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あの時2人が出会った意味

「さて、こんなもんね。」


 見知らぬ少女……アリスを帰らせた後、スティアは明日のための調合を行い、夜になる頃にはそれを終わらせていた。


「これとこれ……あとは………アレね。」


 頼まれたものを確認し、それをカウンターに置き、店の奥の自室に戻る。


「あの子……何しに来たのかしら?あんな変なもの作って欲しいなんて、理解できないわね………」


 物だけで考えれば、犯罪行為にでも使えそうなものだが、あの少女がそのようなことをするとは到底思えない……そう考えるスティアだったが、どちらにせよ作るつもりは無いので深く考えずに、そのまま眠りについた。


 ―――――――――――――


「はい、これが錬金で作った植物……それで、こっちがパン……これで良かったわよね?5000ルピアね。」


 次の日も、スティアは無愛想な客たちの対応をしていた。スティアの錬金術は薬などがメインだが、植物の種や食べ物も作ることができ、それを求める者も少なくない。


「……4500にはならない?」


(なによ、貴族の癖にケチ臭いわね………)


 心の中ではそう思いつつ、さすがにそれは口には出さず、


「…悪いけどこの値段が限界かしら。これより安くはできない……。」

 

 と、無理に作った、申し訳なさそうな表情で答える。


「あ、そう。ならはい、5000ね。」


 投げつけるようにカウンターに代金を置き、その客は店の外に出ていった。


「なによその態度。バカみたい。……まあでも、今日はこれで終わりね。」


 普段より少し早く終わり、明日は取引の予定もないため、店を閉めれば今日と明日の午前中は完全な休みとなる。


「さーて、どうしよ…………げ、来たわね………」


「はい!常連さんになるための第1歩ですよ!」


 客が居なくなったタイミングを見計らったのか、暇になり店を閉めようとしたところに昨日の少女……アリスが店に現れた。


「……で、なんの用よ?冷やかしならすぐ帰りなさい。」


「ち、違います!今日はちゃんと、大丈夫そうなお願いです。お薬、作って欲しいんです。」


「あら、今日はまともなのね。」


 相手がまともな取引をしようと言うなら、それはもう客ということになる。それならと、スティアはアリスを店内のカウンターの方に案内する。


「で、どんな薬かしら?」


 カウンターを挟み、2人は向かい合う。


「えっと……なんと言いますか………別に怪我とか、病気を直して欲しいわけではないんです。」


「……?」


「そうですね……アリスが使いたいお薬なんですけど、アリスは………今は平気なんですけど、ふとした時……特に、ちょっと不安になったり、怖くなると………気分が良くなくなって、周りが見えなくなっちゃうんです。それに加えて、アリスの中でネガティブな気持ちが大きくなったりして……だから、そんなふうにならないとか、そうなった時に治せるお薬、欲しいんです。」


 アリスは少し泣きそうになりながら、もう既に少しそうなりかけてるようにも見える表情で、スティアに頼む。


「そ、そんな顔するのやめなさいよ………。でも、そんな薬……作ったことないわよ。精神的な部分に作用する薬……理論上は、あたしの知識の中にある素材を使用掛け合わせれば作れるとは思うけど………」


「ほ、本当ですか!!それなら、お願いします!お金なら沢山あるんで、安心してください!スティア()()の作るお薬、すごいってみんな言ってて……」


 カウンターに手をついて、さっきまでの表情はどこにいったのか……という様子でグイグイと言ってくるアリスに対して、スティアは冷静に返す。


「ちょっと待ちなさい。あくまでも『理論上』よ。実際にやってみて、あんたが望む効果のある薬ができるかはまだわからない。それに、どっちにしてもすぐには無理よ。そんな薬に使う材料、常備してない。店でもなかなか見ないものだし……自分で採りに行くしかないわね………。」


 しかし、アリスはそれをきいてもガッカリせず、むしろ更に身を乗り出して言う。


「それなら!アリスが採ってきます!そうすればすぐに作れますよね!?」


「何言ってんのよ……どこの誰だかも知らない素人に、そんなこと任せられるわけないでしょ。……ほら、このふたつの違い、わかる?」


 スティアがカウンターの下から取り出したのは、そっくりな見た目の2本の草。アリスはカウンターに置かれたそれをじっくり眺め、そして答える。


「左の方は……すこし色が濃いので、きっと治癒力が高い……右は薄くて、カサカサな感じなので、火に関係する物に……」


「バカ、どっちも同じ草よ。材料の性質に違いはない。適当なこと言って、そんなんじゃ無理、材料の採取なんて出来るわけないわ。」


「ず、ずるいです!!普通こんなふうにされたら、別のものだと思いますよ!」


「ずるいも何もないわよ。別にあたしはあんたと遊んでるんじゃないの。仕事なんだから。ていうか、薬なら作ってあげるから、待ってなさい。今日はこの後暇だから材料くらい探してくるわよ。仕事として頼まれた以上、それくらいは当然。だからあんたは家に帰っておとなしく待ってなさい。明日か……明後日にはできるから。」


「…あ、それなら!アリスもついて行きます!邪魔はしないようにするので……ダメですか?………ダメですよね。ごめんなさい。アリスのわがままなんて無視していいんです。いつもいつもいつもアリスはこんなふうにして色んな人を困らせて、面倒くさがられて、みんなから嫌な奴だって思われて、でもそれでいいんです。だってアリスは」


「あーもう!うるさいわね!いいわよ、着いてきたければ来ればいいじゃない!」


 その言葉を聞いたアリスは、涙目になりながら、スティアの方を見て言う。


「……こんなアリスでもいいんですか?」


「もちろん、自分の身は自分で守ること。いい?」


「………はい!!!!じゃあ早速行きましょう!!」


「待って」


 外に向かって駆け出そうとするアリスの手を掴み、スティアは言う。


「あたしは準備があるのよ。そんなすぐ行けない。奥で準備してくるから、あたしの準備ができるまで店の中で大人しくしてなさい。……勝手にもの触ったら許さないわよ。」


「大丈夫です!アリスは大人しく待てますので!」


「はいはい」


 店の奥に向かうスティア。どうしてこんなことに……そう考えながらも、不思議と嫌な気持ちは全くなかった。




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