婚約はしません!
アテナが新たな家族になってから数日後。
再びサルマールとカッターがレイジの家にやって来た。
「やぁ光闇レイジ…婚約の件、考えてくれたか?」
「……はい。ちゃんと考えました」
「そうかそうか!なら早速、婚約確定させるためにまず親同士と」
「いや、あのまずは俺の話を」
「それとも婚約式でもやった方が良いか?私は構わないぞ」
「いえ、しなくていいです。ってじゃなくて、俺の話を聞いてください!」
「ちゃんと聞いているぞ。婚約OKなんだろう?」
「人の話聞かないタイプですね、あなたは!」
「なんだ?言いたいことがあるなら言え」
「実は…婚約の話ですが……すみません、無理です」
「……なぜだ?」
皺を寄せて、ドスの利いた声で尋ねるサルマール。
彼女の圧にこっわ、マジでこっわ!と思いながらレイジは答える。
「やはりこういうのは俺には早いと思います」
「なら君が大人になるまで待とう」
「いや、そういう問題じゃなくてですね……俺は大人になっても婚約しません」
「ほう……」
サルマールは目を細めて、レイジを睨みつけた。
(はい、終わった!俺の人生終わった!絶対にキレたよこの人!)
背中から大量の汗を流しながら、レイジは死を覚悟した。
「それはつまり…私の娘だと不満だと?」
「いえ、そういうわけです」
「あの子…大きくなったら私より美人になるぞ」
「親バカなんですか?」
「胸も大きくなるぞ」
「何を言ってんですかあなたは?」
「きっと…色々な男を誘惑するような魔性の女になるぞ」
「あんたはさっきから五歳児の子供に何を言ってんですか?ってじゃなくて!」
「なんだ?」
「その……やはり婚約は好きな人とするべきです。娘さんも親が決めた相手よりも、自分で選んだ方が良いと思いますし」
それはレイジがミルマールの事を考えて言った言葉だった。
レイジの言葉を聞いてサルマールは軽くため息を吐き、頭をガリガリと掻く。
「君の気持はよく分かった」
「じゃあ」
「ああ。婚約の話はなしにしよう」
「ありがとうございます」
「しかし残念だ。娘のウエディングドレスが見られないのは」
「気が早いですよサルマールさん」
「孫の顔が速く見たかったな」
「だから気が早いって」
「おばあちゃんと呼ばれたかったわ」
「だから気が早いつってんだろ!!」
レイジの盛大の突っ込みが響き渡った。
その時、サルマールのポケットからプルルルルと電話の着信をんが鳴り響いた。
サルマールはポケットからスマホを取り出し、通話をオンにする。
「なんだ……なんだって!」
突然、サルマールが驚愕の表情を浮かべて、声を荒げた。
彼女の様子からただ事ではないと分かった。
「どうしたの、サルマール?」
「娘が……邪神教に攫われた」
「嘘でしょ!?」
「!!」
サルマールの言葉を聞いて、カッターだけでなくレイジも驚愕した。
ミルマールが攫われた。犯人は邪神教の者。
その二つのワードを聞いて、レイジは犯人の目的をすぐに理解した。
(奴らの目的はミルマールの魔眼。それを奪うために攫ったのか)
カイザー家は代々魔眼の神魔体質を持つ一族。
魔眼は見た者を石化させたり、洗脳させたりと種類は様々。
ミルマールが持つ魔眼には、ありとあらゆるものを崩壊させる効果がある。
邪神教はその魔眼を手に入れるためにミルマールを攫ったのだ。
(まずいな。この展開はアニメでもあった。このままだとミルマールが死ぬ…仕方ない)
レイジはスキル〔装備変換〕と〔成長操作〕を発動。
彼の身体が大人の姿へと成長し、服装が戦闘服へと一瞬で変わった。
「サルマールさん。俺がミルマールちゃんを助けに行きます」
「!何を言って!」
「どこにいるか俺には分かります。そして犯人がどんな奴かも」
「……本当なんだな?」
「はい」
「なら私も」
「駄目です。敵は幹部クラス。それもあなたとは相性が悪い相手です」
「くっ……しかし!」
「ここで待っていてください。必ずミルマールちゃんを助けますから」
「……分かった。信じよう」
「ありがとうございます」
レイジが目的の場所にスキルで転移しようとした。
その時、
「ちょっと待って、主」
「私達もお供します」
『しょうがない。マスター一人だと心配ですし、私も行きましょう』
三人の女性の事が聞こえた。
声が聞こえた方向に視線を向けると、そこにはアテナ、ハデス、ルルアの姿があった。
どうやら彼女達もレイジと共にミルマールを救いに行くようだ。
「お前ら……分かった。よし行くぞ」
「「『はい!』」」
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