最凶の死神と最強の竜人族2
闘技場で激しく戦うレイジとアーサー。
そんな二人を観客席から見ていたメロラは目を輝かせていた。
「すごいすごい!お母様がおされている!」
物心つくときから母の戦う姿を見ていたメロラには分かる。
今、レイジが力や速度で勝っていると。
そしてアーサーが負けそうになっていると。
アーサーはどんな相手だろうと、一方的に勝ち続けていた。
だがもしかしたらレイジが勝つかもしれない。
そう思うとメロラは胸が高鳴るのを感じた。
「いつかボクも……レイジみたいに!」
竜人族の王にして、最の魔導騎士であるアーサーを追い詰めるレイジに、メロラは憧れた。
◁◆◇◆◇◆◇◆▷
同じく闘技場でレイジとアーサーの戦いを見ていた女神五人は……難しい顔をしていた。
「これは……厳しいかもしれませんね」
戦いを見ていたルルアはそう呟いた。
確かにレイジはアーサーを押している。
スキルで己を強化し、反撃を許さないほどの攻撃を繰り出している。
レイジが優勢……ではあったが、攻め切れていなかった。
その理由は、
「アーサー王の防御が完璧すぎますね」
アーサーの防御技術が異常なほど高かった。
レイジの攻撃は防げるものではない。
だがアーサーは完璧に防いでみせていた。
「このままじゃあ……マスターが」
◁◆◇◆◇◆◇◆▷
(クソ……今は俺が押してるけど……強すぎるだろ、この王様!)
紅色の炎を纏わせた双剣で連撃を繰り出すレイジは舌打ちする。
スキル〔風雅独走〕で速さを強化し、ユニークスキル〔不動明王〕で力と武器を強化し、オーバースキル〔紅蓮鬼神化〕で戦闘技術と反射神経を強化している。
そのおかげでアーサーには反撃を許していない。
しかし一撃もアーサーの身体に当たっていなかった。
(だめだ……このままじゃあ埒が明かない。なら!)
レイジは双剣を手放し、アーサーの大剣に手を触れる。
そして、
「スキル〔神魔撃〕!」
スキルを発動した。
直後、神力と魔力が込められた衝撃波がレイジの手から放たれた。
衝撃波を受けた大剣は吹き飛び、空中をクルクルと回転し、地面に突き刺さる。
「これは驚いたね」
両手をプルプルと震わせるアーサー。
彼女に勝つためにレイジは攻める。
「スキル〔妖刀奈落〕!」
レイジは黒と紫に輝く刀をスキルで生み出し、横に一閃。
鋭い斬撃がアーサーを襲う。
しかし攻撃を受けるよりも速くアーサーは躱す。
「そんな攻撃」
「躱すと思った!」
刹那、無数の黒と紫の斬撃がなにもないところから出現。
無数の斬撃はアーサーに直撃し、爆発が発生する。
「ぐっ!」
顔を歪めて、片膝を地面に付けるアーサー。
「隙あり!」
レイジは刀を振り下ろす。
死神の一撃はアーサーに直撃……は、しなかった。
「なに!?」
いつの間にかアーサーの姿は消えていた。
「どこ行った!」
「ここだよ」
「!!」
背後から聞こえたアーサーの声。
レイジは慌てて振り返った。
その直後、黄金の大剣がレイジの視界に飛び込んできた。
迫りくる剣撃をレイジは刀で防ぐ。
しかしあまりにも威力が高すぎるせいで、刀は甲高い音を立てて砕け散った。
「チートかよ!」
レイジは後ろに下がり、距離を取る。
「すごいね……ここまでやるとは思わなかったよ」
そう言ってアーサーは大剣型魔道具〘龍神聖剣〙を地面に突き刺す。
「だから……奥の手を使わせてもらうね」
「奥の手?まさか!」
アーサーがなにしようとしているか理解したレイジは双剣〘陽月〙を拾い、駆け出す。
彼女の懐に入ったレイジは双剣を振るおうとした。
だがそれよりも早く……アーサーは口を動かす。
「エクストラスキル〔竜神化〕」
読んでくれてありがとうございます。
気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。