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婚約

「正式に……私の娘と婚約してほしい~」


 神楽の言葉を聞いて、レイジは黙り込む。


(俺と神楽耶が婚約……それはファンとして嬉しいけど)


 アニメ『クイーン・オブ・クイーン』が好きなレイジにとって、アニメキャラクターと付き合えるのは嬉しい事だった。

 だが本来、レイジは神楽耶を殺す存在。

 本当に婚約していいのか……分からなかった。


「なんで俺と婚約させようとしているんですか?」

「娘を守ってくれて、幸せにできると思ったから~」

「無理ですよ。俺には。だって俺は……」


 ラスボスだから。

 そう言いかけたがレイジは黙った。

 そんな彼に神楽は……頭を下げた。


「神楽さん?」

「お願いレイジくん~。もう……君しかいないの~。神楽耶を任せられるのは~」

「……俺よりいい男はいますよ」

「レイジくん以上にいい男はいないよ~。それに〈九剣の戦乙女〉とその家族は命の危険が高いの~」

「まぁ……確かに」


〈九剣の戦乙女〉は英雄だ。

 多くの命を救い、多くの命を守ってきている。

 だから多くの人に感謝されている。

 だが同時に恨まれて、憎まれているのだ。


「娘を任せられるのは強く……優しい男じゃないとだめなの~」

「……神楽耶ちゃんの気持ちはどうするんですか」

「君も知ってるでしょ~。神楽耶の気持ち~」

「……今だけですよ」

「いや~……あれはずっと続くよ~」

「何を根拠に」

「女の勘~」

「女の勘って……はぁ」


 レイジは一度ため息を吐き、頭をガリガリと掻く。


「…神楽耶ちゃんに他の好きな男ができたらそっちを優先してください」

「それって~……」

「……婚約はしても良いです」


 レイジの言葉を聞いて、神楽は微笑んだ。


「ありがとう~……これからよろしくね~」

「はい…まぁ…よろしくお願いします」


 こうしてレイジは神楽耶と婚約した。

 その時、 


「ちょっと待って。そういうことならウチのミルマールも貰ってもらうぞ」


 サルマールがとんでもないことを口にした」


「はぁ!?ちょ、なに言って」

「私だってレイジに自分の娘を結婚させようとしていたんだ。抜け駆けは許さん」

「いや、でも」

「それに竜人族は一夫多妻制を許している」

「え?」


 慌ててレイジはアーサーに視線を向ける。


「サルマールが言ったことは本当だよ。竜人族の男は少ないから一夫多妻を許してるんだ」


 アーサーの言葉を聞いてレイジは呆然とした。

 つまりレイジは〈九剣の戦乙女〉の娘二人と婚約するということ。


「俺に二股しろってことですか!?」

「そういうことだ。ミルマールはお前のことを気に入っているし……まぁ貰ってくれ」

「もらってくれって……ええぇ」

「なんだ?私の娘が不満なのか!?」


 サルマールは鋭い目つきでレイジを睨む。

 レイジは横に高速で振るう。


「じゃあ……決まりだ」

「……」


 まさかと思いながらレイジは絶理に視線を向ける。


「そんな顔をしなくても久留巳とは結婚させねぇよ」

「そ、そうなんですか?」

「ああ。どうやらあいつには好きな男がいるみたいだからな。好きな奴がいるのに無理矢理結婚はさせられねぇ」


 その言葉を聞いてレイジはホッと安堵する。

 そんな彼に絶理は「ただし」と告げた。


「別のお願いを聞いてもらう」

「別のお願い?」

「ああ。お願いは二つ……一つは俺様の学園にこれからも通ってもらう。この国にも転移門があるからそれで来てほしい」

「いや~……それは俺よりアーサーお母様に聞いた方が」


 レイジはチラッとアーサーに視線を向ける。


「いいんじゃない。この国にも魔導騎士を育てる学園はあるけど【陸王学園】のほうがいいと思うし。それに」

「それに?」

「今、【陸王学園】の近くにはレイジくんの家がある。学校が終わった後、少しだけ寄ってきていいよ」

「!!ありがとう、アーサーお母様!」


 レイジは心から感謝した。

 少しだけだが学校が終わった後、家族に会える。

 そう思うと、レイジは嬉しかった。


「で、もう一つのお願いは……俺様のもう一人の娘と婚約してもらう」

「……ん?」


 絶理の言葉を聞いて、レイジは首を傾げた。


「すいません。学園長の娘ってもう一人いましたっけ?」


 レイジの記憶では皇帝絶理の娘は一人だけだったはず。

 絶理に娘が二人いるとは聞いたことなかった。


「ああ、いるぞ。久留巳ほどではないが才能がある自慢の娘が」

「名前を聞いても?」

「名前は―――」



(あかね)だ」

「—――」


 その名を聞いた時、レイジは全身から嫌な汗を流した。


 茜……その名はよく使われる名前ではあるが、アニメ『クイーン・オブ・クイーン』では危険なキャラクターにも使われている名前でもある。


「すみません。その茜って子の額に炎の形をした痣はありませんか?」


 違ってくれ。そう願いながらレイジは絶理に問う。

 しかし、


「なぜお前がそれを知っている?」

「……」


 レイジは眩暈を起こして、倒れそうになった。


(まさか……学園長の娘があの茜なんて)


 茜。それはアニメ『クイーン・オブ・クイーン』の中で世界最狂のキャラクターだ。

 読んでくれてありがとうございます。

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