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邪神教幹部と闇ハッカーの殺し合い

「くっ!なんなのよあれ!」

『カーラ!あっちからも攻撃が!』

「分かってるわよ!」


 身体を低くして、地面の上をスレスレで走るカーラ。

 彼女は苦しそうに顔を歪めながら、躱す。高速で迫りくる雷の砲弾を。

 躱した雷砲弾は地面に着弾した直後、激しいスパークと爆発を巻き起こす。

 砲弾を放ったのは、巨大な機械仕掛けの要塞と化したルルアだ。


『ほらほらこんなものですか、《邪聖の十二星座様》!!》』


 まるで悪役のようにルルアは、敵を嘲笑う。

 そして要塞に搭載された全ての大砲から、雷の砲弾を炸裂させる。

 雷の砲弾の雨がカーラを襲う。


「私達を舐めるんじゃ!」

『ないでよね!』


 カーラは指の間から無数の黒い矢を生み出し、弓に装填し、連射。

 高速で飛んだ無数の矢は、雷の砲弾を次々と撃ち落とす。

 自分の攻撃を無効化されたのを見て、ルルアは舌打ちする。


『そう簡単には行かないですか。ならこれならどうです!』


 ルルアは要塞を覆っている装甲の一部を展開させた。

 展開したところから大きなミサイルポッドが出現。

 そのミサイルポッドには、大量のミサイルが装填されていた。


『ファイア!』


 ルルアの言葉を合図に、ミサイルポッドから大量のミサイルが発射。

 煙の尾を描きながら、ミサイル群はカーラに接近する。

 だがこれぐらいで、邪聖の十二星座の射手座はやられない。


「消えろ!」


 カーラの両肩に浮かんでいた蒼い水晶から、光線が放たれ、大量のミサイルを吞み込んだ。

 ミサイルは粒子分解し、跡形もなく消滅。

 ルルアの攻撃を全て消し去ったカーラは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「これで終わりかしら?」

『大したことないね~』

『「アハハハハ」』


 ルルアを嘲け笑うカーラとメス。

 しかし、この後二人は後悔することになる。


『詰まらなくて結構ですよ。そもそも私がこんな風になって戦っていたのは、あなた達を倒すためではありません。時間を稼ぐためです』

「何ですって?それはどういう意味を―――」


 眉をひそめてカーラが問おうとしたその時、突然—――空が金色に輝き出した。

 遊園地に設置されている外灯よりも眩しい光。

 何事かと思ったカーラは、慌てた様子で空を見上げた。


「あ、あれは!」


 目を大きく見開くカーラ。

 彼女は自分が見ているものは、幻覚なのではと思ってしまった。

 それぐらい衝撃的だったのだ。信じられなかったのだ。


『あなた達はこうでもしないと倒せませんからね。雷属性魔法〔LV10雷音(らいおん)嬢神(じょうしん)〕!』


 ルルアが大声で魔法名を唱えた。

 すると魔法陣から、一人の女神が舞い降りる。

 黄金に輝く短い髪に、金色の瞳。

 稲妻の紋様が施された肌に、キラキラと輝く金色のドレス。

 そして手には、金と白のバイオリンが握られていた。

 まるでバイオリニストのような女神は、バイオリンを構えて音を奏でる。

 その音楽はとても荒々しく、けれど聞いているだけで涙が出てきそうなくらい素晴らしいものだった。

 激しくバイオリンを弾く女神。

 彼女はカーラを睨みつけて、告げる。


「聴いて死になさい。私の音楽で!」


 次の瞬間、音楽を奏でていたバイオリンから、黄金の稲妻が発生した。

 稲妻はまるで龍の如く空を翔け、カーラに襲い掛かる。

 カーラは黒い矢を放ち、迎撃する。

 しかし彼女の攻撃は、黄金の稲妻によって一瞬で消された。


「バカな!」


 驚きの声を上げるカーラ。

 そんな彼女を黄金の稲妻が直撃。

 激しい電撃が身体中を駆け巡り、カーラは苦痛の悲鳴を上げる。


「アアアアアアアアアアアアアア!!」


 彼女が纏っていた神装の鎧に大きな亀裂が走り、弓が崩壊した。


『カーラ!』

「し、心配ないわメス。このぐらいで……私が死ぬわけないから!!」


 激痛に耐えながら、カーラは掌に黒い矢を生み出し、投擲した。

 黒い矢はバイオリンを弾く女神の胸に突き刺さる。


「がっ……私の音楽は…まだ」


 口から血を流しながら、女神は金色の粒子と化して消滅。

 同時に黄金の稲妻は霧散し、消え去った。


「ハァ…ハァ……」


 雷撃から解放されたカーラは、片膝を地面に付けて、荒い息を漏らす。

 強力な攻撃を受けたせいで、彼女は酷い怪我を負っていた。

 身体の所々は焼け焦げており、目や鼻などからは血を流している。

 既に満身創痍。

 

『どうです?降参しますか?そしたら、見逃してあげますよ』


 相手を見下すように尋ねるルルア。

 本当に悪役なのでは?と突っ込みたくなるような余裕な態度。

 しかし、実際内心ではとても焦っていた。


(今の攻撃で普通の立っていられますか!?LV10の魔法ですよ?どんだけ強いんですか!)


 ルルアは先程の魔法でカーラを仕留めるつもりだった。

 しかし、予想以上にカーラが頑丈のせいで、殺すことが出来なかった。

 ルルアは心の中で「どうか撤退してくれ」と願いながら、言う。強い威圧を込めて。


『さぁどうしますか?逃げるか、死か』


 生きるか、死ぬかの究極の選択。

 逃げるのであれば生きられ、戦うのであれば死が待っている。

 これに対しカーラは―――血に染まった口で、笑みを浮かべた。


「逃げる?死?どちらでもないわ、お人形さん」


 カーラはゆっくりと立ち上がり、ルルアを見つめた。充血した目で。

 それがあまりにも悍ましく、ルルアはゾクッと恐怖を感じた。


「私はね……あなたを消したいの、破壊したいの、殺したいの。だから……本気を出すわ」


 そう言ってカーラは指をパチンと鳴らした。

 直後、カーラの両肩に浮かんでいた水晶が強く発光。

 周囲が蒼い光に包まれ、何も見えなくなる。


『させません!』


 カーラがなにをしようとしているのかを察したルルアは、阻止しようとする。

 要塞に搭載された大砲とミサイルポッドを構える。


『最大攻撃です!受け取ってください!』


 ミサイルや砲弾が一斉発射。

 稲妻を纏ったミサイルと砲弾の雨がカーラに向かって降り注ぐ。

 回避や防御は不可能だろう。

 あるのは死ぬだけだ。そう、普通の人ならば。


「言ったわよね?本気を出すって」


 囁くようなカーラの小さな声が響いた。

 その時、無数の細長い光線が空中を走った。

 光線は降り注ぐミサイルや砲弾を次々と撃ち落とす。

 空中に幾つもの爆発が巻き起こる。


『これは……面倒なことになりましたね』


 要塞の一部となっているルルアは、警戒心を上げる。

 彼女のアイカメラに映っているのは、要塞に搭載された監視カメラから流れてくる映像。

 その映像には―――下半身が馬になっているカーラが映し出されていた。

 まるでケンタウロスのような姿になったカーラの手には、蒼く輝く大きな弓が握られていた。


(オーバースキル〔弓人馬神化(サジテリアス)〕……ですか。しかもあの弓……スキルか魔法かなにかで〘死光の水晶〙を弓に変形させましたか)


 追い詰めていたルルアが、危険な状況になっていた。

 敵は完全神装をしている上に、オーバースキルを使っている。

 圧倒的、不利な状況。

 今のカーラは、本気になったレイジでも倒すのが難しい化物。

 そこらへんの機械で要塞にしたルルアでは、勝ち目ないだろう。

 しかし、ルルアは諦めるつもりはない。

 

『ま、やるしかないですね』


 ルルアは覚悟を決める。

 目の前の強敵を倒し、愛する男性といつものバカ騒ぎするために。


 彼女は、勝利を目指す!


『さぁ、行きますよ!雷属性魔法〔LV9雷蜂(サンダービート)〕』


 ルルアが魔法を唱えると、空中に金色の魔法陣が出現。

 そこから全長五メートルの蜂が、無数に飛び出した。

 蜂達は金色の雷を纏っており、羽を高速で羽ばたかせている。

 

『行きなさい!』


 主の命令に従い、雷蜂は電光石火の速さで飛翔。

 バチバチバチと激しく放電しながら、雷蜂の群れはカーラは接近する。


「あらあら、すごいわね。刺されたらたまらないわ。まぁ、今の私には意味ないけど」


 蒼く輝く大弓を構えたカーラは、限界まで弦を引っ張る。

 そして弦を離すと、弓から蒼い光線が放射された。

 光線は無数に拡散し、、雷蜂の群れを次々と撃ち落とす。

 光線に貫かれた蜂達は断末魔を上げながら、跡形もなく消滅。

 ルルアの攻撃を一瞬でなかったことにしたカーラ。

 今の彼女に撃ち抜けないものはない。


『まだまだですよ!』


 ルルアはミサイルポッドや大砲を構え、攻撃しようとした。

 だがそれよりも速く、カーラは弓から三本の光線を放った。

 光線は要塞に見事に命中。

 搭載されていた大砲やミサイルポッドが爆発し、要塞が崩壊を始めた。


『くっ!やっぱり、そこらへんの機械で作った物では、脆すぎましたか。もう持ちそうにありませんね。こうなったら……脱出!』


 要塞の装甲の一部が展開し、そこからルルアが飛び出した。

 完全に要塞が崩壊する前に、脱出が出来たルルア。

 だが代わりに、強力な武器を失ってしまった。

 もう彼女を守る装甲も、敵に攻撃する大砲もない。

 あるのは、片腕を失ったぬいぐるみの身体のみ。

 

「これは狙いやすいわ」


 ルルアを消すために、カーラは弓を構え、弦を引っ張る。

 

「さよなら、お人形さん」


 邪悪な笑みを浮かべたカーラは、弦から手を離した。

 蒼い大弓から極太の光線が放射され、ルルアを呑み込もうとする。


『しまっ!』


 光線がルルアに直撃しようとした。

 その時だった。突然、ルルアの目の前に小さな人影が現れた。


「やあぁぁぁぁぁぁ!」


 気合が宿った叫び声を上げながら、人影は迫りくる光線を()()()

 光線は四方八方に拡散し、消滅。

 己の渾身の一撃を防がれたことに、カーラは驚愕する。


「嘘!?なんで!」


 無理もないだろう。全てを粒子分解する絶対的な攻撃を、ただの拳で無効化されてのだから。

 だが一番驚いているのは、ルルアだった。


『あ、あなたは』


 ルルアのアイカメラに映っていたのは、一人の女性の背中。

 小学高学年ぐらいの短い身長に、三つ編みにした長い茶髪。

 そして、


「まったく……バリアが突然消えたから、何事かと思って来てみたら……こんなことになっていたなんて、驚いちゃった」


 可愛らしい高い声。

 ルルアは知っている。寧ろ知らないはずがなかった。彼女の事を。


 粒子分解の光線を拳で消滅させ、ルルアを助けたのは―――世界を滅ぼすことが出来る光闇レイジの母親。


 光闇愛花だ。


「この子は……ルルアちゃんは私の息子のお友達なの……あまり、虐めないでくれるかな。カーラ」

 読んでくれてありがとうございます。

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