《九剣の戦乙女》
レイジがメロラに強くなる方法を教えようとしていた頃、アーサーは書類仕事をしていた。
何百枚という書類にサインをしていた時、
「アーサー王。お客様がおいでです」
王専用の執務室に一人のメイドがやってきた。
「今は忙しい。帰ってもらって」
「いえ、それが……《九剣の戦乙女》の方たちなのですが」
「……」
メイドの言葉を聞いて、アーサーはペンを持っていた手を止める。
「誰?」
「覇道神楽様、サルマール・カイザー様、皇帝絶理様です」
「応接室に案内して」
アーサーが応接室に向かうと、そこには怒りのオーラを放つ三人がいた。
「あら~アーサー~久しぶり~」
「随分すごいことをしてくれたな」
「どうしてくれるんだ……この野郎」
笑っているけど目が笑っていない魔導騎士協会会長―――覇道神楽。
鋭い目つきでアーサーを睨む最強のマフィアーーーサルマール・カイザー。
そして額に青筋を浮かべている魔導騎士育成学校【陸王学園】学園長―――皇帝絶理。
そしてそれぞれ三人の契約女神、雪風、カッター、クリスもいる。
「そろそろ来ると思ってたよ」
そう言ってアーサーはソファーに座り、三人と対面する。
「どういうことかな~なんでレイジくんを自分の子にしちゃうのかな~?」
「テレビを見たなら分かるだろう神楽。あの子はウロボロス兄様の子だ。放置するわけにはいかない」
「それだけ~?」
「もちろんそれだけじゃないよ。レイジくんの力は異常だ。竜人族として見て見ぬふりはできない。そして……神楽、君の思い通りにさせない」
鋭い目つきでアーサーは神楽を睨む。
「なんのことかな~」
「惚けないでよ。レイジくんの戦いを世界中に放送したのは……レイジくんを抑止力にするためだよね?」
「……」
神楽は笑みを消し、黙り込む。
「レイジは強力な力を持っている。その力を使って、犯罪や魔獣の被害を抑えようと考えた。レイジの力を世界中に放送することで犯罪者は脅威を感じ、一般人の安全が向上。そしてレイジと自分の娘を結婚させることで、神楽の跡を継いだ神楽耶は強力な影響力と発言力などを持つ。そうでしょ?」
レイジは異常なほど強いがため、多くの人に恐怖されている。
だが同時に多くの命が救われ、平和になってきていた。
とくに悪人や邪神教の者達を殺しまくったことで、レイジは裏世界で恐れられ、犯罪率が下がった。
「……そうだよ~。私はレイジくんを世界の抑止力のために使おうと思ってた~」
「やっぱり」
「でもそれだけじゃないの~。レイジくんを娘とくっつけさせようとしたのは娘のためでもあるの~」
「どういう意味?」
「レイジくんなら娘を守ってくれる~。そう思ったからくっつけさせようと思ったの~。知ってるでしょ~。私達や私達の娘に懸賞金がかかってるの~」
《九剣の戦乙女》は世界の英雄。
魔獣を倒し、犯罪者を裁き、多くの人を救った。
そのおかげで多くの人々に尊敬され、感謝された。
だが同時に……多くの者から嫉妬され、恨まれている。
裏世界では《九剣の戦乙女》やその家族に懸賞金をかけたり、暗殺者を送ったりしている。
だからこそレイジの存在は必要だった。
レイジは裏世界の者達にも恐れられている。
そんな彼と娘を結婚させれば、命の安全は保障される。
「レイジくんはとても優しい~。誰かのために助ける善人だよ~。異常なほどにね~」
レイジは強力な力を持っているが、優しい心を持っている。
大切な誰かのためなら自分の命を捨てることもできる。
異常なぐらい善人。気持ち悪いくらい優しい。
だからこそ神楽は自分の娘と結婚させようとしているのだ。
「僕は許さないよ。そんなこと」
「お兄さんの子だからなのは分かるけど~……こればっかりは譲れないかな~」
神楽はそう言うと、サルマールと絶理は立ち上がる。
「それは」
「俺様も同じだ」
三人の友を見て、アーサーは、
「そうか……なら僕に勝ってみろ。そしたらレイジくんと婚約するなり好きにするといい」
瞳を光らせて、鎧型魔装を纏った。
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