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邪神教の教皇

 黒き雲に覆われた大空。

 その空に浮かぶ大きな島。

 島にはボロボロな城が建っており、人の気配はなく、いくつもの墓があった。

 そんな場所で、戦闘服を着た大人の姿のレイジは椅子に座ってある人たちを待っていた。


「……」


 レイジは一度、目を瞑る。


「……来たか」


 そう言ってレイジはゆっくりと目を開けた。

 するとレイジの視線の先に、黒い司祭服を着た少女とボロボロの黒いドレスを着た女神がいた。

 少女は黒髪黒眼で、とても可愛らしい。

 そしてその少女の隣にいる女神は、地面に付くほど長い黒髪が特徴的で、ホラー映画に出てくる幽霊のような怪しい雰囲気を纏っていた。


「初めまして……ですね。光闇レイジ」


 愛らしく、優しそうな笑みを浮かべる少女。

 だがレイジは警戒心を忘れない。


「ああ。初めまして……邪神教の教皇―――ジャンヌ・ダルク」


 今、彼の目の前にいるのは十六歳の少女ではない。

 千年以上も生きる邪神教の教皇―――ジャンヌ・ダルクだ。

 そして彼女の隣にいるのは、ジャンヌと千年以上いる最恐にして最強の女神—――クトゥルフ。


「こうしてお会いできて心から嬉しく思います」

「こっちも会えて嬉しいよ。戦う前に少しお茶しながら話そうか」


 レイジが指をパチンと鳴らすと、なにもないところからオシャレなテーブルと椅子が出現。

 テーブルの上にはクッキーやケーキなどのお菓子と紅茶が入ったカップが並べられていた。


「ええ、喜んで。クトゥルフもいいですよね」

「そうね……私もレイジとは話がしたかったし」


 ジャンヌとクトゥルフは椅子に座った。


「では……話をしよう」


 それから三人は紅茶を飲み、菓子を食べながら話をした。


「まぁ……どれも美味しいですね」

「こんなに美味しいお茶とお菓子は初めてだわ」

「気に入ってなによりだ。それ全部……俺が作ったんだ」

「すごいです。レイジには料理の才能がおありなんですね」

「ありがとう。褒めてくれて嬉しいよ」


 ジャンヌとクトゥルフと楽しく話をするレイジは、あることを思った。


(本当……邪神教の教皇なのか疑いたくなるな)


 人とは……知らない相手や敵には必ず恐怖を感じる。

 ゴキブリを見た時、犬にほえられた時も……わずかながら恐れるものだ。

 だがレイジはジャンヌが恐ろしいと感じなかった。

 むしろ友好的になりたいとすら思ってしまっている。

 まったく恐ろしくない……それが逆に恐ろしいとレイジは思った。


「それにしてもすごいですね。まさか全世界にあの映像を流すなんて……想像もしませんでした」

「ああでもしないと、あんたは俺のところに来ないだろう」

「いいえ、行きましたよ。あなたを手に入れるためなら」


 微笑みながらそう言うジャンヌ。


「ジャンヌが言っていることは本当よ。あなたの所に行こうとしていたわ」

「……なぜ俺が欲しいんだ?」

「それは……」


 クトゥルフは少し視線を逸らし、口ごもる。


「……言いたくないならそれでいい。なら別の質問」

「なにかしら?」

「あんたらは俺を手かって何がしたい?」


 レイジがそう問うと、ジャンヌとクトゥルフは声を揃えて告げる。


「「この世界を壊し、新たな世界を作る」」

「……今の世界も悪くないと思うんだが?」

「いいえ。この世界は滅ぼさなければなりません。そのためにもあなたの力が必要です」


 可愛らしい声と笑顔で恐ろしいことを言うジャンヌ。

 彼女の瞳には……強い憎悪が宿っていた。


「今の世界はあってはならない。必ず滅ぼします」

「……私はジャンヌを支える。ただそれだけよ」

「……なるほど」


 レイジは紅茶を一口飲む。

 そしてカップをテーブルに置き、殺意を宿した冷たい声で言う。


「させねぇよ。そんなことは」


 その言葉には、なにがなんでも阻止する。命を懸けて止める。……そんな強い意志が宿っていた。


「そうですか……ところであの映像で言ったことは本当ですか?」

「ああ」


 レイジはジャケットのポケットから一枚の紙―――〘神の契約書〙を取り出し、ジャンヌに渡す。

 受け取ったジャンヌは〘神の契約書〙を見て、笑みを浮かべる。


「これには強い力を感じます。どうやらこの紙に書いてあることは守られるみたいですね」


 ジャンヌはペンを生み出し、〘神の契約書〙にサインをした。

 すると〘神の契約書〙は粒子となって消え、レイジの右手首に紋様が浮かび上がる。


「これで俺が負けたら、俺はあんたのものになる」

「嬉しいです。これであなたを私の……弟にすることができます」

「弟?」

「はい。あなたは私の弟になるのです」

「……よくわからんが、いいだろう。負けたらあんたの弟になってやる」

「そうですか……なら始めましょう」


 ジャンヌとクトゥルフは椅子から立ち上がる。

 レイジも立ち上がる。


「……最後に一つ聞きたい」

「なんでしょうか?」

「やり直すつもりはないか?」


 レイジの問いにジャンヌは、


「ありません」


 可愛らしい笑顔でそう答えた。


「そうか……なら」


 レイジは蒼い瞳と赤い瞳を怪しく輝かせて、ジャンヌを睨む。


「始めようか」

 

 最凶の死神と最恐の邪神。

 二人の戦いが……今、始まる。

 読んでくれてありがとうございます。

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