25話 こういうのを春の息吹って言うんだろうな
「俺と・・・おれたちと・・・旅に出ないか?」
「うん!!」
ラウラに勝利した俺は、彼女を旅に誘うことができた訳だが・・・
アリスの喜びようとアデルさんの落ち込みようが半端じゃない。
「またみんなで冒険できるんスね!!」
「娘が・・・む、娘が父離れを・・・」
しかし、アデルさんは引き留めようとはしないみたいだ。
「アデルさん、悲しむのに反対はしないんですね?」
「まあ、娘の幸せが第一優先だからな。ラウラを倒したお前なら、文句はあるまい。」
力を認められているんだろうか・・・しかし、現時点で俺はラウラやアリスより弱いし、今回も不意打ちで勝っただけで、もう一度闘ったら勝てるか分からない。俺の勝因と言えば、少しずるかったことぐらいだ。
「倒したって言っても、アリスみたいにとんでもない魔法も使えないし、ラウラほどの剣術も持ってないですよ」
アデルさんは考える素振りを見せてから口を開く。ラウラの考えるポーズは父譲りらしい。
「リューク少年が言っていただろう。お前が勝ったのは偶然じゃない。うちの娘は偶然などに屈しはしないからな。」
「はっはっは!!とってもいい試合でしたぞ!!あの実力なら、トロルの森も抜けられますな!」
「そうと決まれば、早速準備ね!!」
ラウラはかつてないほど胸を高鳴らせている様子だった。
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次の日の朝、身支度を整えた、出発前の俺たち三人に、アデルさんが送り出しの言葉を送ってくれた。
「この町のことは心配要らない。私やバラク、それにリューク少年もいる。というより、町の人々皆が頼もしい存在だということを、ラウラはよく知っているだろう。そして、それを私に諭したのは君だ、シオト少年。お前には、感謝している。」
圧倒的で重みのある言葉だが、温かく感じる。
「きょ、恐縮です・・・」
「ちなみに、お前のことだから不意打ちで倒したんだろうが、本気のリューク少年はかなり強いぞ。閃光を使わなければ、ラウラと互角に渡り合える実力を持つ。」
「はっはっは!!自慢の息子がいて鼻が高いですな!!」
「お互い強くなって、また闘いたいところだ、無事でな。シオト。」
挨拶を交わしていると、町でたまに見かけていたカリンさんが走ってきて、ラウラを抱きしめる。
「ラウラ、死ぬんじゃないよ。・・・アリスちゃんにあんた、この子を頼むよ。何でも抱え込むとこあるから、支えてやっておくれ。」
「分かってるっスよ!カリンさん!」
アリスも面識があったようだ。
「・・・カリンさん、行ってくるね!!」
ラウラはカリンさんに笑いかけ、カリンさんもくちゃっと笑い返すのを、アデルさんが優しく見守っている。
「それでは!!行ってくるっスよ!!短い時間でしたが、お世話になりましたっス!!」
分厚い門が開くと、春の匂いがした。
実際は春に咲く植物の匂いなんだろうが、何とも言えない懐かしい気分になる。
思えば、卒業式や入学式のときには、いつもこの匂いがしていた。
春の風が吹き、すがすがしい決意で胸が満たされる。
こういうのを春の息吹って言うんだろうな。
新たな始まりの予感を覚え、俺たちは一歩踏み出した。
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「・・・・・・つっても、トロルの森怖いし、もうちょい強くなってからがいいな。」
「先輩、そういうとこっスよ。」
「そうかな笑」
「そうそう。・・・変なところでチキるんだから。・・・まあ、この草原の魔物を一掃してから行くのも悪くないかもね。」
ラウラ、俺に対しての遠慮がなくなっているような気が・・・
と思いつつ、俺は草原を見渡した。ちょうどいい具合に魔物が増えている。
「魔物、結構いるね。どうする?みんなで協力する?」
「試したいことがいろいろあるから、俺は一人で行くよ。夜になったら狩り終えてるだろうし、あそこに集合しよう。」
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ラウラとの闘いがいい経験になったのか、かなりできることが増えていた。新しい技を片っ端から試しているうちに、草原の魔物は倒しつくされ、辺りは既に暗くなっていた。
「二人とも、お疲れ様。昼飯ちゃんと食べたか?」
と聞いたが、その場の誰も食べていなかった。
そのため、ちょうどいい運動と空腹感で、その日の夕食もやはり美味かった。
「二人とも朗報だ。小遣いはたいて新しいテントを買ってきた。今までのよりすごい広いし、俺が古いのを使えばもっと───」
「せっかく広くなったんですし、みんなで一緒に寝るっスよ!!」
二人が落ち着ける空間を作るためにと思ったのだが、結局同じテントで寝ることになった。
新しいテントで修学旅行のようなテンションになったし、明日からのことを考えると胸が躍るようだ。
なんか今、すごい幸せだな。
相変わらず眩い星空の下で、俺はぐっすりと眠った。




