアの質問に対し、レイジは何も答えなかった。

 ルルアはレイジの両腕を掴んで、怒声を上げる。


「分かっているのですか!?今までの相手とはレベルが違う。本当に死ぬかもしれないんですよ」

「そうだな……最悪、死ぬかもな」

「だったら!」

「でも誰かがやらないといけない。そしてそれが出来るのは……俺だけだ」


 ルルアは唇を噛んで、俯いた。

 彼女も理解はしているのだ。魔獣大災害進行を止められるのは、レイジしかいないことを。

 レイジはこの世で最凶のチートキャラクター。

 最悪を止めるには、チートの力が必要だ。

 しかしいくらチートとはいえ、相手は何千何万の魔獣。

 ただではすまない。


「どうしてあなたはいつもいつも……自分を犠牲にするんですか」

「すまん……迷惑かけて」

「……分かってますよ。あなたがそういう人だってことは。止めても無駄だってことは」


 ルルアは顔を上げて、レイジを見つめる。

 彼女の目は潤んでおり、どれだけ心配しているのか伝わってくる。


「お願いです。ちゃんと生きて戻ってきてください」

「……ああ、分かった。必ず戻る」


◁◆◇◆◇◆◇◆▷


 魔の森の中で何千何万もの漆黒の魔獣達が地響きを立てながら進行していた。

 赤い瞳を不気味に輝かせながら、魔獣達は向かう。人間や女神達が住む街に。


「さ~てどこから滅ぼそうかな~」


 魔獣達の戦闘を歩いていたスリープが、これからの事を考えていた。

 その時、


「待て」


 殺気が込められた低く冷たい声が森の中に響いた。

 その声を聞いたスリープと魔獣達は足を止める。


「君…また来たの」


 ため息を吐くスリープ。

 彼女の視線の先にいたのは、白銀の髪を伸ばした青年。

 彼は右目に黒い眼帯をつけており、左目には赤い瞳を宿していた。

 首に巻いてある赤いマフラーが風で揺れる。


「よう、スリープ。再戦しに来たぞ」

「まったく……人間って面倒くさいな」

「人間じゃない」

「ん?」

「俺は光闇レイジ……お前らを殺す死神だ」

「死神……面白い冗談だね。それに私達を殺すって…本気で出来ると思っているの?」

「ああ……できるとも」


 左目を怪しく輝かせたレイジは、指をパチンと鳴らした。

 すると彼の周囲にいくつもの黒い穴が出現。

 そこから黒い鱗に覆われた巨大なトカゲ型魔獣や鎧を纏った人間、そして女神型魔獣などが次々と現れた。


「これは……」

「俺の神魔体質は、殺した奴を召喚して戦わせるって言うやつなんだよ。数は数万……これでお前らと互角だ」


 死者を呼び出し、配下にするレイジの能力はまさに死神の力。


「さぁ魔獣の女神……殺し合いを始めようか」

「……いいよ。遊んであげる」


 オーラを放ちながら睨み合うレイジとスリープ。

 二人の化物は、目の前の敵を排除するために配下に命令する。


「殲滅しろ!」

「みんな殺して」


 主の命令に従い、化け物達は動き出した。

 狂暴な漆黒の魔獣達と、あの世から蘇った怪物たちが真正面から衝突し、殺し合いを始めた。

 激しい戦闘音が、魔の森の中で響き渡る。


「俺らもやるぞ!スリープ!」


 地面の上を駆けだしたレイジは右手から漆黒の大鎌を生み出し、スリープに襲い掛かる。


「面倒くさいな、君は」


 眠たそうに欠伸をしたスリープは、両手を前に突き出した。

 そして彼女は指先からガトリングガンの如く、水の弾丸を連射。

 迫りくる弾丸の雨を大鎌で斬り裂きながら、レイジはスリープに突撃する。


「この程度で止められると思うなよ!」


 水の弾丸を全て斬り裂いたレイジはスリープに向かって、大鎌を振り下ろした。

 襲い掛かる鎌の刃をスリープは片手で受け止める。


「これで終わり?」

「い~や、まだだ!オーバースキル〔炎魔神化(イフリート)〕!」


 レイジがスキルを発動した直後、彼の身体が赤黒く燃え上がった。

 やがて炎が収まるとレイジは漆黒の外殻に覆われた炎の魔神と化していた。


「歯を食いしばれ!」


 ロケットエンジンの如く肘から炎を噴射させ、レイジは強力な拳撃を放った。


「無駄だよ」


 スリープは目の前に水の壁を生み出し、レイジの一撃を防ぐ。


「君は私に勝てない」

「それはどうかな。スキル〔重力操作〕!」


 レイジがニヤリと笑いながら、スキルを発動した。

 次の瞬間、スリープに途轍もない圧力が襲い掛かった。

 スリープの足元が深く陥没する。


「ぐっ!」

「俺は何が何でもお前を殺す!スキル〔性転換〕!」


 レイジが新たなスキルを発動すると、彼の胸とお尻が大きく膨らみ、銀色の髪が長く伸びた。

 

「火属性魔法〔LV9地獄の業火(インフェルノ)〕!」


 女性の姿へと変わったレイジは高い声で魔法を唱えた。

 するとレイジとスリープの足元に、赤く輝く巨大な魔法陣が出現。

 その魔法陣から赤黒い炎の柱が発生した。


「ううぅぅ……!」


 業火の柱に呑み込まれたスリープは必死に耐える。

 だが炎柱の火力はすさまじく、彼女の皮膚を焼いていく。


「いくら女神のお前でもこの炎はキツイだろ!」

「…調子に」

「え?」

「調子に乗らないでくれるかなあぁぁぁぁ!!」


 叫び声を上げたスリープは身体から大量の水を発生させ、業火の柱を消した。

 ジュウゥゥゥゥゥゥ!という音が鳴り、白い蒸気が発生する。


「クソ!強引に炎を消しやがった!」


 後ろに跳んでスリープから距離を取るレイジ。

 彼は拳を構えて、スリープを警戒する。


「まったく……やってくれたね君」


 眉間に皺を寄せて、レイジを睨むスリープ。

 彼女の身体のあちこちが焼け焦げていた。


「ここまで私を追い詰めるなんて思わなかったよ……しかもその姿。あの人間の血縁者かな?」


 スリープの言葉にレイジは眉を顰める。


「あの人間?いったい誰の事だ」

「…数年前、私は近くの街を滅ぼそうとしたの。その時、邪魔した人間の雌と亜人の雄がいた。今の君は邪魔してきた人間の雌によく似ている」

「邪魔した…人間の雌…まさか」


 スリープの言葉を聞いて、レイジはある事に気が付く。

 

(俺の両親はLV7の魔獣に殺された……つまり!)


 レイジの両親を殺したのは、スリープ…ということ。


「そうか…お前が…俺の両親を」


 親の仇を見つけたレイジは目を細め、額に青筋を浮かべた。

 今、彼の心に宿っているのは激しく燃える怒りの炎。


「ぶっ殺してやるよ」




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