友達だもんね
結果から言うと、全く何もいいものはなかった……。色んな店を見て回ったけど、どーにもしっくり来ないものしかない。見たことない、面白そうな物はまあまああったけど、どれもこれも高すぎる!安いものは安いもので、変なものしかななかったし………というわけで、暗くなってきた頃に、何も買わずに宿に戻りソフィさんと合流した。
「ミトラス、どうだった?」
ロビーで合流すると、真っ先にそれをきいてきた。
「ん……よくわかんないこと言っていっちゃった。……あと、お金払わされた!酷くない?」
お金のことを言うと、ソフィさんは頭を抱えて言う。
「信じられない……初対面の女の子にすることじゃないわよ………とりあえず、お金はあとで私が何とかするわよ………。はぁ、まったく………」
ミトラス、わたしに対して恩人だ、とか言っておきながらあの振る舞いだし、全然意味わかんないよね。
「……とりあえず、部屋行きましょうか。今日はちょっと人が多いみたいで、別々の部屋に出来なかったのよ。一緒だけどいいかしら?」
「うん、平気だよ。」
むしろ、その方がいい……かも。
――――――――――――――
部屋に行き、荷物を整理し終わるとソフィさんが言う。
「明日南の方に行くけど……そっちの方にいるはずの、アリスちゃんとスティアちゃんってどんな子なのかしら?せっかくなら、教えて欲しいわね………。」
ソフィさんはベッドに座っている。わたしも自分のベッドに座り、ソフィさんと向かい合う形になって話す。
「ん……どんな子………アリスはメンタルよわよわ依存症めい探偵、スティアは……強気レズ?????」
「………まったくイメージがわかないわね……まあ、会うまでのお楽しみってことにしておくわ………。……あら、探偵って………」
「あーーーーー」
そうだった、ミトラスには言ったけど、ソフィさんには言ってなかったんだ。すっかり忘れてた。……まあ、ミトラスの話を聞く限り、こっち側からは問題は無い感じっぽいけど………アリスはなんて言うかな……。
「………言わなくてもわかるわ、そういう事ね……。まあ、多分平気よ。ルナちゃんが心配するようなことじゃないはずよ。」
「あ、うん。」
何かを察してくれて、ソフィさんは優しく笑う。この笑顔を見ると、なんとなく安心できる。
「さ、それじゃあご飯食べましょうか。そしたら早く寝るのよ?明日の出発ははやいから。」
「はーい」
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そして特に何も無く、次の日の朝。日が昇り始めるくらいの時間に宿を出て、ソフィさんの案内で砂漠の境目辺にある建物に来た。
「なに、ここ?」
「ここから馬車に乗るのよ。砂漠を超えた向こう側にも同じような建物があって、そこを行き来するわけよ。決まったルートな上、途中で降りたりも基本的には出来ないけど、その分早いし、安全ってところかしら。じゃ、行きましょ。」
「うん」
手続きとか、お金の関連は全部ソフィさんがやってくれた。わたしは言われるがままに移動し、そのまま馬車に乗せられた。早い時間だから、他に乗ってる人もいなくて、快適。
そして、直ぐに馬車は動き出した。砂漠もへっちゃらな馬、それからタイヤみたいで、砂の上を走っていても違和感が全然ないし、むしろ変に揺れないから良い。
「涼しい〜……」
中はびっくりするくらい涼しい。外はあんなに暑い砂漠なのに……。
「冷風をだす装置が着いてるのよね。まあその分、乗車台が高いけど………だから、これが昨日のミトラスの分ってことでいいかしら?」
「うん、ありがと………うん……」
もっとなにか話そうと思ったけど、朝早いのもあって、眠気に勝てずに意識が危うい………
「ん………あれ?」
気がつくと、馬車は止まっていて、ソフィさんもいない。外に出てみると……
「あ……涼しい」
振り返ると、遠くの方に砂漠がかすかに見える。多分、寝ちゃっててその間に着いた感じかな………?
すぐ近くの建物に入ると、入口近くの椅子に座ってソフィさんが待っていた。
「おはよ。よく寝てたわね。」
「あはは……」
別に怒ってる感じはないけど、待たせちゃったのは悪いな…………。
「馬車はここまでで、この先は歩くわけだけど……もう行けるかしら?」
「大丈夫!寝起きとか関係ないし!」
「わかったわ、それじゃ行きましょ。」
ソフィさんは立ち上がり、外に出た。わたしも続いてすぐに出ようとして、出入口のすぐ横にあるものが目に付いた。
「ん……」
壁に貼ってある紙。今となってはもう行く意味もないけど、『蒼海の入江』の事がかいてある。綺麗な海と浜辺……まあ、遊んだら楽しそうかも。
「おっとっと、早く行かないと……」
また待たせちゃうところだった。
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ソフィさんの話だと、わたしが行こうとしている蒼海の入江の近くの村は、ここからそんなに遠くない見たい。ってことは、馬車での移動距離かなりあるんじゃ…そのわりにはまだお昼くらい。馬車早すぎ??
「あら、あそこ……だれかいるわね。」
「あ、ほんとだ」
見通しの良くて遠くまでみえる道。その先の方に人がいる。1人でいるその人は、こっちに向かって歩いてきている。
「すれ違う人全然いなかったけど、この道って歩く人少ないの?」
遠くにいるあの人を今みるまで、全く他の人を見かけなかった。ソフィさんの話だと、砂漠を超える人もまあまあいるって話だったのに……。
「時間帯かしら。午前中は多いと思うけど………どうかしらね。」
「へー」
少し歩くと、むこうもこっちに向かって歩いてるわけだからだんだん近づいてきて、人の姿がはっきりと見えてきた。
「あら、なんだか変わって服装の人ね……?」
「あ…………」
あの変な帽子と、うっすらとした黄色のストレートヘア………
「アリス……??」
「え、アリスって………ルナちゃんのお友達の?」
「う、うん……たぶん、あれアリスだよ……。あの帽子、アリスだと思う……」
そう話しながら、さらに歩くと、向こうもこっちに気がついたのか、少し走って近づいてくる。そして、ついに目のまえまで………
「あっ!やっぱりルナちゃんでした!!アリスの予想通りです!!」
走ってきて、アリスはそのままわたしに抱きついてきた。
「うぇ……苦し………」
「わ、ごめんなさい!」
アリスは直ぐに離れ、そしてソフィさんの方を見る。
「…………世界統括団体の服装………ルナちゃんのお友達です?」
「ふふ、そうよ。私はソフィ。ルナちゃんとぐうぜん出会って、色々あって一緒にここまで来たのよ。あなたがアリスちゃんね、よろしくね。」
あえてフルネームは名乗らずに自己紹介をして、小さく頭を下げる。
「はい!よろしくお願いします!アリス・アイリーンです!!お姉さんは世界統括団体ってことは、きっとアリスと違って頭いいんですね!………それに比べてアリスはポンコツで何も出来なくて人に迷惑ばっかりかけててスティアちゃんにも、」
「と、ところで、なんでアリスはここに?」
村まで遠くないと言っても、まだまだ見えない距離。それなのに、なんでアリスは…。
アリスは素早く何かをさして、すぐに立ち直り喋り出す。
「何となく、そろそろルナちゃんが来そうな気がして、迎えに来たんです!………それに、ちょっと変なことになってまして……スティアちゃんが…」
「ん?」
どうやらなにか厄介なことになってるみたいで、話を聞きながら村まで歩くことにした。