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覚醒者との戦闘

 草原の上で大鎌を握り締めたレイジと茶色の鎧を纏った月夜が激闘していた。

 漆黒の大鎌と茶色のガントレットが激しくぶつかり合う。

 金属音が鳴り響き、火花が飛び散る。


「くっ!攻撃が重い!」

 

 苦しそうに顔を歪めるレイジは、月夜の連打を大鎌で受け流す。

 一撃一撃が重く速いせいで彼は反撃が出来ない。

 

(チッ!スピードもパワーも技も経験も……月夜さんの方が遥かに上!ならば!)


 レイジは攻撃を受け流しながら、スキルを連続発動する。


「スキル〔重力操作〕〔植物操作〕!」


 直後、強い圧力が月夜に襲い掛かり、地面が大きく陥没する。

 同時に草が巨大化し、彼女の身体に強く巻き付いた。

 動きを封じられた月夜。

 そんな彼女に向かってレイジは大鎌を振り下ろす。


「もらった!」


 回避不可能の一撃が月夜に直撃しようとしたその時—――大鎌の刃が甲高い音を立てて砕け散った。

 一瞬、なにが起きたか分からなかったレイジは硬直する。

 直後、レイジの腹部に強い衝撃が襲い掛かった。


「ガハッ!」


 口から血を流したレイジは自分の腹部に視線を向ける。

 そして気が付く。月夜の足が当たっていることに。


(この人……蹴りで大鎌を破壊して、俺の腹にも蹴ったのか!)


 レイジは腹を押さえながら、月夜から距離を取る。

 回復系スキルで腹部を治していると、月夜は身体に巻き付いた草を引き千切る。

 そして〔重力操作〕による攻撃を強引に弾き飛ばした。

 

「チートかよ」


 苦笑するレイジの額から一筋の汗が流れる。

 完全神装の魔導騎士が予想以上に強く、レイジは追い詰められていた。

 アニメの光闇レイジなら「面倒だからやめる」と言って、ここで棄権するだろう。

 しかし今の光闇レイジは諦めるつもりはない。

 あるのは、強い勝利の執念だ。

 深紅の瞳を怪しく輝かせて、レイジは駆け出した。

 そして彼はスキルを発動した。


「スキル〔分身〕!」


 直後、彼の背後から百人のレイジ達が飛び出すように出現した。

 レイジの分身達は召喚した大鎌を握り締め、月夜に襲い掛かる。

 しかし四方八方から迫りくる百人の敵に対し、月夜は平然としていた。

 

「これぐらいであたし達に勝てるとでも?」

『思っているのかな?』


 月夜と岩鉄の静かで呆れたような声音が響いた。


「神聖属性を右拳と両足に付与」


 拳を構えた月夜がそう言うと、彼女の右拳と両足が銀色に輝いた。

 それを見てレイジは驚愕する。


「魔導格闘術!?しかも神聖属性を!」


 魔導格闘術。それは肉体の一部に属性を付与して攻撃力を上げる戦闘術。

 強力だが扱うのが難しく、使える者は少ない。

 つまり、月夜は魔導格闘術が使えるほどの強者だということだ。

 しかもそれだけではない。


(まずいな。俺のジャケットでは神聖属性を防ぐことはできないのに!)


 レイジが着用しているジャケット型魔道具は火、水、土、風、光、闇、雷、無の属性攻撃を無効化する。

 しかし残りの神聖属性と邪神属性の攻撃は無効化することが出来ない。

 どうするかとレイジが考えていた時、月夜は動いた。


「魔導格闘術—――連拳砲(れんけんほう)!」


 技名を告げた月夜は怒涛の連打を放った。

 一発一発の拳撃が砲弾の如く威力を持ち、次々とレイジの分身達を消し飛ばす。

 このままではマズイと思ったレイジはスキル〔雷獄〕と〔煉獄〕を発動。

 左手から激しい稲妻を生み出し、右手から激しく燃える炎を生み出した。

 そして稲妻と炎を合体させ、丸く圧縮。

 サッカーボールぐらいまで圧縮させた雷炎の球を、レイジは力強く投擲した。

 雷撃と爆撃が合わさった魔球が月夜に向かって高速で接近する。


(よし、月夜さんは分身の相手をしているから防御も回避も不可能!これで決まる!)


 レイジは勝利を確信した。

 しかし、


「魔導格闘術—――逆花(ぎゃくばな)!」


 月夜は襲い掛かる雷炎の魔球を掴み取り、上に向かって高く跳躍。

 そして彼女は下にいるレイジの分身達に向かって、投げ飛ばした。

 稲妻と業火の球が地面に着弾。

 直後、地面が大きく揺れるほどの爆発が起こった。

 激しく発生した爆炎と放電がレイジの分身達を呑み込んでいく。

 雷鳴と爆発音が鳴り響き、黒煙が舞い上がる。

 黒煙が収まった時には、レイジの分身達の姿は跡形もなく消えていた。


「俺の力を利用した!?」


 驚愕するレイジ。

 そんな彼に向かって、月夜は身体を高速回転させ、落下した。

 そして、


「魔導格闘術—――足場崩し(あしばくずし)!」


 遠心力を乗せた拳でレイジの足元を殴りつけた。

 直後、地面に大きな亀裂が走り、崩壊した。

 突然の事に思わずバランスを崩すレイジ、

 その隙を月夜は逃がさない。

 彼女はガントレットを巨大化させ、拳に魔力を集束させる。

 すると銀色に輝いていた拳がさらに輝きを増した。


「ヤバッ!」


 レイジが危険を察知した時には、もう遅かった。


「魔導格闘術—――皇覇(おうは)!」


 地面を強く踏み込んだ月夜は、身体全身を使い、拳を放った。

 彼女の渾身の一撃がレイジに直撃。

 大きな衝撃音が鳴り響き、レイジの身体が後ろに向かって吹き飛んだ。

 そして壁に激突し、土煙が舞い上がる。


「ガハッ!」


 壁にめり込んだレイジは口から血を吐き出す。

 脳が揺れるような感覚と身体全体に感じる鈍痛が彼を苦しめる。

 

(やばい…意識が……)


 意識が朦朧とするレイジは、月夜に視線を向ける。

 月夜は平然と立っており、傷一つ付いていない。

 いくらラスボスとは言え、今のレイジが覚醒者に勝つのは無理があった。

 

(チク…ショウ……)


 レイジがゆっくりと瞼を閉じようとした。

 その時、


「レイジくん~!がんばれ~!」


 一人の幼い少女の声がレイジの耳に聞こえた。

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