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レイジとゼウス

 クトゥルフとルルア達が激しい戦闘をしている時、


「ハハハ……まさか〔邪の神盾〕を突破されるとは思いませんでした」


 レイジに蹴られ、廃城のほうまで吹き飛ばされたジャンヌは、口の端から流れる血を指で拭い、服についた埃を手で払った。

 今、彼女がいるのは埃だらけの玉座の間。

 天井の一部は崩壊しており、床や壁は皹だらけ。

 人の気配はなく、玉座には豪華な服を着た骸骨が座っている。


「……光闇レイジ。本当に……素晴らしいですね。あの子を思い出します……」


 ジャンヌは寂しそうな笑みを浮かべながら、思い出す。一人の少年のことを。


「あの子って誰なのか教えてくれよ……ジャンヌ」


 ジャンヌの耳に声が聞こえた。

 声が聞こえた方向に視線を向けると、そこにいたのは長い銀色の髪を伸ばした美女—――女になったレイジがいた。


「…私の大切な人ですよ。レイジ」

「そうか…」

「それにしても先ほどの蹴りは素晴らしいものでした。まさか私の絶対防御の盾を破壊するとは……久しぶりに痛みというものを感じましたよ」


 パチパチと拍手するジャンヌ・ダルク。

 彼女は心からレイジを称賛していた。


「ですが……そろそろ限界なのでは?」

「……なんのことだ?」

「惚けないでください。エクストラスキル〔邪雲消滅〕〔神兎・天星〕。どちらも強力ですが……そのぶんあなたの負担は大きいのでは?」

「……」


 レイジは何も答えなかった。

 ジャンヌの言っていることは正しかった。


 この世から邪雲を消し去る〔邪雲消滅〕。

 防御することは不可能の〔神兎・天星〕。

 この二つのエクストラスキルはとても強力だが、そのぶん魔力や神力……精神力や体力を大きく消耗する。


 レイジは平然と装っていたが、実際は大きく疲労しており、倒れそうになっていた。


 今、彼は立っているのがやっと。


「…お前の言う通りだよ」


 レイジの言葉を聞いて、ジャンヌは笑みを深くする。


「やっぱりそうでしたが……なら―――」

「『私の勝利は確定しました』……とか言うなよ?」


 ジャンヌの言葉を…レイジは遮る。


「俺はお前を殺す……そのために色々準備をしてきた。スキル〔格納空間“取出”〕」


 レイジがスキルを発動すると、彼の右手に星の形をしたチョコレートが現れる。

 彼はそのチョコレートを口に入れ、噛み…そして呑み込んだ。


 次の瞬間、レイジの身体から銀色の粒子が発生。


 その粒子はレイジの魔力であり、神力。

 もうレイジに疲労はない。


「本当に……素晴らしい。完全に回復したのですね」

「ああ、その通りだ」


 さきほどレイジが食べたのは、神力、魔力、体力、精神力を完全に回復させるチョコレートーーー甘ノ星(あまのほし)


 ジャンヌに勝利するために準備したチョコレート。


「さて……続きをしようか」


 レイジがそう言った時、


「そうしましょう。レイジ」


 彼の背後から一人の女神が現れた。

 その女神はとても美しく、そして可愛らしく……長い銀色の髪をツインテールに結んでいた。

 

「これは……驚きました。まさか女神の女王ゼウスが現れるとは」

「あら?アタシのこと知っているの?」

「はい。多くの女神達の記憶を見てきたので」

「どういうこと?」

「私には…殺した相手の記憶を見ることができるスキルがあるので……だから知っています」

「……」

「私…多くの女神達を殺してきたので」

「そうなの……」


 ゼウスはゴミを見るような目でジャンヌを見る。


「あなた……死んだ方がいいわよ」

「よく言われます」


 ニッコリと笑みを浮かべるジャンヌ。

 そんな彼女を……レイジとゼウスは今から殺す。


「行こうか、ゼウス」

「いつでもいいわよ。レイジ」


 ゼウスは女神から人型ロボットへと姿を変える。


「完全機装」


 レイジがそう言った時、ゼウスの身体が分離した。

 分離したゼウスの身体はレイジの鎧と化す。

 その鎧はとても白く…そして神々しく、背中には翼の形をした推進器が搭載さえていた。

 まるで天使のような姿になったレイジを見て、ジャンヌは……涙を流す。


「美しい……とても美しいですよ。今のあなたはそこらへんの女神よりも美しい」

「そいつはどうも」

「こちらもとっておきのものを見せましょう」


 ジャンヌは禍々しい黒い杖を召喚し、右手に装備。

 その杖にはいくつもの宝石が埋め込まれていた。


「〘龍神の女王杖(ガンバンティン)〙か」

「あなたに勝つにはこれを使わないといけないと思いましてね」

「ならこっちも……」


 レイジはスキル〔装備装着〕を発動。

 銀と黒の短剣二本―――〘陽月〙を召喚し、両手に装備する。

 そして、


「真化」


 レイジがそう言った直後、〘陽月〙の刃が一回り大きくなる。

 しかも刃に血管のような赤いラインが浮かび上がる。


〘陽月〙を女神化させたレイジは目を細めて、告げる。


「さぁやろうか……殺し合いを」

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