偽光闇レイジ
「よぉ…俺。会いたかったぜ」
凶悪な笑みを浮かべている銀髪の死神―――光闇レイジ。
彼を見て、レイジ・ペンドラゴンは混乱した。
なんで……なんで俺がもう一人いる!?
ありえない。
俺はここにいる。
なのになんで目の前に俺がいるんだ。
しかも奴はアニメ『クイーン・オブ・クイーン』に出てくる光闇レイジにそっくり。
そっくり?アニメの光闇レイジに?
そうか……そういうことか。
「お前……邪神教教皇ジャンヌ・ダルクの最初の配下―――ケリー・マティリアルだな」
レイジの言葉を聞いて、もう一人のレイジーーーケリーはパチパチと拍手した。
「ご名答。俺はジャンヌの最初の配下にして、友。ケリーだ」
ケリー・マティリアル。
邪神教教皇ジャンヌ・ダルクの親友であり、最初の配下。
ジャンヌと共に多くの命を奪った悪人。
邪神教の中で二番目に強い化物だ。
「その姿……まさかあのスキルを使ったのか?」
「そうさ。俺のエクストラスキル〔映シ鏡〕でお前が最も恐れる姿になってやったぜ」
エクストラスキル〔映シ鏡〕。
対象が最も恐れる存在に姿を変える変身型スキル。
そして姿や声だけをコピーするだけでなく、能力や思考、人格をも完全にコピーする。
「なるほど……確かに俺が恐れている存在だ」
レイジが最も恐れているものはなにか?
そんなの決まっている。
本当の意味で最凶の死神になった自分。
つまりアニメ『クイーン・オブ・クイーン』のラスボス光闇レイジだ。
ああ、最悪だ。
本当に最悪だよ。
まさかコピーとはいえ、自分自身と戦うなんて。
しかも相手は完全神装している。
勝てる自信がねぇな。
「俺―――私の友を、殺したお前は絶対に許さない。だから私はお前が最も恐れる存在になった。まさか自分……いや、別の自分に恐れていたとはな」
クククと笑う偽光闇レイジーーーケリー。
そんなケリーを睨みながら、レイジは問う。
「お前が俺の姿になった理由は分かった。だけどこの戦艦と戦闘機はなんだ!?いつ完成させた」
「昨日、完成させた」
「ありえない……これを作るのには時間や材料が!」
「ああ、お前の言う通りだレイジ・ペンドラゴン。だがお前の力を使えば可能だ」
「!!」
ケリーの言葉を聞いて、レイジは言葉を失う。
「スキル〔神金属生成〕で材料を揃え、スキル〔洗脳〕で多くの技術者を操り、最短で作らせた。ついでにスキル〔技術向上〕で技術者を強化した。おかげで未完成だったこの戦艦と戦闘機を完成させることができた」
クソ、そういうことか。
確かに全属性適正LV10の俺がスキルをいくつも使えば、戦艦や戦闘機など数日で作れる。
自分の万能さを呪いたくなるわ。
俺の力のせいで十数年後に出てくる戦艦と戦闘機を、こんなに早く登場させてしまった。
「お前は私が殺す。だがただ殺すのはあじけない。故にまずはこの国を滅ぼして、お前を絶望させる」
「……自分がなにを言っているか分かっているのか?この国は竜人族の国だ。確かにニャルラトホテプを完成させたのは驚いた。だがこのオモチャ如きではこの国は滅びない」
竜人族は戦闘種族だ。
力を合わせれば千機の戦闘機など簡単に破壊できる。
そして今、竜人族の国には《九剣の戦乙女》が四人いるのだ。
しかも最高位のめがみであるゼウス達も。
滅ぼされることはない。
しかし、ケリーは余裕の笑みを浮かべていた。
「そうだな。だが……これならどうだ。ユニークスキル〔魔病〕」
「!やめろ!」
レイジは止めようとしたが、もう遅かった。
◁◆◇◆◇◆◇◆▷
「いったい……あれはなんだ?」
アーサーは空に浮かぶ戦艦と無数の戦闘機を見て、驚愕していた。
だが驚いたのは一瞬。
すぐに冷静になり、配下に命令しようとした。
「衛兵!今すぐ―――」
アーサーが命令しようとした。
その時、彼女の胸に激痛が走る。
「ぐあっ!なんだ……これ」
あまりの痛みに耐えきれず、アーサーは床に倒れ、口から大量の血を吐く。
アーサーだけでなく、絶理や神楽、サルマールも血を吐きながら、床に倒れていた。
「こ……これは……」
苦しさのあまりうまく呼吸できず、アーサーは血を吐き続けた。
◁◆◇◆◇◆◇◆▷
「これで竜人族の人々は動けない」
「お前!」
レイジは額に青筋を浮かべて、ケリーを睨む。
「ユニークスキル〔魔病〕。人だろうと女神だろうと、どんな生物でもじわじわと苦しませ、殺す最悪のスキル。いいスキルを持っているな、レイジ」
「今すぐそのスキルを解除しろ」
「はぁ?するわけないだろう!!このスキルでこの国の奴らを苦しませ、殺し……最後には国を滅ぼす!最高だろう?」
「そうかよ……なら」
レイジはスキルの力で戦闘服に一瞬で着替え、肉体を成長させる。
大人になったレイジは殺気を放ちながらもう一人の自分―――光闇レイジを睨む。
「ぶっ殺す!」
偽物の光闇レイジーーーケリーは凶悪な笑みを浮かべて、赤い瞳を怪しく輝かせる。
「やってみろよ、《白銀の死神騎士》!」
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