レイジ・ペンドラゴン
「ありがとうルルア。もう大丈夫」
泣き止むことができたレイジはルルアから離れる。
「本当に…大丈夫ですか?」
「ああ……しかしこれからどうしようか」
アーサーに敗北したレイジは竜人族の王族として生きていかなければならない。
「俺はなにをすればいいんだ?」
「君には竜人族の王族としての知識を学んでもらう」
「!」
声が聞こえた方向に視線を向けると、そこにはアーサーがいた。
アーサーの身体にはあちこち包帯が巻かれている。
「アーサー王」
「レイジには王族として必要なものを学んでもらう。それと……僕のことはアーサーお母様と呼んで」
「分かった……アーサーお母様」
「よろしい。それと……」
「?」
「すまなかった」
アーサーはレイジに頭を下げた。
「理由はどうあれ……君を家族から引き離した。本当にすまない」
「……悪いと思っているなら帰してくれ」
「それは……」
「それが無理ならせめて年に一度、家族のところに帰りたい」
「……分かった。年に一度、一週間は家族のもとに帰っていい」
「ありがとう……アーサーお母様」
「今日はゆっくりと寝て。また明日」
そう言ってアーサーは部屋から出て行った。
レイジはフゥと息を吐き、天井を見つめる。
「レイジ・ペンドラゴンか……平穏に生きようとしただけなのにまさかこんなことになるとはな」
アニメの世界に転生し、ラスボスにならないように努力をした結果、竜人族の王族になってしまった。
アニメでは語られなかったレイジの秘密が明かされ続けた。
「……まさかこれ以上のことはない…よな」
◁◆◇◆◇◆◇◆▷
翌日、高級そうな服に着替えさせられたレイジはアーサーと共に廊下を歩いていた。
「あの……アーサーお母様。俺はこれからなにをするの?」
「竜人族の国民と世界中の人達に君が僕の息子になったことを伝えるんだよ」
「……そうか」
レイジとアーサーはある扉の前で立ち止まる。
「じゃあ行くよ」
そう言ってアーサーは扉を開けた。
レイジの視界に映ったのは、多くのカメラと記者たちの姿。
アーサーとレイジは豪華な椅子に座る。
「これから……重大な発表を行う」
アーサーはカメラや記者たちの前で堂々と告げた。
レイジを自分の養子にすること。
そしてレイジがウロボロスの息子であることを。
記者たちは驚きを隠せないでいた。
「あ…あの、質問をよろしいでしょうか?」
記者の一人が手を上げる。
「許そう」
「ありがとうございます。あの…レイジ……王子は本当にウロボロス様の子なのでしょうか?」
「本当だ。レイジの髪と残っていたウロボロスの髪でDNA検査をした結果、親子である事が判明した」
アーサーの言葉にざわつく。
「話は終わりだ」
「ま、待ってください。レイジ王子に質問を!」
「なんだ?」
「レイジ王子……あなたはこの世界をどうするつもりですか」
「なに?」
アーサーは眉間に皺をよせ、記者を睨む。
だが記者は質問し続ける。
「あなたは邪雲を消し去り、邪神教の教皇を倒しました。そんなあなたはこの世界で最も危険な存在です」
「君……言葉に気をつけろ」
「レイジ王子。あなたには世界を滅ぼすつもりがあるのではないのですか?それとも支配するつもりがあるのでは?」
「いい加減に!」
アーサーが怒鳴り声を上げようとした。
だがそれよりも早くレイジは質問に答える。
「俺は……世界を支配しようだの、滅ぼそうとするつもりはありません」
「ではあなたの望みは?」
「俺の望みは……平穏に暮らすこと。ただそれだけです」
「……最後に質問です。あなたは……何者ですか?」
記者の質問にレイジは答える。
「死神だ」
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