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転生した自分は

 夕食を食べ終え、風呂にも入ったレイジは、部屋の中で本を読み続けていた。

 デジタル時計には、午後九時三十分と表示されていた。


「やっぱりこの世界を知れば知るほど、前世とは違う地球だって分かるな」


 頭の後ろで指を組み、天井を見上げるレイジ。

 アニメや漫画だけの話かと思っていた異世界転生。それを自分はやってしまった。しかも転生先は別の地球。

 まさか転生するとは思わなかったレイジは、今日の出来事を思い出し、ポツリと呟く。


「……ご飯、美味かったな」


 今日の昼食と夕食は両親がよりを掛けて作り、豪勢だった。

 と言っても、高級食材が使われた料理ではない。山盛りの唐揚げやすき焼き、ケーキや餡蜜などといった普通の料理だ。

 だが、両親が作った料理はどれも優しい味だった。

 前世で食べてきた高級料理よりも、とても美味しく感じた。


「特別な調味料は愛情か…馬鹿にできないものだな」


 自然と頬を緩めたレイジは、本に視線を向けてページを捲る。

 一行一行しっかりと目を通す。

 そして最後まで読み終えた彼は、本をゆっくりと閉じて嘆息する。


「……やっぱり俺はこの世界の事を前世で知っている」


 本に書かれている知識の大半は、早崎耕平の記憶の中にも存在していた。


(最初に読んでいて気になったのは、アストラル王国だ。この国の名前はどこかで聞いたような)


 レイジは前世の記憶の中を探る。

 時間が一分、十分、三十分、一時間と過ぎていく。

 そしてデジタル時計に午後十一時と表示した頃、レイジは思い出した。


「そうだよ!確かあの大人気アニメ『クイーン・オブ・クイーン』の主人公キャラクターの生まれ故郷だ。いやー思い出してよかった!アハハハハハ!」


 笑い声を上げるレイジ。

 だがその笑い声は徐々に音量が小さくなっていき、止まった。


「冗談だろ……おい!?」


 頭に手を当てて、戦慄の表情を浮かべるレイジ。

 彼は気が付いてしまったのだ。自分がいる世界はとんでもない場所で、生まれ変わった自分がどれだけ危険なものかを。

 額に嫌な汗を浮かべながら、レイジは姿見鏡に視線を向ける。


「白銀の髪に深紅の瞳。名前は光闇レイジ……家族は父と母、姉と妹。これは確定だな」


 受け入れたくない現実から逃げずに、レイジは認めた。

 自分が将来、世界に絶望を与える最凶にして最悪の邪神……『クイーン・オブ・クイーン』のラスボスであることを。


『クイーン・オブ・クイーン』


 レイジの前世、早崎耕平がいた地球で社会現象を起こした大人気アニメ。

 舞台は漆黒の雲、邪雲に覆われた地球。

 アストラル王国の第二王女にして主人公キャラクター、アリア=アストラル。

 彼女は立派な女王になる為に、魔獣と戦う魔導騎士を育成する学園に入学。

 あらゆる困難や修羅場を、契約した女神と仲間と共に乗り越え、世界を救う物語。

 そんな彼女の最大の敵にして、最低最悪のラスボスキャラクター。


 光闇レイジだ。


 彼は人の死や不幸を喜ぶ悪逆非道な男。女神と契約してからは自分の欲を満たすために、多くの命を奪い、数々の国を消してきた。

 まさに悪の中の悪。

 そんな危険な奴に早崎耕平は転生してしまったのだ。


「まさか自分がラスボスになるとはな。ハハ…アハハハハハハハハハハハハハ!!」


 顔に手を当てて、レイジは笑い声を上げた。

 世界の最大の害悪に生まれ変わらせた運命に対して、彼はただただ大きな声で笑った。

 満足するまで笑った後―――途轍もなくドスの利いた声で、レイジは呟く。


「上等だよ。運命のクソ野郎が!こちとら前世では地獄のようなトラブルに何度も巻き込まれてきた男だ」


 レイジの赤い瞳が爛々と輝く。


「『クイーン・オブ・クイーン』の物語が始まるのは俺が十八歳の時、つまり今から十四年後。時間はまだある」


 眉間に皺を寄せて、姿見鏡に映る自分を睨みつける。

 決められた運命を変えるために、彼は宣言する。


「絶対に俺は否定してやるよ。ラスボスになる未来をな!!」

 どうもグレンリアスターです。

 今回は転生した自分が何者なのかを書かせていただきました。

 そして、次回からは転生してからのお話を書かせていただきたいと、思います。

 気に入ってくれると嬉しいです。

 次回、お楽しみにしてください。

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