プロローグ
「なにを言っているんだ……あんた」
アーサー王の言葉の意味が分からず、レイジは混乱していた。
竜人族の国に連れてこられたかと思えば、「僕の息子になれ」と言ってきた。
理解ができず、レイジは問う。
「意味が分からない……なんであなたの息子に」
「混乱するのも分かるよ。でも……冗談じゃないから」
アーサーは真剣だった。
嘘を言っている顔ではない。
「どうしてあなたの息子にならなくちゃいけないんだ」
「理由は三つある。まず一つ目は君が強すぎるからだ」
「強すぎるって……それは確かに俺は化物ですけど」
「君はまだ自分がどんなに凄い人なのか分かっていない。この世界を覆っていた邪雲を消し、あの邪神教の教皇を倒したんだよ。それがどれだけすごいことか……分かってる?」
「そ……それは」
「そんなすごい君を……放置するわけにはいかない。竜人族は強すぎる力を持った者を監視し、管理する役目があるの。だから君をここに連れてきた」
アーサーの言っていることは正しかった。
世界を覆っていた邪雲を消し、邪神教の教皇ジャンヌ・ダルクを倒したレイジは……危険かつ異常な存在。
そんな危険人物を野放しにする方がおかしい。
「確かに……あなたが言っていることは少しは理解できる。でもだからって」
「理由二つ目……君がドラゴンの王になったから」
「ドラゴンの……王?」
「少し……竜人族の話をしよう」
アーサーは紅茶を飲みながら語り始める。竜人族のことを。
「竜人族は亜人の中で高い戦闘能力を持ち、魔力だけでなく神力も生み出せる。だが……最初からそういう種族じゃなかったの」
「どういう意味だ?」
「私達はもともと……蜥蜴人という種族で戦闘能力はそこまで高くなかった。どちらかというと農業が得意な亜人だった。そんな私達のところに……一体のドラゴンがやってきた」
「ドラゴン?」
「そのドラゴンは怪我をしていた。私達の先祖はそのドラゴンを治し、食料を分け与えた。命を助けられたドラゴンはお礼に蜥蜴人全員に己の血を与えた。その血を飲んだ蜥蜴人は竜人族へと進化した」
「そんな……初めて知ったぞ、それ!?」
アニメ『クイーン・オブ・クイーン』を見たレイジでも知らない竜人族の話。
それを聞いてレイジは驚きを隠せなかった。
「ここからが重要。助けたドラゴンはただのドラゴンじゃなかったの。そのドラゴンはドラゴンの王―――竜王ファフニールだったの」
「ファフニール……」
「ファフニールは竜人族の姫と結婚し、子供を産み、この国を繫栄させた。そして……ファフニールの子孫がこの僕と僕の娘と……君だ」
「…………はぁ?」
言っている意味がレイジには分からなかった。
「俺が……ファフニールの子孫?え?え?」
「この話はあとでする。今、話したいのはファフニールの子孫のこと。ファフニールの子孫は絶大な力を持って生まれる。女だったら高い戦闘能力、男だったら膨大な魔力と神力を。そして男はごく稀に……ファフニールと同じ力を持って生まれる時があるの」
「……どういう意味だ?」
「ファフニールは無限の魔力と神力を持ち、ドラゴンを統率……つまり配下にすることができるの」
「……それって」
アーサーはコクリと頷き、告げる。
「今の君はファフニールと同じ。ドラゴンの王……竜王なんだよ」
「……ちょっと待ってくれよ。竜王?俺が?なんで俺がそんなものになっている!意味わかんないぞ!ただでさえ化物なのにこれ以上化物になったら、俺は困る!」
「君は……戦いすぎたんだ」
「戦い……すぎた?」
「本当だったらファフニールの力は君の中で永遠に眠り続けるはずだった。だけど君が強者と戦い続けたことで、ファフニールの力が目覚めたんだ」
「そもそもなんでそんな力が俺の中にあるんだよ!というかなんで俺にファフニールの血が流れている!」
「……それが君を僕の息子にする三つ目の理由」
アーサーはまっすぐレイジの目を見て、口を動かす。
「君は……僕の兄―――ウロボロスの息子なんだ」
「—――」
レイジは言葉を失った。
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