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死神は竜となる

 ジャンヌ・ダルクを倒した後、レイジはとある無人島にやってきていた。

 その無人島には綺麗な花がいくつも咲いている。

 そんな無人島に建てられた白い美しい墓の前に、レイジと五人の女神は立っていた。


「……」


 ジャンヌとクトゥルフの墓を……悲しそうな顔で見ていたレイジは、ポツリと呟く。


「……これでよかったんだろうか」

「マスター」

「もっと他に方法はなかったんだろうか」


 レイジはジャンヌを悪とは思っていない。

 彼女は大切なものを奪われ、人々を……世界を憎んだ。


 憎しみも…復讐心も……人の大切な心だ。


 もし弟を失わなければ、ジャンヌは世界最恐の邪神になることはなかっただろう。


「……俺は…ジャンヌを救いたかった」

「……確かに救えたかもしれません。ですが……マスターがジャンヌを殺さなければ多くの人が死んでました」

「ルルア……」


 ルルアの言う通り、レイジがジャンヌを殺さなければ多くの命が奪われていただろう。

 アニメ『クイーン・オブ・クイーン』では、主人公達を含めた十万人の魔導騎士達がジャンヌと戦った。

 だが主人公たち以外の魔導騎士達はジャンヌに殺された。


「マスターは…救ったんです。多くの命を」

「……ありがとう、ルルア」


 レイジは微笑みながら、感謝した。


「さて帰ろうか…と言いたいところなんだが、その前に……隠れてないで姿を見せろ」


 レイジはなにもないところを睨みながらそう言った。

 すると何もないところから燕尾服を着た女性と女神が現れた。


「あなた達は……神楽会長の部下のマールと女神マキナ。なぜここに?」

「お答えできません」


 レイジは双剣型魔道具〘陽月〙を召喚し、マールとマキナの首に突き付ける。


「もう一度、聞く。なぜここに?」


 レイジがもう一度尋ねると、マールが口を動かす。


「神楽会長にあなたの戦いを撮影するように言われました」

「撮影……そうか。あの時……魔獣大災害進行の時もあなた達が撮影していたのか」

「はい」

「ってことは今回の戦いも」

「はい。既に世界中に流れています」


 チッとレイジは舌打ちする。

 まさかジャンヌとの戦闘を撮影されているとは彼は思わなかった。


「神楽会長の目的はなんだ?俺になにをさせたい?」

「……分かりません」

「ふざけているのか?」

「本当です。本当に知りません」

「……クソ」


 マールとマキナから双剣を離したレイジは悪態を吐く。


「まぁいい。神楽会長がなにを望もうが……俺はもう戦えなくなる」

「それは……どういう意味です?」

「……エクストラスキル〔絶対封印の鍵〕」


 レイジはスキルを発動し、右手に虹色に輝く鍵を生み出す。

 そして……彼は自分の胸に鍵を突き刺す。

 それを見て、マール達だけでなくルルア達も驚く。


「いったいなにを!」

「俺は……自分の力を封印してただの人として生きる」


 もう死神の力は……必要ない。

 レイジはそう思ったのだ。


(きっと真矢さんが言っていたのはこのことだったんだろう)


 ある事がきっかけで全ての属性適正LVが1になり、全てのスキルが使えなくなると真矢は言っていた。

 恐らくエクストラスキル〔絶対封印の鍵〕で己の力を封じるのだろう。


「悪いけど魔導騎士として生きていくのはごめんだ。俺は死神としてじゃなく……ただの人として生きる」


 そう言ってレイジは鍵を回した。


(これで……普通の人生を)


 レイジがそう思っていた時、


 パキンッ!!


 虹色の鍵が音を立てて砕け散った。


「な、なんで!?」


 レイジが驚いていたその時、突然激しい痛みが彼を襲う。


「ガアァ!?な、なんだこれ!」


 胸を押さえながら、地面に倒れるレイジ。

 苦しそうに顔を歪める彼を見て、ルルア達は慌て出す。


「マスター!?」

「ご主人様!」

「主!」

「主殿!」

「レイジ!」


 痛みはどんどん強くなっていき、レイジを苦しめる。


「ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 痛みのあまり叫び声をあげた直後、レイジの額に『∞』の紋様が浮かび上がる。

 そして彼の身体から膨大な銀色の粒子―――神力と魔力が発生。


「これって……!」

「無限の魔力と神力!?」


 無限の魔力と神力を発生させるレイジ。

 そんな彼の身体が、黒い鎧に覆われていく。

 その鎧はとても神々しく、大きな六枚の翼と長い尻尾を生やしていた。


「鎧型の魔装!?」

「しかもあの鎧はまるで……!」


 ドラゴン。

 レイジの鎧を見て、誰もがそう思った。


「ハァ…ハァ…ハァ……な、なんだったんだ…いったい」


 ようやく痛みから解放されたレイジは、地面から立ち上がる。

 

「うわっ!?なんだこの鎧!なんでこんな……ん?」


 自分が纏っている鎧に驚いている時、レイジはなにかが近づいてくるのを感じ取る。

 レイジだけではない。ルルア、ハデス、アテナ、ポセイドン、ゼウスの五人も感じ取った。


「なんだ?なにかたくさん近づいて……!?」


 レイジは空を見て、驚愕する。

 今、彼は信じられないものを見ていた。


「おいおい、なんの冗談だ!?」


 レイジの視界に映っていたのは、島に向かって飛んでくるドラゴンの大群。


 その数……千体以上。


 ドラゴンたちは島に降りると、レイジに近付く。


「敵……にしては敵意は感じないな」


 レイジが警戒していると、ドラゴンたちは頭を下げた。

 まるで王に平伏するかのように。


「え?え?」


 混乱するレイジ。

 なにがなんだか分からずでいると、ゼウスがレイジに近付く。


「レイジ。ちょっと私の目を見て」

「え?あ……ああ」


 言われた通りレイジはゼウスの目を見る。

 数秒後、


「やっぱりそうだ」

「なにか分かったのか?」

「レイジ。落ち着いて聞いて」


 ゼウスは真剣な表情で……信じられないことを告げる。


「君……ドラゴンになったみたいよ」


 レイジは言葉を失った。

 読んでくれてありがとうございます。

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