表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/39

25話 こういうのを春の息吹って言うんだろうな

「俺と・・・おれたちと・・・旅に出ないか?」

「うん!!」


ラウラに勝利した俺は、彼女を旅に誘うことができた訳だが・・・


アリスの喜びようとアデルさんの落ち込みようが半端じゃない。


「またみんなで冒険できるんスね!!」


「娘が・・・む、娘が父離れを・・・」


しかし、アデルさんは引き留めようとはしないみたいだ。


「アデルさん、悲しむのに反対はしないんですね?」


「まあ、娘の幸せが第一優先だからな。ラウラを倒したお前なら、文句はあるまい。」


力を認められているんだろうか・・・しかし、現時点で俺はラウラやアリスより弱いし、今回も不意打ちで勝っただけで、もう一度闘ったら勝てるか分からない。俺の勝因と言えば、少しずるかったことぐらいだ。


「倒したって言っても、アリスみたいにとんでもない魔法も使えないし、ラウラほどの剣術も持ってないですよ」


アデルさんは考える素振りを見せてから口を開く。ラウラの考えるポーズは父譲りらしい。


「リューク少年が言っていただろう。お前が勝ったのは偶然じゃない。うちの娘は偶然などに屈しはしないからな。」


「はっはっは!!とってもいい試合でしたぞ!!あの実力なら、トロルの森も抜けられますな!」


「そうと決まれば、早速準備ね!!」


ラウラはかつてないほど胸を高鳴らせている様子だった。


─────────


次の日の朝、身支度を整えた、出発前の俺たち三人に、アデルさんが送り出しの言葉を送ってくれた。


「この町のことは心配要らない。私やバラク、それにリューク少年もいる。というより、町の人々皆が頼もしい存在だということを、ラウラはよく知っているだろう。そして、それを私に諭したのは君だ、シオト少年。お前には、感謝している。」


圧倒的で重みのある言葉だが、温かく感じる。


「きょ、恐縮です・・・」


「ちなみに、お前のことだから不意打ちで倒したんだろうが、本気のリューク少年はかなり強いぞ。閃光を使わなければ、ラウラと互角に渡り合える実力を持つ。」


「はっはっは!!自慢の息子がいて鼻が高いですな!!」


「お互い強くなって、また闘いたいところだ、無事でな。シオト。」


挨拶を交わしていると、町でたまに見かけていたカリンさんが走ってきて、ラウラを抱きしめる。


「ラウラ、死ぬんじゃないよ。・・・アリスちゃんにあんた、この子を頼むよ。何でも抱え込むとこあるから、支えてやっておくれ。」


「分かってるっスよ!カリンさん!」


アリスも面識があったようだ。


「・・・カリンさん、行ってくるね!!」


ラウラはカリンさんに笑いかけ、カリンさんもくちゃっと笑い返すのを、アデルさんが優しく見守っている。


「それでは!!行ってくるっスよ!!短い時間でしたが、お世話になりましたっス!!」



分厚い門が開くと、春の匂いがした。



実際は春に咲く植物の匂いなんだろうが、何とも言えない懐かしい気分になる。

思えば、卒業式や入学式のときには、いつもこの匂いがしていた。


春の風が吹き、すがすがしい決意で胸が満たされる。


こういうのを春の息吹って言うんだろうな。


新たな始まりの予感を覚え、俺たちは一歩踏み出した。


───────────



─────



「・・・・・・つっても、トロルの森怖いし、もうちょい強くなってからがいいな。」


「先輩、そういうとこっスよ。」

「そうかな笑」

「そうそう。・・・変なところでチキるんだから。・・・まあ、この草原の魔物を一掃してから行くのも悪くないかもね。」


ラウラ、俺に対しての遠慮がなくなっているような気が・・・


と思いつつ、俺は草原を見渡した。ちょうどいい具合に魔物が増えている。


「魔物、結構いるね。どうする?みんなで協力する?」


「試したいことがいろいろあるから、俺は一人で行くよ。夜になったら狩り終えてるだろうし、あそこに集合しよう。」


──────



ラウラとの闘いがいい経験になったのか、かなりできることが増えていた。新しい技を片っ端から試しているうちに、草原の魔物は倒しつくされ、辺りは既に暗くなっていた。


「二人とも、お疲れ様。昼飯ちゃんと食べたか?」


と聞いたが、その場の誰も食べていなかった。

そのため、ちょうどいい運動と空腹感で、その日の夕食もやはり美味かった。


「二人とも朗報だ。小遣いはたいて新しいテントを買ってきた。今までのよりすごい広いし、俺が古いのを使えばもっと───」


「せっかく広くなったんですし、みんなで一緒に寝るっスよ!!」


二人が落ち着ける空間を作るためにと思ったのだが、結局同じテントで寝ることになった。

新しいテントで修学旅行のようなテンションになったし、明日からのことを考えると胸が躍るようだ。


なんか今、すごい幸せだな。


相変わらず眩い星空の下で、俺はぐっすりと眠った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ