死神VS死神3
「見せてやる……光闇レイジにはない、今の俺の力を」
アニメのラスボス、光闇レイジでは手に入れることができなかったスキルを。
今の俺だからこそ使える力を……見せてやる!
「ディザスタースキル〔悪魔王〕」
次の瞬間、レイジの身体から黒い稲妻が発生した。
稲妻を放つ彼の身体は漆黒の外殻に覆われ、背中から六枚の黒い翼が生える。
頭から大きな渦巻き状の角を生やし、銀色の髪は黒く染まっていく。
まるで悪魔の如く恐ろしい姿になったレイジは口から煙を漏らす。
「……なんだ、その姿は!」
ケリーは手を震わせる。
今、彼女は恐怖を感じていた。
その恐怖を何とか抑えながら、ケリーはレイジを睨む。
「ケリー。一つだけ予言してやる」
「予言?」
「お前は俺に……敗北する」
「ふざけるな!」
ケリーはレイジに襲い掛かる。
彼女の攻撃が直撃する直前……レイジは指をパチンと鳴らした。
すると―――レイジの目の前にいたもう一人のレイジは、少女の姿へと変わった。
茶色の髪にそばかす。
十六歳ぐらいの少女になった……いや、元の姿に戻ったケリーは驚愕する。
「これは!?」
「ディザスタースキル〔悪魔王〕はどんな奴だろうと弱体化させ、魔法やスキルを封じる」
「!!そんなスキル……聞いたことないわよ!」
「当然だ。これは……俺が作ったオリジナルスキルだ」
「!!」
「ケリー……これで〔魔病〕の効果は消えた」
「そんな……なんで、なんで最初からそのスキルを使わなかったのよ!」
「〔悪魔王〕を使わなかったのは先に戦艦や戦闘機をなんとかしたかったからだ」
確かにディザスタースキル〔悪魔王〕を使えば、レイジはケリーを無力化できたかもしれない。
だけど〔悪魔王〕を使ってケリーを無力化しても、戦艦や戦闘機を残ってしまう。
無力化されたケリーは戦艦や戦闘機で、竜人族の国を滅ぼす可能性があった。
だからレイジは戦艦や戦闘機を消すことを優先したのだ。
「先に俺を倒すのではなく、竜人族の国を滅ぼすべきだったな。そしたらせっかく作った戦闘機や戦艦が無駄になることもなかった」
「この……!」
「ケリー……お前の負けだ」
レイジの言葉を聞いて、ケリーはガリッと歯噛みする。
「負けてないわよ。……負けるわけにはいかないのよ」
「ケリー」
「ジャンヌを……私の親友を殺したあんたを……許すわけにはいかないのよ」
「そうか……なら付き合ってやる。全力で俺を殺しに来い」
「上等よ!ローラレイ!」
ケリーが叫ぶと、彼女の隣に一人の女神が現れた。
その女神は紅い髪を伸ばしており、真っ赤な鎧を纏っている。
「いくわよ、ローラレイ。完全神装!」
ローラレイは赤い粒子と化してケリーの胸に吸い込まれた。
直後、ケリーの身体が炎の鎧に覆われ、彼女の右手から赤い細剣が現れる。
「なるほど……確かに完全神装までは〔悪魔王〕の力で封じることはできない。だが……弱体化しているうえに、スキルも魔法も使えないお前が俺に勝てるとでも?」
レイジは漆黒の大剣を生み出し、構える。
その大剣は禍々しい黒いオーラを纏っていた。
「勝ってみせる」
「……そうかよ」
レイジは漆黒の翼を羽ばたかせて、ケリーに接近。
ケリーも背中から炎を噴射し、レイジに突撃。
お互い距離を詰め、武器を振るう。
大剣と細剣が激突し、大きな衝撃波が発生。
金属音が鳴り響き、火花が飛び散る。
「オラ!」
「ハァ!」
レイジとケリーは空中を高速で飛び、何度もぶつかり合う。
激しい戦闘を繰り広げる化物二人。
どちらも一歩も引かない。
「あなたは許さない。私の友達を殺した、あなたを!」
炎を纏わせた細剣でケリーは素早い刺突を放つ。
その刺突を肩に直撃したレイジは、痛みと熱さで顔を歪める。
ああ、そうだよな。
許せないよな。俺のことは。
ケリーにとってジャンヌは大切な親友だ。
千年も一緒にいた友人だ。
それを殺した俺は、とても憎いだろう。
「この命に代えても、あなたを殺す!」
「……お前は俺を憎み続けろ。その憎しみを」
レイジは肩に刺さった細剣を片手で握り壊す。
「俺は背負う。そして……お前を殺す」
レイジは大剣を上段に構え、力強く振り下ろす。
重い斬撃は彼女の身体を斬り裂く。
赤い血を傷口から噴き出しながら、ケリーは悔しそうに顔を歪めた。
◁◆◇◆◇◆◇◆▷
レイジの大剣に斬られたケリーは、地面に落下した。
ごめんなさい。ジャンヌ。
あなたの仇……とれなかった。
悔しいわ……。
青い空に手を伸ばしながら、ケリーは涙を流す。
「ねぇジャンヌ。知ってた?私……あなたのことを愛していたの。あなたと……恋人になりたかったの」
ジャンヌに……愛していると言えなかったことを今でも後悔している。
「ジャンヌ。次……生まれ変わってもしまたあなたに会えたら……また友達になりたい。そして……」
ジャンヌに……愛する人に言えなかったことを。
隠していた想いを……ケリーは告げる。
「大好きって伝えるわ」
ケリーはゆっくりと目を閉じ、己の肉体を炎で燃やした。
炎は彼女の身体を燃やし尽くし、灰にする。
◁◆◇◆◇◆◇◆▷
自分の身体を跡形もなく燃やし尽くし、自害したケリーの最後をレイジは、ただ……見届けた。
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