最凶の死神と竜人族の王4
(これは……とてもヤバイね)
頬から一筋の汗を流しながら、アーサーは大剣を構えた。
大剣を持つ彼女の両手がカタカタと僅かに震えている。
今、アーサーは恐れていた。
魔王と化した光闇レイジに。
「さぁ……調理開始だ」
レイジは火縄銃を構え、引き金を引いた。
直後、火縄銃の銃口から極太の黒い光線が放たれた。
アーサーは大剣を振るい、光線を切り裂く。
「!〘龍神聖剣〙が!!」
光線に当たったせいか、アーサーの大剣〘龍神聖剣〙に皹が入っていた。
「だけどこれぐらい!」
アーサーは大剣に魔力と神力を流し込む。
すると大剣に走っていた皹が消えた。
「へぇ……そんなこともできるのか」
「ちょっとした裏技だよ。それにしてもとんでもない威力だね」
「ディザスタースキル〘第六天魔王〙は命を奪ってきた分だけ強くなれるスキル。俺は数え切れないほどの魔獣や悪人を殺してきた。だから今の俺は―――」
レイジは一瞬でアーサーの懐に入り込み、
「あんたより強い」
右手に装備した刀を振るう。
迫りくる剣撃をアーサーは大剣で防ぐ。
しかし剣劇の威力が強く、〘龍神聖剣〙に大きな皹が走り、アーサーは吹き飛ぶ。
吹き飛んだアーサーに火縄銃を向け、光線を連射。
アーサーは空を飛び、無数の光線を躱す。
「ならこいつはどうだ」
レイジは火縄銃に大量の神力と魔力を流し込み、引き金を引いた。
銃口から龍の形をした黒い光線が放たれ、アーサーに襲い掛かる。
アーサーは翼を羽ばたかせて、躱す。
しかし龍の形をした光線は曲がり、アーサーに襲い掛かる。
「くっ!」
アーサーは飛翔して逃げるが、龍の光線は追いかける。
そして龍の光線はアーサーに直撃。
大きな爆発が起こり、アーサーは地面に落ちる。
「終わりだな」
アーサーはボロボロだった。
鎧型魔装と〘龍神聖剣〙は皹だらけ。
しかも頭から血が流れている。
「これで俺の勝ち―――」
「待って」
そう言ってアーサーはゆっくりと立ち上がり、大剣を構える。
「まだやるのか?アーサー王」
「この勝負は……絶対に負けられないの」
アーサーの瞳には強い意志が宿っていた。
その瞳を見てレイジは、
「……いいだろう。こっから先は手加減なしだ」
なにもないところから無数の火縄銃を召喚する。
「死んでも恨むなよ」
「もちろん」
レイジは左手に持つ火縄銃の引き金を引いた。
直後、無数の火縄銃から漆黒の光線が一斉に放たれた。
迫りくる光線の雨の中をアーサーは突撃。
大剣で光線を防ぎ、受け流し、そして紙一重で躱す。
レイジとの距離を一気に縮め、アーサーは大剣を振るう。
重い斬撃は火縄銃を真っ二つにする。
「この程度!」
レイジは刀を振るい、アーサーを斬る。
斬撃を受けたアーサーの鎧に入っていた皹が大きくなる。
しかしアーサーは止まらない。
「ハアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「オラアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
アーサーの大剣とレイジの刀が何度もぶつかり合う。
ぶつかる度に火花が飛び散り、衝撃波が発生する。
竜人族の王と魔王は激しく戦う。
「これで決める!」
アーサーは全ての魔力と神力を大剣型魔道具〘龍神聖剣〙に流し込む。
皹だらけの聖剣は黄金に輝き出す。
「ならこっちもこの一撃に全てを賭ける!」
レイジは無限の魔力と神力を刀に流し込む。
刀は黒く、そして禍々しく燃え上がる。
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「終わりだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
二人は叫びながら、己の武器を振るう。
黄金に輝く聖剣と黒炎を纏った刀が激しくぶつかった。
その次の瞬間、黄金と黒の爆発が起きた。
闘技場は激しく揺れ、煙が発生する。
やがて爆発と揺れが収まり、煙が晴れていく。
闘技場に立っていたのは――――、
光闇レイジだった。
アーサーは地面に片膝をつけている。
〘龍神聖剣〙は砕け散っており、鎧を纏っていない。
「どうやら……勝負は……ついたみたいだね」
「ああ。アーサー王。……この勝負」
「俺の負…け…だ……」
レイジは地面に倒れ……気を失う。
魔獣の女神も邪神教の教皇も殺した死神は、竜人族の王に……敗北した。
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